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第3話
宅内から出てきたのはボサッとした頭はしてるけど長身のイケメンで。
それを呆けた顔で見てる俺。
うおお背高え。
目がキリッとしてる。
羨ましい。イケメン……いいなぁ。
ちんまい平凡な俺とは違って、上下ジャージサンダルなのになんでこんなにカッコイイんだろ。
「君、もしかして。──あの荷物の人?」
声をかけられてハッと我に返る。
「あ。はい……」
お、これは。
話が分かるパターンでは!?
「幸村(ゆきむら)……え〜と……──せん…?」
「あ、千明(ちあき)です。幸村千明(ゆきむらちあき)」
「ちあきくんね。ふ〜〜ん……」
ん、なんか上から下まで見られてるような?
あ。めっちゃにこやかな笑顔。穏やかそうな人?
「そっかそっか。君が千明くんか。例の荷物取りに来たんでしょ?さあ上がって上がって」
「え、あ、いや……俺は荷物だけくれればいいんで──」
「荷物見たけど、なかなかエグいもの買ってるんだね。極太バイ……」
!?!?!?
「あああ入りますお邪魔しますッッ!!」
あっぶねぇぇ!!
突然何言い出すんだこの人!?
思わずバタン!と自ら見知らぬ人の家に侵入し扉を閉める。
ビックリしたああああ……。
「素直だね千明くん」
素直っていうか。当然のリアクションじゃね?
「いや素直っていうかその……」
────……カチャリ
ん?
後ろからガチャンと鍵がかかった音がする?
「ふふ。俺、鹿嶋瑛太(かしまえいた)。とりあえず中、入りなよ。寒かったでしょ?あったかいお茶持ってきてあげるから」
鹿嶋瑛太と名乗ったイケメンはこちらを向いてにっこりと頬笑んだ。
「え…あ、はい。お邪魔…しま、す……」
え、俺って。もしかして扱われやすいのかな??
靴を脱いで。
一呼吸おいて、あたりを見渡す。
よくあるワンルーム。玄関があって廊下があって、廊下の脇にキッチンがあって、その先に広めの一室。
「ほら、こっち」
鹿嶋瑛太と名乗った男性は素知らぬ俺のことなど気にも止めずに背中を許してスタスタと廊下を渡る。
後ろ姿。意外と髪が長い。後ろで結んでたのか。
歩きながら、ジロジロと挙動不審に室内を観察しつつリビングへ。
ホント俺んちと似たような間取りだ。
まあよくあるっちゃよくあるか。
「とりあえず。座布団がわりにベッドに座っててよ。今荷物持ってくるからさ」
「あ、はい」
言われるがままにベッドの上にちょこんと座る。
座って、もっかい辺りを見渡す。
壁にジャケットのかかったハンガー。嗚呼、あの人似合いそうだな。
机の上に電源のついたノートパソコン。仕事中だったのかな?
整われた綺麗な自室。俺ん家とは大違い。
ふう、とため息をついて。
う〜〜んと伸びをしていると廊下から鹿嶋さんがお茶の注がれたコップを持って歩いてきた。
「おまたせ。はいお茶、外寒かったでしょ?」
「あ、ありがとうございます」
鹿嶋さんからあったかいお茶を受け取って一口いただく。
あ、美味しい。
美味しいからついついグビグビと飲んでしまう。
あったかくてホカホカする。
俺がホッとした顔をしたのか、鹿嶋さんの顔が綻ぶ。
うん。
鹿嶋さんって、やっぱイケメンだな。
ボサっとした長髪を単純にひとつでまとめて縛っただけなのにそれがまた似合う。
切れ長の瞳に整った唇。
鹿嶋さんくらいイケメンだったら世界も変わっただろうな。
……なんて思いながら残りのお茶をすする。
「千明くんってさ、可愛いね」
「へぁっ!?」
むせそうになった。
「美人だし。モテるんじゃない?おしゃれだし、刈り上げのショートヘアもよく似合ってる」
俺が美人?初めて言われたぞ。
おしゃれ……まあダサくはないと思う。
「いや、俺。モテたことないですけど…」
「へぇそうなんだ。世の中の女性は見る目ないね。こんなに可愛いのに」
ふふっと笑う。
その笑い顔に見惚れていたら、なんか視界がぐにゃんとしてきて。
グラぁって……。
「あれ、俺……ぇ…?」
「ん?」
目の前の鹿嶋さんが二人に見える。
「なんか、視界が……あぇ……?」
身体も、さらに火照ってきてるような。
「なんか、あっちぃ…?」
「大丈夫?じゃあ、ベッドに横になろっか?」
「ぁ、はぃ────?……?」
言われるがままに。そのままコロンとベッドに倒れて、横になる。
クラクラするけど気持ち悪くはなくて。
むしろ火照りが心地いい。
でも熱い。
「初対面の人をあまり信用しない方がいいよ?千明くん」
「ふぇ……?」
穏やかに笑う鹿嶋さんの手には。
俺に届けられるはずだった荷物に入ってたであろうモノが添えられていた。
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