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第三章 訪問者④ ♡

 せいぜいのんびりしていけよ、とは言ったものの、それはそれ、これはこれである。抑え続けた性欲が限界突破し、いよいよ暴発寸前というところまで迫っていた。   「んにゃあ~、もう飲め~ん」    遼二は寝袋に包まって呑気な寝言を漏らす。手土産に持ってきた酒をほとんど一人で飲み干して、今は良い気分で眠っているのだから、何ともお気楽すぎていっそのこと腹立たしい。  そう感じるのは、自分が眠れないせいだ。疲れているのに眠れない。寝ようと思えば思うほど、目がギンギンに冴えてくる。  俺の隣で、歩は小さく寝息を立てている。すう、すう、と繰り返す穏やかな息遣いが伝わってくる。  俺は寝返りを打ち、壁側を向いて眠っていた歩の背中にぴったりとくっついた。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだから、と自分に言い聞かせながら、歩の体に手を触れた。  歩は起きなかった。相変わらず、規則正しい寝息が聞こえてくるだけだ。  俺は歩を抱きしめた。ちょっとだけだから、すぐ離れるから、と誰にともなく言い訳をしながら、たっぷり数分間は抱きしめていた。  久しぶりに抱きしめた歩の体は、すごく小さくて柔らかかった。それにすごくいい匂いがした。俺は歩の後頭部に顔を埋めて、たっぷり息を吸い込んだ。同じシャンプーを使っているはずなのに、なぜか甘い匂いがした。さらさらの髪が頬を撫でるのがくすぐったかった。  こうなると、もはや眠るどころではない。目がギンギンどころか、発熱したかのように体の芯が熱くなってくる。  自然と手が伸びていた。ちょっとだけだから、と呪文のように唱えながら、俺は歩の体を好き勝手に弄った。体の輪郭をなぞり、薄い胸を撫で回し、括れた腰とまろやかな尻のラインを辿り、太腿に至る。  服が邪魔だ。そう思うや否や、迷う間もなく服を脱がした。寝巻にしているスウェットを捲り上げて、少し筋肉のついて逞しくなったお腹を摩る。手を上へと滑らせて、平坦な胸を揉みしだく。ショートケーキを彩る苺のような突起を指先で摘まむ。   「っ……」    歩が息を呑んだ。ような気がした。いや、おそらく気のせいだ。だって、息を呑んだのは俺も同じだったから。  乳首って、こんなに柔らかかったっけ。いや、勃起しているから固いんだけど、それだけじゃない弾力がある。ぎゅっと押し潰すように摘まんでも、ツンと弾き返してくる。  乳首ってこんな感触だったっけ。尖らせているってことは、多少なりとも気持ちいいのだろうか。寝ていても触られれば勃起するらしい。  尖った乳首を捏ね回すのって、こんなに気持ちよかったっけ。あんまりしつこくすると歩に怒られるから、ひたすら乳首を責め続けるなんてことは普段はしないのだが、今はそんな心配もなく、心置きなく乳首を弄り倒せる。  引っ張ったり、転がしたり、抓ったり、引っ掻いたり。気の向くまま、無心でいつまでも触っていられる。そうしていると、何だか心が和らいでくる。赤ん坊の頃を思い出すのだろうか。少し懐かしいような気もした。  触るだけじゃなくて、吸いたくなってきた。それはさすがにやり過ぎだろうか。音なんか立てたら部屋の隅で寝ている遼二を起こすだろうし、歩だって絶対に起きてしまう。拳一発程度を喰らうのは仕方ないとしても、そうなれば行為は強制的に中断だ。  俺は、歩のスウェットパンツをそっとずり下ろした。下着諸共ずらしてしまえば、小ぶりな尻が露わになる。もちろん、布団を被っているから目にすることはできないが。  いっそのこと、行けるところまで行ってしまおう。歩をなるべく起こさないようにしながらも、起こしてしまった時は潔く諦める。グーパンだろうがビンタだろうが、甘んじて受け入れよう。ただし、歩が起きるまでは好きなだけ触らせてもらおう。  滑らかな肌だ。案外肉感のある太腿、柔こい内腿、なだらかな鼠径部、そして丸っこいお尻。隅から隅までどこをとっても完璧な手触りだ。この温もりに、俺は飢えていた。  じわりと舌に唾液が溢れる。ごくりと喉を鳴らして飲み下す。今更躊躇している場合でもないと思うが、本当にこの先へ進んでいいのだろうか。だけど、もう我慢できない。  歩が目を覚ましたらすぐやめる。遼二の起きる気配がしただけでも即やめる。