14 / 20

第14話※

 玄関を開け、部屋に入るなり、真夏の蒸し暑い湿気が二人を出迎える。 「あっついな」 「クーラーつけますね。電気は、いいですよね」  薄暗い部屋にとクーラーのピッという起動音だけが響く。期待からか、心臓の音がやけに大きく聞こえる。 「……シャワー、借りる」  ネクタイをゆるめ、脱衣所に向かう愛崎の腕をつかんで引き留める。 「待てません」 「……すぐ終わる──っつ、ぅん、っ!」  引き寄せて唇を重ね、細い腰をゆっくりと撫で、きゅっと引き締まったお尻を両手でやさしく揉みしだく──と、それだけで、愛崎の膝が折れ、その場に崩れ落ちそうになるのをダイキが支える。 「これじゃ、シャワーなんて無理ですね」 「っつ……おまえっ」  ほんとにこのままやるのかと、困惑した瞳でダイキを見てくる。 愛崎はきれい好きだ。付き合ってから今まで、エッチの前にシャワーを浴びなかったことがない。 「……一か月おあずけだったんで、今日はわがまま聞いてください」  そう甘えてみると、愛崎は一瞬考え込むような素振りを見せ、それからわかったと頷く。 「じゃあソファに来て、俺の上に座って?」 「? どうすんだよ。ベッドの方が──うぁッ!?」  言われた通りに座ってくれた瞬間、後ろから思い切り胸を揉みしだく。 「ん、……っ、ちょ……っ」 「そういえば、おっぱい可愛がってなかったなって思って──」 「胸ならっ、お前の方があるだろうがッ」  確かに元ラグビー部のダイキの方が巨乳ではあるが、愛崎の方が形も張りもキレイだとダイキは思う。とくに、下乳のラインが美しく、ダイキはシャツ越しに指先と爪で確かめるようにゆっくりとなぞっていく。 「っ……っぁ……!」 「連絡くれなかった割りには、敏感ですね」 「ッツ……っ」  じっくりと形や大きさを確認するように揉み続けていると、愛崎の肌が汗ばんでくるのがわかる。 「……あんたの匂い、興奮する──」 「ひぅッ!」  首筋を舐め、シャツを押し上げている乳首をぎゅっとつねると、ダイキの上で大きく身体が跳ねる。 「乳首、感じるようになったんですね」 「ぅるせ、よっ、おまえのせぃ、だろっ!」  嬌声を抑えながら、とぎれとぎれに文句を言う彼がかわいくて仕方がない。 「気持ちいいんですよね?」 「ッツ」 真っ赤になっている耳を食みながら、ジャケットはそのままに、シャツのボタンだけを、ゆっくりと外していく。 「ぁっ……」 むっちりと盛り上がった胸筋だけを晒し、今度はうってかわって、触れるか触れないかの絶妙なタッチで撫でていく。焦れったい刺激に、愛崎の呼吸が荒くなっていくのがわかる。 「ぁっ……く……ん」  さんざん焦らしてから、直に揉むと、呼吸を乱して、身体を縮こまらせる。 「ふぁっ……!」 手のひらにちょうどおさまるサイズ感がかわいい。力の入っていない胸筋は信じられないくらいやわらかくて、すべすべだ。いくら触っても飽きない。 「も、胸ばっか、さわ、んなっ」 「今日は、いじわるしたい気分なんです」  もう一度乳首をぎゅっとつまむと電気が走ったみたいに体をびくつかせる。 「ん! は、もぅっ」  ダイキの腕を強くつかみ、少し怒ったように言うが、切羽詰まった声に逆に煽られてしまう。 「まだ我慢できますよね? 一か月会わなくても、平気だったんですから──」 そう言いながら、布越しに後ろの入り口をぐっと指で強く押さえると、前を湿らせはじめる。 「っうぁ! ……そこ、やめろって」 掠れた声で喘ぎ、膝を閉じようとするので、右足を下から割り込ませ、追い打ちをかけるように、膝を立て、中心を太ももで擦り上げる。 「ばかっぁ」 「まだ、イッちゃダメですよ」  だが言葉とは裏腹に、愛崎の中心を太ももでぐりぐりと刺激しながら、両方の乳首を弾いたり、つねったりを繰り返していく。 「や、ぁ、っ……ぅんっ、あ」  もう限界だろう。瞳が潤み、酸素を欲するように舌がのぞく。 「……愛崎さん、胸もまれながら、ちゅーされるの、好きですよね?」 