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【番外編】コウ、国王陛下、ドーナツ様

王の執務室で父と書類をラベル分けする仕事をしている。ラベル分けの仕事は以前もやったことがある。しかし…これを本当に国王がやってる仕事だとは思わなかった。 「よかったぁ〜無事に終わって!パレードはみーんな喜んでたね。パレードしないって言った時は、本気でムカついたけど!」 「ですよ。国もお祭りムードになって国民も喜ぶのに、何を考えてんだ!って思いました」 手を動かしながら王たちの話し相手をし、軽くコウはdisられていた。 執務室にいるのは父である国王とドーナツ様だ。話題はというと、二人の結婚の儀、祝宴、パレードのことである。 コウとマリカの結婚の儀式は滞りなく終わった。王室や王族、国や国民を巻き込む儀式となるため、めちゃくちゃ大変だったけど、パレードも無事終えることが出来た。 「マリカがさ、意外と乗り気でさ。あいつイベントとか嫌いだと思ってたのに…パレード嫌じゃなかったのかな」 「うっわぁ…」「ええぇぇ…」 言葉は違えど、コウの言葉に同じ反応をする父とドーナツ様である。その反応にコウは手を止めて二人をチラッと見ると、複雑な顔していた。 「コウさ!ずーっと思ってたけど、マリカに騙されてない?ねぇ!大丈夫なの?」 「マリカはねぇ〜したたかですからねぇ〜 コウ様は何も知らないんじゃ?」 ふんっ、今度はマリカをdisるのかと無視をすることにした。ラベル分けの仕事は単調なのでお喋りをしながらも出来る。だからこそ、二人のお喋りは止まらない。 「なんかさぁ、コウの隣の部屋でしら〜っと暮らしてるじゃん。お友達だと思ってたから許してたんだよ?なのにっ!いつの間にかコウと付き合っちゃって!だから心配だよ、コウは世間知らずだから」 「そうそう、そうです。コウ様は恐らく知らないことが多いと思います。どれだけマリカが用意周到で自分の思い通りにするかってこと!悪知恵も働きますからね、あいつは」 はぁっと、わざと大きなため息をついて、止まらないお喋りを止めてやった。 「あのね、心配してるんだか、噂好きなんだか知らないけど!こっちは楽しくやってるんで構わないでくださいよっ!マリカのことは俺が一番わかってるんで」 ふんっとまた顔を背けて手を動かし始めたが、二人のお喋りはまた再開されている。 「えーっ?コウが一番知ってるんだってぇ…そんなことないよね?どう思う?マリカってコウに言わないことの方が多い気がするけど。パレードだってそうじゃんね、マリカがほぼ仕切ってさ」 「そうなんですよ。マリカはコウ様に知られないうちに全て片付けるんですよ。気が付かれないように、証拠隠滅までやるからやり方がマフィアなんですよ、あいつは」 ヒソヒソコソコソと二人は話をするが、ここにいるのは三人だけなので全部筒抜けである。 「もう!大丈夫だって!騙されてなんかないから。なんでマリカが俺のこと騙すんだよ、全くさぁ」 二人のヒソヒソ話を遮るように大声で言ってやった。その時、テレパシーが聞こえた。 《コウ?どこにいる?》 《マリカ!王の執務室にいる。全くさ、二人とも喋ってばっかりでさ、ラベル分けが進まないよ。全くさぁ》 《ははは、構ってやれよ。陛下とは久しぶりだろ?俺も今からそっち向かうから、一緒にキッチン行こうぜ》 《マジ?やったぁ!待ってるね》 テレパシーでマリカと話をしている間も、父とドーナツ様は、あーだこーだと喋っている。そろそろランチの時間となる。 「失礼いたします」 「おっ!マリカ!なーんだ近くにいたのかよ〜!もうちょいで終わるからさ、待っててくれな」 あれからすぐにマリカは執務室まで来てくれた。マリカがバーンと入ってくると、父とドーナツ様は「ひっ!」と驚いている。噂話している本人ご登場なので、そりゃびっくりするわな。 「陛下、後は私がやりましょうか?」 「え、えっ、マリカが?いいよ…大丈夫だよ、もうあとちょっとだしさ」 「そうですか。本日提出する書類がまだ準備できていないようでしたので…あ、午後の議会で決定事項に印を押すのもこれからですよね。お話に夢中でお忘れでしたか。大丈夫でしょうか、お忙しいようなので、こちらは私が引き取りますので」 「えっ…うん、あ、そう。じゃあ、ここはお願いしようかな」 父がチラッとコウの方を見て目が合う。マリカは笑顔で父の手から書類を受け取り、ラベル分けの仕事を引き取っていた。 「ドーナツ様、お久しぶりでございます。あ、そのマグカップ王宮キャンペーンのやつですよね?」 「えっ…あ、うん、そうだな。そうそう」 続いて話しかけられたドーナツ様は、マリカに明らかにギョッとしていた。 「かなり人気のキャンペーンだったようですが、ゲット出来たんですね。よかったです。Tシャツもゲットできましたか?」 「うっ…あ、Tシャツはもらってないなぁ、私には似合わないからって思って。マグカップだけでいいかなって、ははは」 あの厳格で堅物なドーナツ様がマリカにタジタジになっているのは意外であり、不思議だ。 「あーそれ!私も欲しかったのに、もらえなかった。キャンペーンのマグカップ」 マグカップの話題となり、急に横から父が話に加わった。父がキャンペーンを知ったのは終わってからだったらしく、もらえなかったことを悔しがっている。 「えーっ!父さん欲しかったの?あんなのいる?いらねぇ〜って」 ドーナツ様も持っているし、ロランや父も何故みんなそんなに欲しがるのか謎である。オーウェンみたいにイジるために必要っていうことであればわかるけど。 「陛下、承知いたしました。マグカップとTシャツをすぐお届けいたします。ドーナツ様もTシャツお届けしますので、お受け取り下さい」 マリカがすぐに手配をすると二人に伝えていた。マリカの仕事ではないのに、すぐに手配可能だなんて約束が出来るなんて凄いことだ。 コウは感心した。キャンペーンは既に終了しているっていうのに、マリカは問題ないような顔をして対応している。何でも出来る男でカッコいいって、改めて思う。 「ほら、陛下、やっぱりそうですよ。マリカが仕切ってるんですって」 「やっぱり?こんなにすんなりさぁ、お届けしますってさぁ、おかしいよね?」 またコソコソと二人が喋っている。 「ほら、陛下、急がなくて大丈夫ですか?ドーナツ様も、陛下とご一緒しなくて本当に大丈夫ですか?ここは問題ありませんので、お任せください」 ニッッコリとした笑顔でマリカが二人に向かって言うと、二人は執務室から出て行った。 「マリカ、お前さ…」 「何?どうした?」 「何でもできて、やっぱりカッコいいな」 コウがそう言うと、マリカは笑顔になり執務室でキスをしようとしてくるので、それだけは何とか阻止していた。

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