そう自分に言い聞かせて、俺はそっと歩の秘部をなぞった。  くちゅ、と粘着いた水音が響いた。濡れていた。まさかそんなはずはないと思い、もう一度指を滑らせる。ぴちゃ、と微かに音が響く。やはり濡れていた。  おっぱい弄られて感じちゃったってこと? いやでも、男の尻って勝手に濡れるんだっけ。そんなわけないよな。普段は歩が事前に準備を済ませてくれるから、俺がここに指を突っ込む機会はなく、この状況が異常なのかどうか分からない。  ただ、自然に濡れたとしたらエロすぎるし、そうではなくて歩が事前に準備をしていたのだとしても、それはそれでやっぱりエロすぎる。お触り厳禁なんて口では言いながら、自分で触るのは我慢できなかったなんて。  案外、歩もこうなることを望んでいたのかもしれない。そうでなければ、わざわざここを濡らして待っているはずもない。俺が暴発寸前だったのと同じように、歩も我慢の限界だったのかも。  そんなことを考えながら、俺は歩のそこを闇雲に掻き回した。ちゃぷちゃぷと浅瀬に水を跳ねて指を抜き差しし、付け根まで入れてしまってぐちゅぐちゅとナカを掻き混ぜる。微かな音ながら、夜の静寂にはっきりと響いた。  このまま挿れてしまいたい。気持ちよくなりたい。このしとどに濡れた蜜壺に自身を沈めてしまえれば、どんなにか気持ちいいだろう。息子が限界を訴えている。   「……挿れてェ……」    俺は思わず呟いていた。そんなことを言ったって、さすがにそこまでする度胸はない。いくら眠っているとはいえ、友人のいる部屋でセックスはできない。それに、歩に無理を強いたいわけでもない。こいつに求められた上で、抱きたいのだ。  そんなことを真面目に考えて、俺は指を引き抜こうとした。その時である。  ぎゅう、と歩の体が強張った。抜けようとする指を追いかけるように、ビクンッ、と腰が突き出された。指先に絡む柔らかな肉が、小刻みに痙攣する。奥へと引き込むように何度も震え、舐るように吸い付いた。  少しして、痙攣が収まった。ちゅぽ、と音を立てて指を抜くと、再び腰が大きく跳ねた。薄明かりの下でも分かるほど、歩の耳が真っ赤に染まっている。そっと顔を覗き込めば、たっぷりの涙を浮かべた瞳に睨まれた。   「歩……っ」    歩の手がそっと後ろに回り、俺の股間を撫でた。そこはもちろんギンギンである。情けない話、触られただけでちょっと漏らした。  もはや体裁などを取り繕っている場合ではない。俺はすぐさまズボンを下ろし、求めて止まなかったその場所へと突撃した。   「っ……!」    挿れただけで、歩はビクビクと腰を跳ねた。辛うじて声は抑えられたものの、「性急すぎる」と目で訴えられてしまった。   「わり……」 「ん……もっと、やさしく……」    息も絶え絶えに掠れた声で乞われると、逆に酷くしたくなるというのが男の性だ。むくむくと肚の中で育つ質量に、歩は少し怯えたような顔をした。   「ばか、これ以上……」    でかくするなと言いたかったのだろう。だが、歩はぎゅっと目を瞑って口を押さえた。俺が腰を揺すったからだ。   「んっ、んぅ……もっと、ゆっくり……」 「わり、すぐ終わらすから」 「ゃ、んっ、んん……っ」    必死に押し殺そうとしても、くぐもった声が漏れてしまう。その様子がますます俺を焚き付ける。声なんか我慢できなくなるくらい、気持ちよくしてやりたい。イかせてやりたい。   「っ、やめ、そんなに……」 「これ、気持ちいいんだ? すげぇ締まる」 「ばかっ……」    俺に抱きしめられたまま、歩はビクビクと肢体を跳ねた。蕩けた柔肉は何度も痙攣を繰り返している。歩は激しく胸を喘がせながら、ぐっと歯を食い縛る。   「准、……っ」    歩の腰を掴んでいた俺の手に、歩の手が重なった。導かれるまま、歩のモノに触れる。そこは固く屹立し、悦びの涙に濡れていた。   「出ないように押さえててくれ……」    乞われるままに、俺は歩のそこを握った。付け根部分を圧迫するように握りしめる。   「こう? 痛くねぇ?」    歩は声もなく頷いた。  歩のそこを握りしめながら、俺は腰を揺すぶった。体勢的にも状況的にも、あまり激しくは動けない。しかし、物音を立てることさえ憚られる真夜中の静寂の中で、それでも欲望を追いかけることをやめられないというこの状況は、性感を煽るのには十分すぎた。  同じ部屋で友人が眠っているのに。