「は!? そんなん知っつ……んぅっ、ん! んんっ」  舌をむさぼりながら、胸を揉みしだくと、愛崎の腰が動き、勝手にダイキの太ももに自身の中心を擦りつけていく恰好になる。 「ッ、んんっ、ふ、んぁ、あ! だめっだ、も、んん、ぅンッ!」 舌の根を思い切り吸い、同時に乳首をぎゅっとつねると、愛崎が耐え切れずに達してしまう。 「はっ……ぁ」  唾液でとろりと濡れた口元がいやらしい。 「かるく、イっっちゃいましたね」 「……おまえ、きょう、いじわるだな……」 「だって、ほんとに寂しかったんですもん……」  甘えるように額にキスを落とすと、ふいに愛崎の手のひらが、ダイキの中心を撫でる。 「え、あいざき、さん?」 「……俺だって、したいと思ってた」 涙で濡れた瞳のままダイキを見つめ、ゆっくりと下がっていく。 「え、ほん、とに?」  ジッパーが下げられ、下着越しに硬く張りつめた中心を、愛崎がゆっくりと取り出す。 「下手でも、文句言うなよ……」 「はっ、うそでしょっ」  根本まで一気に咥えられたうえ、熱い口内でしゃぶられて、あやうくいきそうになる。 「ンッ……っつ……」 (下手、どころか──)  うますぎてあっという間に昇り詰めてしまいそうで、ダイキは焦る。 「あぃ、ざきさ、ダメですっ……俺、もっ……」  そう言って彼の頭にやさしく触れると、愛崎がダイキを見上げ、中途半端にほどけていた自分のネクタイをほどき、ダイキの目を隠す。 「え?」 「見られてたら、やりにくいから、ほどくなよ?」  低く、濡れた声が囁いたかと思うと、熱が遠のいて、衣擦れの音が耳に響く。 (脱い、でる……)  ジャケットやシャツを脱ぐ音、ベルトが引き抜かれ、ジッパーが下り、そのままばさっとズボンが下がる音がする。最後に濡れた下着が、ぺしょっと放り投げられた音がしたかと思うと、ダイキの膝の上に、今度は正面から、ゆっくりと跨ってくるのがわかる。 「っつ……あいざきさん?」 「もりやま……仕事が忙しくて連絡できなかったのは悪かった。でも、ちゃんと会いたかったし……好きじゃなきゃ、ここまでしてやらねーから……」 「──ッツ、まじ、すかっ……」  ちゅ、ちゅと二、三回キスがふってくるのを、ダイキは夢中で受け止める。まさか、彼から求めてくれるなんて、思わなかったのだ。一か月、待ったかいがあったと言えるだろう。 「──じっとしてろよ……」  言いながら、慣れない手つきでダイキの中心を上に向け、ゆっくりと腰を落としていく。 「はっ……ん、く……ぅ」 「っつ……」  だが先端がゆっくりと飲み込まれていく感覚に耐え切れず、ダイキは残りを一気に突き入れてしまう。 「んはっ、あ!」 「ッツ、は、いきそ……」 「っつ……ぅ……」  良いところに当たってしまったのだろう、愛崎の身体が小さくふるえているのがわかる。 「ばか……俺が動かなきゃ、好きだって、伝えられねーだろ……」 「──っつ!」 (やばい、かわいい! どんな顔してんのか見たいし、ああ、でも──)  目隠しを外してしまったら、プライドの高い彼のことだ。もう、二度とやってくれないだろう。 「すみません、じっとしてます……」 「っ……ぜったいだぞっ」  だが相当恥ずかしいのだろう。ダイキの肩口に顔を埋めたまま、たどたどしく腰が上下していくだけだ。ねち、とやらしい音がときおり響くのが、ずいぶんと焦れったい。 「あいざきさん、俺のこと好きなら、もっとうごけますよね?」 「これが精いっぱぃ──んっぁ! っつ……」  耳朶を噛み、首筋をべろりと舐め上げると、後ろを締めつけて、身体をふるわせる。 「もり、やま、ぅあっ」  見えないなりに、ちゅ、ちゅと首元を舌で愛撫しながら、勃ちあがっている乳首をはじくと、たまらなくなったのか、ダイキの首にしがみつき、さきほどよりも腰を大きく動かし始める。 「はっ、じょーず……」 「ん、んぁっ……っは……」  キスを重ねれば重ねるほど、愛崎の動きが大胆になっていく。 