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第14話 新たな神力

 そんな春斗に、空気が一瞬だけ軽くなる。  大御神は神殿の階段を降り、春斗の前に立つ。  春斗は、畏れさえも感じるオーラに気圧されそうになった。 「七瀬を助けるためには強い神力が必要である。そなたに神力を授けよう。安定するまで苦しいだろう。耐えられなければそなたは消滅する。……それでも良いというのであれば、そこに膝をつきなさい」  春斗に迷いはなかった。  指示に従い、春斗が玉砂利の地面に膝をつくと、大御神は春斗の額に触れる。  途端に熱いものが額から流れ込んでくるような感覚を感じた。それは沸騰するように熱く激しい痛みを伴った。 「っ……」  額から侵入した熱は全身に広がり、遂には心臓を飲み込んでしまう。  激しい熱と痛みに、全身から冷や汗が流れ落ちた。  熱いのに身体は凍えるように冷たかった。そんな相反する感覚に意識が朦朧とし身体が揺れる。遂には、座っている半身さえも支えることができずに、横たわり荒い息を吐く。  終わりの見えない苦痛。  しかし春斗は最後の意識だけは保っていた。この苦痛さえ耐えることができたら、七瀬を助けることができるのだ。七瀬を失いたくない。その一心で春斗は気を保っていたのだ。 どのくらい経っただろうか、不意に身体の熱が引いてくる。呼吸も楽になり、春斗はゆっくりと起き上がった。 「……本当に耐えおった……」  隣で成り行きを静観していた正伸がぼそりと呟いた。  大御神は、春斗から一歩下がり息を吐く。 「春斗よ、そなたの中に神力が入った。七瀬の傷に手を当て、気を送ってやりなさい……」 「ありがとうございます!」  立ち去る大御神の背に向かい、春斗は深々と頭を下げた。 「……はぁ……後ろの鳥居から帰れます。早く行きなさい」  正伸が溜息交じりにそう言うと、彼もまた背を向けて帰っていく。 「ありがとうございます!」  春斗は正伸にも礼を述べ、鳥居へ走った。

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