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【央華×楓季】Adore You 6

 12月も半ばを過ぎ、年末年始ムードの中、慌ただしく日常は過ぎていった。 「楓季はクリスマスは仕事?」 「うん。でも3人での仕事終わったら予定無いよ……央華は?」 「実家戻らないとなんだ。ほら家、母親がイギリス人だからさ……クリスマスは家族の時間なんだ」  あんなにも苦しそうに家族への気持ちを吐露していた央華のことが心配だった。 「帰りたくない」  そう漏らす彼が気にかかってしかたなかった。  クリスマス当日。3人揃っての番組の収録を終えて、マネージャーに車で送ってもらった。  夕暮れの街は賑やかで、カップルが手を繋いで歩いている。  央華だけ彼の親との待ち合わせの駅前で、一人車を降りた。  その後姿を見ながら息を吐いた。 「すいません、ちょっと央華に話あって」  そう断って、慧菜とマネージャーを待たせて車から降りた。  冷たい空気が火照った身体を冷やす。  一歩一歩駆け寄りながら、鼓動が早くなるような気がした。 「央華!」  声を掛けると、央華は驚いてぱっと振り返った。  街路樹のイルミネーションが眩く光る中で、彼はひときわかっこよく見えた。 「楓季、どうした」  彼の側まで駆け寄って、上着のポケットから小さな箱を取り出した。 「……受け取ってもらえる?」  顔が熱い。心臓がうるさい。  箱を俺の手から受け取ると、央華はそっと開いて中身を確認して、俺をまっすぐと見た。 「楓季、これ……」 「あのね、俺、央華が好きだよ」  箱の中身は指輪だった。  央華から貰ったプレゼントのお礼にと、かなり悩んで選んだ。 「もっともっと一緒にいたい、だから――」  今の精一杯の気持ちを伝えようとしているのに、央華はおかしそうに声を出して笑った。 「ごめん。すっげーうれしくて」  央華は箱から指輪をとると右手の薬指にはめて、満足そうに微笑んだ。  そして、その指輪に顔を寄せてキスをして見せた。 「絶対大事にする、これも楓季も」  にっこり微笑む央華の綺麗さに加え、予想もしていなかったその仕草に顔が火照った。  車内に戻り、再び車が動き出す。  央華の背中を見送って、未だに治まらない胸の鼓動を鎮めるように深く呼吸をした。  誰かのために何かをしたいと思えるのが好きならば、きっと俺は央華が好きだ。  弱い部分に寄り添いたいと、支えたいと、そう思う。  スマホを取り出すと、央華からのメッセージの通知があった。 『嬉しすぎてちゃんと言うの忘れてた』 『返事はYESだよ』   

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