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【番外編】マリカ、アンジュ、王宮&護衛の皆さん

ひとりではできることが限られている。 だからこそ、協力し支えてくれる人がいるというのは、恵まれていることだと、強く心に感じている。 良いチームワークは、各自が積極的に目標に向けて取り組むことや、役割分担をきちんと果たすこと、全員で同じゴールを目指すことだ。 「マリカさん、国内大手のオリジナルグッズ制作会社に依頼しました。Tシャツ500枚とマグカップ700個です。納品は...来週の予定なので、それ以降に王宮キッチンのキャンペーンを打ち出しましょう」 優秀な侍女たちが、スケジュール片手にマリカに話しかけてきた。キャンペーンの計画は着々と進められている。 侍女や乳母たちにより、キャンペーンの内容とデザインは考えられている。マリカは、ほんの少し...そう、ほんの少しだけアドバイスをしただけだ。この優秀である彼女たちによって、正確にそして確実に進められたことは誇りであり、希望であるとも感じる。 やはり、この王宮は彼女たちによって支えられているんだ。そうマリカは強く感じていた。 「ああ、ありがとうございます。王宮の改装もあったり、ウルキの育児もある中、皆さん、私たちのために本当にありがとうございます」 「とんっでもない!光栄ですわ。私たち、お二人を全力で応援してますからっ!あっ、サンプル用としてTシャツとマグカップはいくつか貰えるらしいですよ」 「本当ですか!素晴らしい。サンプルは是非、皆さんで分けてください」 「ありがとうございます!」 マリカは晴れやかな笑顔を乳母や侍女たちに向けて放った。 キャンディスに拉致をされたコウが救出されたあの時。ハイウェイのど真ん中で、コウがマリカにキスをしたところを多くの人に盗撮され、その写真がSNSに出回ってしまった。 しかし、マリカの中で問題はそんなことではなかった。コウの方からキスをされたことが問題であった。 コウからのキスは初めてである。 拉致誘拐からのキスは、最悪の状態からの最高であるため、単純に喜んでいいのかわからず、マリカは戸惑った。これは…喜びを表現していいのかわからない…と。 しかし、初めてのことである。初めてコウからのキス...それは記念ともいう。 記憶に残る記念だ。その時、嬉しかった気持ちをコウに伝えたい。しかし、それでは拉致という最悪の状態も一緒に思い出されてしまう。どうやってコウに伝えたらいいのかと、マリカは悩み、祖母であるアンジュに悩みを打ち明けた。 それを聞いたアンジュもまた悩み始めた。 かわいい孫のマリカ、そして自分の子のように思っているコウのため、侍女たちや王宮で働く者に相談をしていったという。 すると「記念品として形に残すのはどうか」という話が持ち上がった。 なんてことを考える。素人の考えではない。ジーザス!とマリカは感動した。 それに都合よく、キスをしたところを盗撮されている。それを逆手に取り、盗撮写真を使い、記念品を作りコウに贈ればいいのではないかと、アンジュがさらに玄人のひらめきを生み出した。 なんっていいアイデアだ! 視覚に訴えるものは、話す言葉よりも永続的な印象を与えるというじゃないか!写真がプリントされた記念品であれば、嫌な思い出なんか、プリントされた写真の内容に上書きされていくことだろう。それに、恥ずかしがり屋さんのコウである。言葉で伝えるより、形あるものをもらったほうが、じわじわと喜びが溢れていくはずだ。 と考えて、はたとマリカは気づく。自分たちだけの問題ではないということを。 拉致誘拐されて無事にコウは戻ってきた。だが、護衛チームや警察、王宮の皆さんに ご迷惑とご心配を大変おかけしている。だったら、ご迷惑をおかけした人、ひとりずつに感謝の言葉と一緒にお配りしようではないかと、考えていた。 そう考えたマリカに、今度は侍女たちやアンジュから「待った」がかかった。国民はどうする。置いてきぼりか?と。 国民は今、コウとマリカのロイヤルラブロマンスを応援している。その国民に還元しないでどうする。プリンスのロマンスなんだぞ?わかるのか?若造!と。 またしても悩むマリカに、それでは、国で一番HOTで盛り上がっている王宮のキッチンにキャンペーンとして打ち出すのはどうだ?