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第9話

 あれから。 「ん……ぅ、……ぁ……?」  ベッドの上? 「あ。おはよ、千明くん」  この声は……。 「あ、鹿嶋さん……?」  鹿嶋さんがベッドに腰掛けて、いつもの穏やかな笑顔で俺の顔を覗き込みつつ、キスもされる。 「んぅ……」  キス。気持ちいい。 「ふふ。気を失うくらい気持ちよかったんだね?それに初めてなのに潮もふけるなんて。千明くんはほんと可愛いね」  潮。  男でもふけるんだ……。  ってそうじゃない。謝らなきゃだ。 「──あ、あのっ……その。部屋、汚しちゃって──すみません……」  突然の俺の謝罪に鹿嶋さんの顔は一瞬キョトンとして、次に豪快に笑い出した。 「大丈夫大丈夫気にしないで。ベッドの上だけだったし。シーツならさっき変えといたから違和感ないでしょ?あ、ついでに千明くんの身体も吹いといたからね」 「え、あ」  ほんとだ。あんなにいろんな液体でベタベタだったのに。綺麗になってる。  裸なのは変わらないけど。  ずっと寝てるのも申し訳ないと、ベッドから起きあがろうとすると。 「んぅ……?」  下腹部に違和感があって。 「急に動かないほうがいいよ、抜けちゃうから」 「え?」  違和感というか。  異物感? 「寝てる千明くんのアナルがあまりにもヒクついてたものだからね」 「え?」 「それにしても千明くん。どこまで拡張する気だったの?あんなに道具注文して」 「え……」 「全部挿れるの大変だったんだよ?」  えっ?? 「アナルプラグ、アナルビーズ二本、エネマグラに極太バイブ」  えっ、え?? 「でもそれを全部一気に呑み込めちゃう千明くんのアナルはやっぱり優秀だね」  ええええええ!?!?!?  下腹部の違和感って全部オモチャだったのか。  でも。  でも。 「美味しそうに呑み込んで、ずっとヒクついてるの可愛い…」  なんなのか分かったら、なんだかドキドキが止まらなくなって。  ああ。  まただ。  また鹿嶋さんの好きにされちゃうと思うと、俺は。俺は。  勝手に、お尻が持ち上がっていく。  まるでヒクついているアナルを鹿嶋さんに見せつけるように。 「ああ、すっごくえっちだよ千明くん」  エッチな俺を見て欲しくて。 「鹿嶋、さん……」 「うん」  あ。  ナカに入ってるオモチャたちに意識が──── 「あ…っん……オモチャ……いっぱいィィ……」 「うん、いっぱい入ってるね」  俺の腰が動くたびにカチャカチャと無機物音がして、ナカに擦り込まれていく。 「は、ぁ…ぅん……」  カチャカチャした動きからくる刺激は今の俺には物足りなくて。  圧迫感と刺激が比例してなくて。  物足りない。  足りない。  足りない。  もっと────……。 「ん、なに?」  無意識に鹿嶋さんへと目を向ける。  彼ならきっと。  きっと。 「物欲しそうな目だね。これじゃ足りない?」  足りない。  全然足りない。  コクコクと縦に頷く。 「素直だね。可愛いよ」  可愛いって言われるたびに気持ちが昂ってる。  ドキドキする。 「オモチャ、弄ってもいい?」 「はい……」  弄ってもらえる。  それが嬉しくて。 「ふふ、お尻揺れてるね」  腰が揺れる。 「千明くんのエッチなアナルに下品なオモチャがミチミチに入ってる……じゃあ、全部動かそうか」 「え……っ?」    ──ズチュァッッ!! 「ひゃあアアアうう!!」  オモチャたちが一気に奥まで押し入ってくる。  鹿嶋さんが手のひらで押さえつけてる。  圧迫感がすごい。  それに。  弱いところを押し付けられてて、身体がその快楽に耐えられなくて痙攣し始める。 「あ……は、ァぅ……」 「スイッチ、入れるね。──ひとつ」  え。  ──カチ。  ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ…… 「きゃあうぅぅぅうううううう!?!?」  