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第11話 介抱
「春斗様?!」
「どうなさったのですか?!」
玄関をくぐるなり、里緒と菜緒が驚いたように声を上げる。
「説明は後だ。急いで湯を沸かしてくれ」
「湯浴みのご用意はできています! 手当て用にもお湯をご用意します!」
「ああ、頼んだ。とりあえず湯浴みに連れていく。寝間着を用意しておいてくれ」
七瀬は二人に指示を出しながら、足早に風呂場へと向かった。
「ちょっと痛むだろうが、堪えてくれ」
「っ……。はい」
七瀬は春斗を浴槽の淵に腰掛けさせ、桶でゆっくりと湯をかける。泥と血を洗い流し、ついでに枯れ葉が絡んでいた髪の毛も洗った。
「すみません……」
「気にするな。私が目を離したばっかりに……痛い思いをさせてしまったな。……立てるか?」
体の水分をふき取ると、傷口にまた血が滲む。七瀬は春斗に寝間着を羽織らせ、抱き上げる。
「あ、あの、自分で歩けますからっ」
春斗は慌てて降りようとしたが、七瀬はそれを許さず、しっかりと抱えたまま、春斗の部屋へ入った。
部屋には布団と、湯の入った桶、手拭いが用意されていた。
「他にご入用のものはありますか?」
里緒が心配そうに、後方から覗き込む。
「いや、ありがとう。下がってくれ」
七瀬の言葉に、里緒は一礼をして退室した。
布団に下ろされた春斗は、安堵の溜息を吐いた。
「まだ痛むだろう。薬を用意しよう」
「ありがとうございます」
春斗が礼を述べると、「気にするな」と微笑んで立ち上がる。
しばらくして、盆に数種類の薬を載せて七瀬は戻ってきた。
「まずは薬湯だ。体を温める効果と痛みを和らげる効果がある。もちろん神力も入れてある」
春斗は、起き上がろうとするが、腰の痛みに表情が曇る。
「いたっ……!」
「大丈夫か!」
七瀬は慌てて春斗の背中を支える。
「落ちた時にぶつけたのだろう。薬で落ち着けばいいが……」
七瀬からは心から心配しているのが伝わってくる。楽しませてくれようと山に連れて行ってくれたのに、こんなことになって申し訳ない。七瀬が気に病んでしまわないかと思い、春斗は笑顔を作った。
「今日はとても楽しかったです。朱火も美味しかったし、知らない薬草もたくさんあって勉強にもなりました。連れて行ってくれてありがとうございます」
これは本心だった。
怪我はしたけれど、ピクニックみたいで楽しかったし、七瀬のいろんな表情も見ることができた。自然の中で心が癒された。純粋に楽しいという感情を思い出すことができた。
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