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第31話 初夜 R15

 夜、春斗が床の準備をしていると、七瀬が顔を出した。 「春斗、あの……」  珍しく言い淀む七瀬に春斗は首を傾げた。 「どうしました?」 「今日は一緒に寝ないか? 何だか離れがたくて」  視線を彷徨わせる七瀬は照れているのだろう。珍しい光景に春斗は動揺した。  ……可愛い。美人で格好良くて、不意打ちで可愛いなんて反則だよ……  最近、七瀬のこんな新しい一面を見ることが増え、その度に春斗の胸はドキリと小さく音を立てる。 「いや、やっぱり何でもない」  何も言わない春斗に、断られると思ったらしい七瀬を春斗は慌てて引き留めた。 「ま、待ってください! 一緒に休みましょう!!」  今日は春斗が布団を持って七瀬の部屋へ行くことになった。  二つの布団を並べてそれぞれ床に入る。 「何だか照れますね」  なんとなく七瀬の方を見ることができずに、春斗は天井を見つめる。  ドキドキと煩い心臓に、果たして眠ることができるのだろうか。瞳を閉じると感覚が鋭くなり、七瀬の気配を強く感じて余計に落ち着かなかった。  一人でドギマギしていると、七瀬の動く気配がした。  七瀬も落ち着かないのだろうか。そう思った春斗だったが、七瀬の行動に目を見開いた。  七瀬は、あろうことか春斗の布団に潜り込んできたのだ。 「な、七瀬さんっ?」 「ん? どうした?」 「いや、あの……えっと」  春斗がしどろもどろになっている間に、横になった状態で、背中から抱きすくめられた。 「春斗……いい匂いだ」 「っ……」  首筋に顔を寄せられ口づけられる。春斗はその感触に言葉が出なかった。  ゾワリと嫌悪感ではない何かが背中を這いあがる。 「春斗……」  耳元で囁かれる普段とは違う低く掠れた声。なんと官能的な声だろう。春斗は自身の体が熱を持ち始めているのに気づかない振りをしたかった。 「え……」  その時、春斗は腰辺りに違和感を感じた。  ……これって……まさか。  そう、腰辺りに当たっている硬い何か。  春斗はその存在を感じて、赤面し硬直した。 「あ、あの七瀬さん?」 「すまない春斗。気持ちが通じ合ったばかりだというのに、我慢ができない」  そう言って、腹部に回されていた七瀬の手が、寝間着の裾を割り、春斗の太腿を撫でる。  その手つきはこの上なく優しくて、気持ちがいい。  気づいた時には、春斗の寝間着の帯は七瀬によって解かれていた。

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