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⑤
※注意※
今回のお話しは、レンの弟・凛が登場します。前半はレン受ですが、後半には凛が攻められているので、苦手な方はご注意下さい。
拘束/羞恥/くすぐり/声我慢
OKな方のみどうぞ。
↓
「凛くん。それ何?」
とある休日。遊びに出かけた俺が帰宅すると、リビングにコンドームの箱が無造作に置かれていた。
「お帰りなさい!レンくん!今日は何処行ってたの?」
俺が帰るなりキラキラした笑顔を見せて抱き付いてくる弟の凛を引き離すと、箱を拾って見せつけた。
「これ、何?」
「? ゴムだよ」
「それはわかってる。何でこんなものがあんのか聞いてんの」
箱は空いており、中身が減ってる様子が確認出来た。
「先輩に貰ったんだ。彼女と使えってさ」
「…え、凛くん彼女居んの?」
「彼女と言うか、いつか本命の相手が出来た時のための練習相手というか?相手もそれ理解した上で付き合ってるから問題ないよ」
ニパッと笑う顔と発言が合わなくて混乱した。何故ならまだ凛は中学三年生だ。流石にマセ過ぎていないか?
俺が言葉を失っていると、箱を取るとニンマリと笑った凛と目が合った。
「レンくんは経験ないから、刺激的だったかな?ごめんね、ちゃんと隠しておくよ」
「…生意気。いいか、絶対に相手を妊娠させんなよ。ついでに言うと好きでもないならそんな行為しちゃダメだからな。本命としろ本命と。まだ大人になりきってない体なんだからなるべくもう少ししてからな」
「本命は死ぬ程気持ち良くさせてあげたいからちゃーんとテクニック磨いておきたいの。入れるのはまだしないよ。痛がってたしね。いくら本命じゃないからって乱暴にしたりしないから安心して」
クスクスと揶揄うように俺を見て笑いながら、凛は俺から箱を受け取ると、自室へ帰って行った。
とんでもない奴だなと兄として心配したが、そんな事も忘れた頃、事件が発生した。
◇ ◆
「第4回、王様ゲーム。イェーイ」
試験が終わって冬になった頃、俺の家で開催された。みんなにいじめられた後、一人で出来なくなった俺は我慢が出来ずにハルヒにおねだりして、またみんなでやる事になった。
「レンの家初めて。今日家族とか大丈夫なの?」
「うん。両親は仕事だし、弟も部活の友達と夜ご飯食べるって言ってたから」
「へぇ、レンって弟居るんだ。帰って来るまで待ってようかな」
弟が居ることに食いついたハルヒは、嬉しそうにそう言ったが、幼馴染でもあり、凛のことをよく知る悠斗がその発言に対して口を開いた。
「レンと全然似てなくてめちゃくちゃイケメンだよ。ついでに人見知りだから最初は怖いかも。…特にレンと仲良くしてる奴には敵意やべーし」
「…ま、まぁ確かに」
何年か経って漸く悠斗には懐いてはいるが、それまでは中々大変だったのを思い出し二人して苦笑いを浮かべた。
「…まぁ、早くやろうぜ。レンくんがウズウズして堪んない顔してるしぃ?」
「っせーな」
図星を突かれ恥ずかしくなりながらも悟られない様にハジメを蹴ると『すぐ俺には暴力振るうんだから!』と怒っていた。
「はい、レン。引こうね?」
わざわざ引く必要のあるか分からないくじを引くと、また前と同じ番号が割り当てられた。
「①がハルヒ、②がレン、③が俺で以上だな」
「いや俺王様引いてるから!一番大事な所飛ばすなや!!」
散々な扱いに怒るハジメが、次はメモ用紙を取り出した。
「前みたいにさプラスでメモゲームもやろうよ」
「王様居る必要あんの?」
「まぁまぁ細かい事は置いといてさ。今回は俺達が書くんじゃなくてレンがされたいことを書いて?」
ニヤッと俺を試す様な発言にカァッと顔が熱くなった。
「だってレンが王様ゲームしたいって言うのってさ、恥ずかしくて自分で攻めてほしくても言えないからなんだろ?王様に"命令された"っつー口実が欲しいからなんじゃねーの?」
またもや図星を突かれて蹴り上げようと足を動かそうとしたら、ハジメに勢い良く押し倒された。
「…好きな所いじめてやるからさ、さっさと書けよ」
「…っっ!!」
「…あは、俺にもドキッとしたー?かーわーいー」
「うっざいんだよ!!」
ドカッと思いっきり蹴り上げると、股間にヒットに、前のハルヒと同様に俺の上に倒れ込んだ。
「うぐ…っ」
