7 / 37
第7話 新しい仕事
七瀬には土地神という立場とは別に仕事があった。
住民のために、薬師をしているそうだ。
「薬師とはいうが、簡単なものばかりだ。難しい病やけがは治療院へ行ってもらう。ただ、処方する薬には、神力を入れているからな。効き目は良いはずだ」
神様の力を入れた薬。それは効き目もいいだろう。
「春斗には私の補佐をしてほしい」
初めは薬のことなんて知識もないし……と断ったが、他にできることもなく、ましてや何もしないでいるのも気が引ける。
結局、七瀬の手伝いをすることが一番無難だと引き受けることにした。
手始めに、薬棚の整理をすることとなった。
整理をしながら、多種多様な薬草について七瀬から教わる。
薬草一つでも効果があるが、複数を混ぜることによってまた違った効果も発揮するらしい。 なんとも奥深く難しい世界だ。
しかし、もともと祖母秋江と薬草採りをしていたこともあり、自分でも驚くほど覚えは良かった。
「春斗は薬師の才能があるんじゃないのか?なかなか期待できそうだ。私は優秀な嫁をもらったな」
「え、あ、……ありがとうございます」
仕事では褒められたことがない春斗は、どのように返事を返したらいいかわからず、ドギマギしてしまう。しかも、さらっと嫁発言されている。
「そうだ、明日は薬草を採りに山に入ろう。ずっと家の中にいるのも体に良くない」
「山ですか?」
「そうだ、薬草と山菜と、この季節ならおいしい木の実もあるだろう」
「わあ、ぜひ行きたいです! 山の山菜や木の実はおいしいですからね!!」
春斗は山が好きだった。おいしいものもあるし、景色も空気も美しい。
春斗は遠足前の子どものように、わくわくしていた。
ともだちにシェアしよう!