と提案してきたツワモノがいた。 欲しい人が必ずもらえるキャンペーンにすれば、二人を応援する人の手に確実に届くはず。しかもありがとうという気持ちも一緒に届くはずだ。そう言われた。 そうだ…国民の憩いの場、キッチンでのキャンペーン。必ず皆ランチを取る場、そこで必ずもらえるというのであれば、国民も納得するだろう。それに王宮キッチンはコウの昔の職場である。昔の職場の皆さんにも感謝の気持ちをお伝えし、恩返しもできるはず。と、マリカは深く頷いた。 それでは、ありがとうという思いを込めていっちょキャンペーンを打ち出そうじゃないか!そう考えた結果の王宮キッチンキャンペーンである。 そのマリカの意図を汲んで侍女たちが考えてくれたキャッチコピーが「食べて、集めて、ロイヤルロマンスを応援しよう!」であった。素晴らしい...協力し支えてくれる人がいる。本当に素晴らしい。 「マリカ、グッズの費用はどれくらいなのよ。大丈夫?自腹なんでしょ?」 祖母のアンジュがウルキの着替えを準備しながら聞いてくる。アンジュが手を休めているところを見たことがない。働き者の祖母は逞しい。 「自腹って言っても、たいした金額じゃないから問題ない。それより、写真を集めてくれてありがとう。よく交渉できたな」 盗撮された写真はアンジュが個々に交渉してくれていた。 「そんなの楽勝よ!今までどれだけ王のスキャンダルをもみ消してきたと思ってんの。マリカとコウのキス写真を手に入れるなんて、チョロいチョロい」 本当に頼もしい存在である。 アンジュと侍女たちにお礼を言い、マリカは安心して護衛チームの任務に戻っていった。 「マリカチーフ!お疲れ様です!」 マリカがまとめているチームの者たちから声をかけられた。護衛チームの中でも、今、一番力が漲っているチームである。 「チーフ、王宮のキッチンでキャンペーンをするという話を聞きました」 話がはやい。まだ準備段階なのに何故知っているのかと尋ねると、王宮で働いている彼女がおり、その彼女から聞いたという。 しかも、スタンプを貯めてもらうことなど、かなり詳しい内容まで知っている。やはり、一番力があるチームの者たちは優秀だと感じた。情報収集、情報共有は重要である。 「自分たちも王宮キッチンには行きます!スタンプ集めますんで、もらってください!自分たちはマリカさんについていきますから!」 「マリカチーフ、いち早く手にしたいでしょう。任せてください!」 「俺ら、男なんで!」 彼らは口々にマリカのためにスタンプを貯め、Tシャツ、マグカップをゲットすると言う。そしてゲットしたら真っ先にマリカに渡したいと申し出てくれた。 これぞチームワークといえるのではないか?チームワークとはお互いの弱点を補完して、強みを高め合うことで組織としてのパワーを生み出すこと。まさにそれだと感じる。 「みんな、ありがとう。ひとりではできることが限られているが、協力し支えてくれる皆がいて俺は本当に恵まれている。そして、組織としてのパワーを感じ、更には君たちを誇りに思う!」 その後、訓練を終え皆を連れて、日が変わる手前まで飲んだ。王宮に帰ると、コウは頑張って起きて待っていてくれたが、半分は寝ているような状態だった。そんなコウを見て、かわいらしいとマリカは目を細めた。 「...そう、チームで飲み…楽しかったみたいだね、よかった。本当にマリカは慕われてるよね。王宮でもさ、マリカのファンって多いよ?だけど、俺はたまにマリカってアホだなって思うことあるんだよ」 頑張って喋っているがウトウトしている。そろそろ本格的に寝てしまいそうである。やっぱりコウはかわいらしい。 「そんなの気のせいだろ?俺がアホなわけがない」 「だよな?俺もそう思うんだけど...うーん、でも、たまーに思うことあるんだよ。なんでだろうな」 「さあな、もう寝ろよ。こうしててやるからさ」 コウを抱きしめると、スーッという寝息がすぐに聞こえてきた。安心されているようで、マリカはうれしく思う。 アホって思うことがあるんだよな...と、コウは言っていた。あるわけないだろって思うが、コウにそういわれるのが一番好きだったりもする。

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