「んっ、ぅ、っつ……はぁ、はっ」  ダイキの中心をかわいがるような腰使いに、ダイキもたまらなくなってくる。 「もりやま、すきだ……、ちゃんと、すき、だからっ……」  彼が好きだと言う度に、ぎゅっと後ろがすぼまり、ダイキを抱きしめるように吸いついてくる。 「愛崎さん、うれしい、俺もです、もう、動きたいっ……」  言われた愛崎が動きを止め、答える代わりに、ねっとりと舌を絡めてくる。 「っ、は──」 「……やれよ。俺もお前に、めちゃくちゃにされたい──……」 「ッツ! これ以上、煽らないでくださいっ!」  限界が来たダイキは愛崎の腰をつかみ、下から思い切り突き上げてしまう。 「ぁあっ、あ、アッ」  快感に濡れた瞳で、たまらず声をあげる姿に興奮する。 「かわいい……そんなにとろけた顔、はじめてみる──あ」 「ネクタイ……外すなって……」  だがすでにいつもの威圧感は溶けてなくなってしまっている。 「外れたんですよ。もういいでしょ、見せてくださいよ、全部──!」 「はっ、や、ぁっあ!」  どちゅっと奥まで一気に突き入れると、中の襞全部でぎゅっと抱きつき、そのまま締めつけてくる。一、二秒待って、力が抜けたところでまた一気に引き抜くと、追いかけるようにまた締めつけが強くなる。 「ひぅっ、ぅあ!」 そうやってぐちゅっ、ぐちゅっと緩慢な出し入れを繰り返していると、愛崎の中心からだらだらと蜜をこぼしはじめる。 「ぁ、もりやまっ……もっ……」  イキたいのだろう。ダイキにキスをし、せがむように舌を絡めてくる。 「っつ、はぁ、はっ……あいざきさん、かわいい……好きっ……」 「ん、俺も、好きだ、から、はやく──っ」 こんな風に今まで素直に求められたことがない。頭の芯が、興奮でどうにかなりそうだ。噛みつくように愛崎のキスに応えながら、腰の動きを速くしていく。 「ん、ふっ、んんっ、ぁ、はっ!」 「ちゃんと奥まで咥えて」  逃げる腰を両手でつかまえて、そのまま奥へ何度も何度も出し入れを繰り返していく。 「ひ、ぁ、あ、あ、アッ!」 愛崎の中が、ダイキの硬く張りつめた中心を、搾り取る様に絡みついてくる。その感覚がたまらなく気持ちがいい。 「ぉく、ふかっ、ぁあっ、あ、ぅはあ、あ!!」  ばちゅばちゅと、繋がった部分からいやらしい水音が弾けて止まらない。ダイキは腰の動きを速めたまま、ピンと張りつめた乳首に歯を立てる。 「ぁっ! ぃくっ、く、~~~~ッツ」  そのままぐったりとソファに沈み、しばらく二人は抱き合ったまま、目を閉じてまどろんだ。 「……そういえば、お前、俺ばっかり悪者にしてたけど、お前こそどうなんだよ」  小一時間ほどソファでそのままだったが、ふいに目が覚めた愛崎に、開口一番に言われてしまう。 「え、俺?」 だが愛崎一筋なので、何も思い当たらない。きょとんとしてると、愛崎が痺れを切らしたようにまくしたててくる。 「同期の女も、事務の女も、お前狙いなの気づいてるだろ? なのに、のんきに話してんじゃねーよ。勘違いさせたら、相手にもわる、い──ってなにニヤニヤしてんだよ」  こんな嬉しいことがあるだろうか。どうやら思っていたよりもずっと愛されていたらしい。 「もっとわかりやすく嫉妬してくださいよ~、あの時みたいに」  そう言って抱きしめると、愛崎が腕の中で怒る。 「あんな醜態、二度と晒せるかっ!」 「え~、うれしいのに~」  ぎゅっと抱きしめていると、ふいにポコッと頭を叩かれてしまう。 「お前もお前でちゃんと言え、ため込むな」 「う……」  確かにその通りだ。うざがられたり、嫌われるんじゃないかと思うと、素直に伝えられなかったのだ。 「次から、もっと素直に言います……あと、余計なこと聞いて、すみませんでした」 「ふ、気にすんな、お互い様だろ」  そう言って、頭を撫でてくれる。 「俺も、デート誘うわ」 「ッツ!? 絶対ですよ!」  目を輝かせるダイキに、愛崎は苦笑しながら何度も頷いた。

ともだちにシェアしよう!