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第24話 帰宅

 帰宅すると春斗は布団に寝かせられた。依然として意識はない。  七瀬は春斗の着物を脱がせ、傷の程度を確かめる。  七瀬は眉をひそめた。  痛々しい締めの跡が無数に付いており、春斗の色の白い肌にくっきりと残る傷跡はより一層目立った。  もっと早くに駆け付けていられたら……  七瀬は悔し気に歯を噛みしめた。  七瀬が春斗の異変に気付いたのは、助けに駆け付ける一時間ほど前だった。己の中に感じる春斗の気配がぐらりと歪んだのだ。その後、里緒と菜緒の動揺した気配を感じ取った。「何かが起きている」そう思ったが、七瀬は未だ本殿で祈祷の最中だった。主神である七瀬が抜けるわけにはいかない。  七瀬は焦る気持ちを封じて仕事をこなし、その後最速で駆けつけたのだった。  春斗は、意識は戻っていないものの、苦痛に顔を歪めていた。  七瀬は、傷の一つ一つに丁寧に薬を塗りこむ。 「痛むだろう。すまない……」  それから数日、七瀬はなるべく春斗に付きっ切りで看病した。仕事などでどうしても離れなければならない時は、里緒や菜緒を必ず側に置いた。 「七瀬様、何か召し上がってください。ここ数日ほとんど召し上がっていないではないですか。いくら丈夫なお体とはいえ、流石に影響が出ます」  里緒が盆に白米とみそ汁、漬物を乗せて持ってきた。 「ああ、そこに置いておいてくれ」 「一口でもいいので召し上がってくださいね」  里緒はそう言い残して、退室した。  七瀬は盆に乗せられた朝餉に目をやると、気が乗らないとでも言うような表情で盆を引き寄せる。白米を一口食べて溜息を吐いた。 「お前と一緒でなければ食事もこんなに味気ないものなのだな……春斗、早く目覚めてくれ」  七瀬は箸を置き、春斗の額にそっと手を当てた。

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