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第6話 破壊

 巳影は、七瀬の風に阻まれながらも大暴れする。巳影の太い尾が屋敷の屋根を叩き、再び屋敷が鈍い音を立てた。 「ははは、もう少しだ。神鏡を寄こせ!!」  七瀬は袖を大きく振り、風を強める。 「ぐぁっ……」  巳影は苦しそうに悶え、動きを止める。しかし、風の拘束を突き破るように吠え、再び暴れる。  その時、巳影の燃えるような瞳が春斗を捉えた。  巳影は、徐に方向を変え、春斗めがけて飛びかかった。 「春斗っ!!」  来るであろう衝撃に目を閉じた春斗だったが、その衝撃は一向に訪れない。  恐る恐る目を開けた春斗は、目の前の光景に目を見開いた。  巳影が、立ちはだかった七瀬の肩に牙を突き立てていたのだ。 「七瀬さんっ!」  春斗が駆け寄ろうとするが、里緒と菜緒に止められる。 「春斗様はこちらに! 出てはなりません!」 「っ、でもっ!」  七瀬は苦悶の表情を浮かべ、春斗を見る。 「大丈夫だ」  春斗は何もできない自分に不甲斐なさを感じ唇を噛みしめた。  その時、大きな衝撃音がして顔を上げる。  再度体当たりされた屋敷の一部が、堪えきれずに崩れ落ちた音だった。  七瀬は怒り、その瞳が金色に輝く。  いっそう強い風が吹き、大きな龍のように渦巻く。その龍は巳影を捉え、巨体を締め上げた。 「ぐああああああ!!」  耳をつんざくような悲鳴を上げ、地面をのたうち回った後、巳影は霧のようになって消えた。  里緒と菜緒が「もう大丈夫」と言うように力を抜いたことで、春斗も息を吐く。  七瀬は、壊れた屋敷に近づき、何かを探している。そして何かを見つけた七瀬はそれを拾い上げた。  その手には、神棚に置かれていた神鏡。大きくひびが入っていた。 「七瀬さん……」 七瀬に背後から声を掛けると、振り返った七瀬は、いつもの包み込むような優しい笑顔だった。 「春斗、怪我はないか?」 「は、はい……。あ、あの……ごめんなさい」  ……騙されていたとはいえ、巳影を屋敷に連れ込んだのは自分だ。俺が安易に巳影を連れてきたりしなければこんなことにはならなかった。……泣く資格なんかない。  春斗は込み上げる涙を、握りこぶしをきつく握ることで堪えようとした。

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