いつ起きるとも限らないのに。もしかしたら、もう起きていて聞き耳を立てているかもしれないのに。バレたらどうしよう。どうなるのだろう。不安も緊張も、いとも容易く興奮に変わる。  音を立ててはいけないはずだったのに、今やそのことに気を配る余裕もない。にゅぷ、にゅぷ、ぢゅぷん、といやらしい水音が憚ることなく響いていた。   「ひっ、ぁ……ん、んん……っ」    歩は左手で口を押さえ、右手は俺の手を引っ掻いた。歩のモノを戒める俺の手の甲に爪を立て、カリカリと引っ掻く。震える腰も、うねる淫肉も、全てが限界を訴えていた。   「っ、俺も、もうっ……!」    中に出すけどいいかということを言外に含ませて尋ねると、歩は夢中で頷いた。   「くっ……」 「んん゛っ――!」    最奥にたっぷりと放った。快感がじんわりと全身に広がっていくような感覚を覚えた。長いこと耐えてきただけあって、自分史上最高に気持ちのいい射精だった。   「っは、ぁ……っ……、んぁ……っ」    歩は、指の隙間から切ない喘ぎを漏らして、ビクッ、ビクンッ、と肢体を震わせた。その度ごとに腰が後ろへと突き出され、ナカに収まったままの俺の息子をねっとりとしゃぶる。小刻みに収縮する襞が、媚びるように吸い付いて離れない。  俺は、半分抜けかけていた自身を、再び奥へと押し込んだ。歩の腰が逃げるのを、抱きしめて押さえ込む。歩は肩越しにこちらを振り返り、信じられないという目で俺を咎めた。   「ばか、なに考えて……っ」 「これで終われると思うのかよ」 「む、むりだ、もう……」 「お前だって足んねぇだろ。ナカ、すごい吸い付いてくるけど?」 「っ……」    歩は息を呑む。と同時に、肚の奥が締まった。きゅきゅっと甘えるように締め付けて、繰り返し収縮する。   「またイッちゃったんだ? かーわいい」 「っ……ばか……」 「あのね、そういうの逆効果だから。ますますイジメたくなっちゃうから」    俺は歩の片足を持ち上げた。開かせた脚の間に入り込むようにして密着し、深く腰を突き入れる。激しい動きではないものの、ぐりぐりと奥を捏ね回す。   「ぁ、んん、おく、が……っ」 「気持ちい? 俺もすげぇいいよ」 「や、ぁん、だめ、こえがっ……」 「聞かせりゃいいじゃん」    俺が言うと、歩は悔しそうに涙を浮かべ、真っ赤になって俺を睨んだ。   「いいのかよ……?」 「いいよ。お前は俺のモンだって、胸張って堂々と宣言してやらぁ」 「んな度胸が、てめェにあったとはな」 「あるに決まってんだろ。むしろ度胸しかねーよ」 「ふっ、ふふ……バカだなァ……」    笑うとナカが引き攣れて少し苦しい。歩は柔軟に身を捩って後ろを向き、俺の首筋にそっと手を這わせて抱き寄せた。   「だったら、思う存分満足させてみろ」 「言われなくても」    期待に潤んだ唇に、俺は遠慮なく噛み付いた。ちゅうちゅうと舌を吸い、甘い口内を弄って、ぴちゃぴちゃと音が鳴るのも構わずに、溢れる唾液を絡め合う。こんなにも濃厚なキスはいつぶりだろう。キスだけで心が満たされる。幸せな快楽が押し寄せる。  舌を絡めるごとに、歩は敏感に反応した。ピクンと腰を仰け反らせ、キスの合間に喘ぎを漏らす。   「准、じゅ……も、だめっ……」    たっぷりの涙に潤んだ瞳を歪ませて、歩は素直に快楽を訴えた。低く抑えた囁き声が、いつにも増して色っぽい。  声を聞かせてやればいい、なんてさっきはつい口走ったが、やっぱりダメだ。いざとなると惜しい。こんなにも甘く蕩けた声で鳴くことを、誰にも知られたくはない。俺だけが知っていればいいことだ。  甘い嬌声も絶頂の悲鳴も、どうしようもなく零れる吐息すらも、全てを呑み込むべく俺は歩の唇を塞いだ。俺の腕の中で、声を出すことも動くこともままならないまま、歩は絶頂を受け入れた。   「……くるしい」 「ごめん」 「聞かせりゃいいって、ありゃ何だったんだ」 「無理。聞かれたくねぇ」 「威勢のいいこと言ってやがったくせに」 「だって俺のだもん」 「ふん……」    歩は眦を緩めると、俺の頬をそっとなぞった。一旦は離れた唇が、再び惹かれ合う。   「だったら、せいぜいしっかり塞いどくんだな」    唇が重なった。磁石のようにぴったりとくっついて、もう二度と離してやらない。
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