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第22話 危機
突然、四方から蔦のようなものが勢いよく飛んでくる。
それは春斗の身体に巻き付き、女の手の動きに操られるように、春斗の身体を締め付ける。
じわりじわりと強くなる締め付けに、春斗は身を捩る。
腹、腕、太腿、そして首。春斗は痛みと息苦しさに顔を歪めた。
「ふふふ、苦しいでしょう? 逃げ出せるならやってみなさいよ。ただの人間にできるかしら? 貴方がいなくなれば七瀬様は解放されるわ。小汚い人間なんて消えてしまえばいい。そして七瀬様は私に感謝するの。もちろん七瀬様と私は結ばれる運命なのよ!」
狂ってる。この女は正気じゃない。春斗は何とか首の蔦だけでも解きたかったが、両腕は縛られている。
苦しい……痛い……
蔦は、楽しい遊びでもしているかのように、息のできるぎりぎりの力で締め付けていた。
着物ははだけ、蔦の絡まる太腿から血が滲んでいるのが見えた。
まずい。意識が朦朧として春斗は焦った。
このままでは本当に死んでしまう……
「っ……七瀬さん……助けて!!」
最後の力を振り絞るように、そう春斗が叫んだとき、強い風が荒ら屋に吹き込んだ。
それと同時に春斗に巻き付いていた蔦と、体を拘束していたものが切られ、開放される。
急激に体内に空気が入ったことで、春斗は噎せ返った。
「春斗、大丈夫か?」
七瀬の言葉に返事をしようとしたが、春斗は声を出すことができず、首を縦に振り頷いて答えた。
「木蓮よ、なんと愚かなことをしたのだ」
七瀬の怒りの様相に木蓮はたじろぐ。
「な、七瀬様には私の方が相応しいのです! こんな何の変哲もない、力もない人間なんか……こんな人間は消えて当然! 七瀬様は騙されているのです!! 目をお覚まし下さい!!」
木蓮は懇願するように喚く。その瞳は赤く染まったまま正気を失っているようだった。
「……消えて当然だと? 木蓮……それは本心か」
七瀬は怒りに震えた。
室内に再び激しい風が吹き荒れる。
七瀬の長く美しい髪は舞い上がり、瞳が黄金に変化する。
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