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【央華×楓季】Adore You 1

ifで央華と楓季が付き合うお話です。 匡次郎や慧菜は蚊帳の外ですのでお気をつけください。 ―――――――――  11月の半ば。都外での撮影のために、ホテルに一泊することになった。  打ち合わせを終えて、ネコムンのメンバーやマネージャーと別れた夜、一人シャワーを浴びていた。  央華と慧菜と離れて暮らすようになって、もう半月ほど経った。  二人との関係も思ったよりも気まずくならずに良好だった。このまま友人としてやり直せるのではないかと思えるくらいに。  そんな思いとは裏腹に、数ヶ月の間、二人と関係を持って覚えてしまった快感は簡単には忘れられるものではなかった。 「……っ、ん」  ぱたぱたと白濁した液体が飛び散り、お湯に流されていく。  一度吐き出してもなお、満たされない。  央華に奥を刺激される激しい快感。  慧菜に愛されて満たされる多幸感。  どれもこれも身体に、思考に刻み込まれてしまっている。  これじゃいけないと落ち着かせようとするけれど、どうにも難しい。  一向に治まらないままシャワーを止めて、身体を拭いた。  友達に戻りたい。それは間違いなくそうだ。また二人と関係を持って心労を溜めるのは望んでいない。  けれど、もう一度だけでも良いから抱いて欲しい。  そんな誰にも言えない望みが、心を蝕んでいた。  ふとドアをノックする音が耳に入り、身体が跳ねた。  慌ててバスローブを羽織ってバスルームから出て、部屋の入口の扉をそっと開けた。  そこにいたのは部屋着に着替え、何やら真剣な面持ちをしている央華だった。 「お疲れ。ちょっと、話いいかな」  扉を捕まれて距離を詰められ、思わず一歩引くのと同時に央華が室内に入ってくる。  気が気じゃなかった。  バスローブを羽織っただけで薄着なのもあるが、なにより火照ったままの身体が疼いて仕方なかった。 「ど、どうしたの央華?」  できるだけ平静を装いながら距離をとり、央華の様子を伺う。  やけに真剣な顔をしているのが気がかりだった。 「いや、ちゃんと謝れてなかったからさ」  なんとなくそんな気はしていたが、改めて謝られるとは思っていなかった。 「もう過ぎたことだし全然」 「それでもごめん。お前の優しさにつけこんで、傷付けて」 「ううん、そんな! もう大丈夫だから!」  深く頭を下げる央華の肩に手をやった。  大事な話なのはわかっているけれど、しっかり聞ける状況ではなかった。  バスローブで隠れているとは言え、一向に熱の引かない身体が恨めしかった。 「それで、さ……もう一つ話があって」  央華にじっと見つめられて気が気でない。  バレたのではないかと。  いっそバレてしまったら――。  一瞬頭をかすめた思考をどうにか振り払って、平然を装うけれど、心臓が早鐘を打った。 「顔、赤い……平気?」  央華に指摘され一層顔が熱くなる。 「う、うん! ほらシャワー浴びてたからさ」  ぱたぱたと顔を仰いで微笑んでみるが、央華は心配そうに首を傾げた。 「そう? なんかいつもと違う」  視線をそらそうとすると覗き込まれ距離を詰められ、心臓が張り裂けそうだった。 「えっと、あ、疲れてるのかな? 話その……明日聞くよ!」  我慢しているせいか、だらだらと蜜が滴るような感覚がして、落ち着かず膝をすり合わせる。  央華には悪いけど早く出て行って欲しかった。 「楓季」  それなのに央華にずいと迫られて、壁に追いやられる。 「楓季……好きだよ」  耳に入った真剣な声に動揺し、思わず顔を上げた。 「こんなこと今更、言う資格ないってわかってる。……でも、どうしても、伝えたくて」  央華が俺を好き?  その言葉も雰囲気もまるで告白でもされているみたいだ。  混乱して理解が追いつかず呆然としてしまう。  今まで央華には身体を求められてるだけだと、もっと淡白な関係だって思っていた。  だって、央華みたいな大人っぽくてかっこいい人に取ってしたら、俺なんて遊び相手にしたって務まらないくらいで……。 「え、ええと……そんな、いきなり、言われても……その」  どう受け止めていいかわからず、身体を押しやって、近すぎる距離から抜け出そうとするが、央華に制される。 「楓季」  状況がうまく飲み込めず、頭がぐるぐるしてしまう。  央華が俺を好き? そんなわけない。  そもそも、こんな近い距離でばれちゃったら――いっそ、……いや、ばかばかそんなの絶対だめに決まってる。  なんとかひとまず距離を置こうと身を引くと、意思に反して央華に抱きしめられてしまう。 「頼む、逃げないで」  切実な央華の声にはっとする。  それと同時に、抱きしめられて身体が密着し、慌てて突き飛ばすようにして央華を押しやった。 「楓季、お前……」  顔が熱い。なにが起こってるのかもう、わけがわからない。 「ち、ちがうの! これは、その」 「……いいよ? 俺を利用して、いいよ」  耳元で囁かれて、ドクンと心臓が跳ねた。

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