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第14話
都市部のワゴン劣化問題では、修理費を国が補助金として出すと決定し、問題は解決していた。
都市部が上手くいったその流れで、今度は地方部の「キッチン」問題の相談を受けている。
王宮がある都市部と同じように、地方もワゴン劣化が問題になっているんだと、聞いていたが、実際は都市部と別のことが問題となっているという。
ヘーゼル国は「地方エリアに観光地を作り盛り上げよう!」と計画を立てている。
地方に人気スポットが出来れば、都市部だけではなく観光客が集まり、地方の地域活性化にも繋がるという狙いがあり、スタートした計画である。
その第一弾プロジェクトとして、大きなスタジアムを建設しスポーツやコンサート、フェスなどの大型イベントに特化したエリアを、ボコボコと沢山作っている。
このプロジェクトは大当たりし、連日色んなイベントが開催され、観光客や都市部から、イベント目当てで地方に遊びに行く人が、ぐーんと増えた。
それを聞き勝手に解釈をしていた。
「そうか、地方部のキッチンは大忙しになってワゴンも劣化してしまうんだな!よし、じゃあ国から平等にワゴン修理の補助を出しましょう!」と。
そう意気込んでいたのだが、問題はもっと手前にあるという。
「出張楽しみなんだよな〜。地方のキッチンでランチ出来るだろ?メニューもこっちとは違って、地方エリアだけでしか食べられないものとかありそうだしぃ〜」
今日は午後からマリカと二人で視察という名の出張だ。出発するまでの午前中は、書類をラベル分けするという仕事を頼まれたので、コウはマリカ相手にペラペラと喋りながら手を動かしていた。
ラベル分けの仕事は単調だけど楽しい。ABC…と単純に分けるだけなので、お喋りしながらでも間違えずに出来る。
しかし…ラベル分けの仕事は、国王もやってた?本当に?と、ちょっと疑問ではある。
隣にいるマリカは、もっとずっと難しいことをやっているようだ。パソコンから目を離さずに、ずーっとカタカタとキーボードを叩き、たまに、うーんと唸ってパソコンを睨んでいたりする。
まさか…マリカ待ちのため、ラベル分けの仕事を渡してきたのか?と、思い始めているが、まぁ…気にしないでおこう。楽しみな出張のためだ。
「そうだな、だけどめちゃくちゃ繁盛してるキッチンだから、並んでるんだろ?だからコウが望んでも、今日は無理だな」
「うん、だから予定通りランチは明日でいいって。泊まりの出張だしさ。くぅ〜楽しみ〜!でもさ、わっかんねぇもんだよな、何でワゴンを使わないんだろう。キッチンにはワゴンは必須だと思ってたのに」
「それを確認しに行く出張だ。新しいスタイルならではの問題なんだろ」
新しく建設したスタジアムには、同じく新しい『キッチン』も建設されている。そのキッチンは完全AIキッチンと呼ばれている。料理はタッチパネルで客が選ぶスタイルになっており、いちいちハイテクな作りのようだ。
そんなハイテクなキッチンでは、大繁盛故に、客が常に長蛇の列を作っている状態になっているらしい。
ワゴンを使う人は少数。ほぼワゴンは必要ないと事前に聞いている。しかし、それがどうしてなのかは想像がつかない。だからこそ出向いて確認しようとなった。
相変わらずパソコンから顔を上げずマリカは答えている。こんな時はマリカの横顔を盗み見し放題だ。
コウはあの日、マリカと添い寝をしてからというもの隙あればマリカの横顔を盗み見している。顔が整ってる人って横顔もカッコいいんだなと思っていた。
「国から補助対象のワゴン劣化修理費を、別のキッチン問題に割り当てたいってことだろ…よし、俺は終わった。お前は?」
「えっ!マリカもう終わったの?やべっ、俺ゆっくりしちゃってたかも」
「え〜、終わってないのかよ。お前の大好きなランチの時間なのに?俺ひとりで行っていいわけ?」
「はあ?ダメに決まってんだろ!今日は特別ブースのFが出る日だからな。お前が俺より先に行くなんて許せん!」
「じゃあ早くしろよ。Fなんて大人気だから早く行かないと無くなるかもしれないぜ」
「お前も手伝え!ほら、このラベルをこっちに動かして…俺はシール貼るから」
王宮のキッチンで腹ごしらえしてから、マリカの運転で車で向かうことになっている。今日から泊まりの出張だ。
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