なにこれ。  なにこれ。 「ふたつ」  カチ。 「ひううゥゥぅっぅん!!」  ヤバい。 「みっつ」  カチ。 「ひゃああアァァァァ……ッッ」  腹ん中、ヤバい。 「よっつ」  カチ。 「あはあああアァァァァ〜〜……っ」  腹が、よじれる。 「最後のいつつめ」  カチ。 「ひぃいぃぃぃん!!」  ヤバい。  腹の中があらぬ方向にバウンドしてる。  弱いところもずっと押されて振動されて。 「千明くん、気持ちいい?」  気持ちいい。  キモチイイ。  気持ちいいから、はやく止めて。  気持ち良すぎておかしくなる。  振動とウネウネが。ヤバい。  振動同士がそれぞれぶつかり合って予期しないところを擦り出す。 「はうぅ……んッッ」  ヤバい。  ヤバい。  ヤバいイィィィィ……ッッ!!  こんなのすぐイッちゃうよおぉぉ!! 「あぅ!あぅん、はぅ、やあ、ああァァ…ん!アアアァァァァ!かし、まさ…これ、ダメえぇェェ……んんあァァッッ」  自分の意思とは関係なく腰が暴れる。 「ひうぅ、イク、いきゅ、イグ、いぎゅ、イグう、イクイクイッッ……〜〜〜〜ッッ!!」  ビュルルルッッと豪快に精液をぶちまけてシーツを汚す。  あ、やだ。  イッてるのに。  イッたばっかなのに。  当然だがオモチャは止まらなくて。 「あァァうううゥゥゥゥァァあああああんん!!ひゃぁうゥゥゥゥんん!!」 「可愛いよ、千明くん。すっごく可愛い。ケツめっちゃ揺れてるけど知らない男にアナル開発されてるの、そんなに気持ちいいの?」  知らない男。……そうだ、鹿嶋さんは知らない男だ。  そうだ。  なんで俺、こんなことになってるんだっけ?  本来は彼女にされるはずのプレイだったはずなのに。  なのに。  なのに……。  改めて言われたのが、なんか────  身体が震える。 「ちが、違うぅ……ッ、あんっ!も、うぅぅ……やあ……ッ」  違うって言いたくて。  もう、ただの知らない人じゃなくなってる自分がいて。  それを鹿嶋さんから言われたのが悲しくて。  鹿嶋さんだから。  俺。  俺?  彼女いるのに。  なんで俺、鹿嶋さんのこと────??  頭ん中ぐちゃぐちゃする。  頭も身体もグチャグチャで。  涙が止まらなくて。 「ちが……ッッ」 「違わないでしょ?……ほら」  男の手が玩具達を手のひらでグイッと押し込んでいく。  ナカの良い所を玩具達に弄ばれる。 「ひゃあぁァァァんん!!ダメダメソコ、だめぇッッ!!だめだからぁ…押し込まないでぇ……っ」  ダメなとこにバイブたちが当たって声が止まらない。  身体に力が、はいらない。 「ああァァん……も、ヤダァ、やら、やんンン…ッッ」  声とともによだれが止まらなくて、鹿嶋さんのベッドシーツを濡らしてしまう。 「気持ちいいんだね、かわいいよ。千明くん」  振動が脳に響く。  響いて。  その疼きは当然下半身にも追随して。 「またキちゃうから、もう抜いてぇ……」  やだ。  やだ。  またクるのやだ。  こんなに悲しくなるなんてヤダ。 「や、やら、またクるから、もうイキたくないぃぃ、ヤダヤダやだああァァやはああアア〜〜……ッッ!!」  精液が所狭しと溢れてきてシーツを汚す。  ヤダ。  やだ。  俺、鹿嶋さんのこと。好きになっちゃってる。  鹿嶋さんにされてるからキモチイイんだ。  そう気付いたら、余計に。 「ふあぁぁ……っ」  ゾクゾクが止まらなくて。  でも。  さっきまで気持ちよかったオモチャたちが。  虚しく感じるようにもなって。  気持ちいいのに。  気持ちいいのに。 「またイックうぅぅ〜〜……ッッ!!も、やらあアァァ……」  身体はこんなにも喜んでるのに。  涙が止まらなくて。    ──心にぽっかり穴が空いてる気がして。  俺。  俺、どうしちゃったんだろう……?

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