「レンに近付かないで、あっち行って」
悶えるハジメをペイッと引き剥がして追いやる無情なハルヒは相変わらず鬼畜だった。
「じゃあレン。俺達向こう向いとくから書いて?好きな場所でも、体位でも、こういうプレイされたいとかでも。俺の玩具箱見て使って欲しいのあったら素直に書いて?……折角頑張って王様ゲームしようって誘ったんだから、最高に気持ち良くならないと勿体なくない?」
耳元で囁かれる声にドキドキしながらも、俺はメモとペンを受け取って、震える手で要望を書き殴った。
それを折りたたんでみんなの前に持って行く頃にはハジメは復活していて、楽しそうに笑っていた。そのメンタルに尊敬しながらも、ゲームはスタートした。
「じゃあまずは、①が②の書いたメモ通りにしてあげて?」
「はーい」
ハルヒは俺の書いたメモを嬉しそうに引くと、そこに書かれていたのは"首"だった。
「…はーい、レン。首舐めたげる。今日は何処でする?」
「ベッド使おう。その…イク時とかは汚れちゃうかもしんないからバスタオル用意した。あとで使おう」
「うん、そうしようね」
クスッと温かい目で俺を見ながら服を脱がせてベッドへ寝転ばせると、ちゅっと首筋へキスされた。
「んん…」
「他にはどんな所書いた?…ちゃんとお臍も入れた?」
「んっ…入れた、入れたぁ…」
暫く試験期間で忙しかったため、みんなで集まるのは久しぶり。
特にハルヒは学年首位をキープしているだけあって勉強量が凄く、ハルヒとは殆ど話せていなかった。
なのでこうやって触れ合えるのが凄く嬉しくて、ぎゅっとしがみついた。
「試験の時あんまり連絡出来なくてごめんな。今日はいっぱい愛してあげるから」
「…うん、嬉しい…」
俺達がいちゃつき始めた所でハジメが③の悠斗にメモを引く様に指示をした。
「うわぁ。レンー!悠斗のメモに"手を縛って欲しい"って書いてるけど可愛すぎーー」
「…ん、るせーな。とっととやれよ」
「可愛くないなー。メモのレンくんとは大違いだねぇ」
ニタニタ気持ち悪い笑みを浮かべながらハルヒの玩具箱から手枷を取り出すと、俺の両手首へ装着した。
「王様の俺が悠斗の腰に固定してやろう」
鬱陶しい口ぶりにイラつきながら、いつものように枷同士をチェーンで繋いだ。
「メモもう一枚引いていい?」
「おう」
責める場所がない悠斗がもう一枚引くと、そこには"ゆっくりくすぐられたい"と書かれていた。
「レン、場所は何処がいい?」
「ん…っ、いちいち聞かなくていい。メモ見て、…勝手にやって………」
「場所ちゃんと言ってくんなきゃしてあげないよ」
「も…悠斗だけは意地悪しないで…!」
「意地悪じゃない。レンの好きな事してあげたいから」
「んっ……メモ、引いて…っ」
「はいはい」
クスクス笑うみんなに羞恥を感じながら悠斗のメモに期待する自分が居て。
「太腿だって。この体勢じゃ無理だから、ハルヒが触ってあげて。俺は首代わるよ」
「あいよ。レン、可愛い足開こうね」
「ん…」
足を開かされると、スーッと両方の内股を優しくくすぐられ、ピクリと跳ねた。
「ぁ…っ、んん…んっ」
「気持ちいねーレンー。素直になってきたねー」
「るせ…いちいちそういう事言わなくて、いいッ」
「俺相変わらず暇だからメモ追加しーとこ。全部やろうねーレン」
「はぁ…? ちょっ、変なの入れんなよ…」
「さぁねぇ~」
俺の言葉を聞く気があるのか分からないハジメがメモを書いてどんどん追加していく。
焦りもあるが、首と太腿をゆっくり撫でられると気持ち良くてそれどころではなくなり、俺は少しずつ体が火照り出した。
そんな時、ガチャっと玄関が開く音がした。
「ただーいまー」
その声は弟の凛だった。
「げっ…うそっ、待って、悠斗外してやばいっ」
「今日友達来る事言ってんの?」
「言ったけど…誰かは言ってない。勝手に入ってくるかな…」
「凛の部屋はあんの?」
「隣が凛くんの部屋」
「んじゃアイツの事だから勝手に入っては来ないだろ」
「…っ外して、とりあえずっもし入ってきたら死ぬ…!」
本気で焦り始めてガチャガチャと手枷を響かせると、悠斗の指が脇の下へ移動した。
「は…っ? 待って、まじでっ」
「レンが声我慢したらいいだけの話」
「~~ッッ!!」
クルクルと指が這うと思わず声が出そうになり唇を噛み締めた。
「レンくんただいまー。帰ってまーす」
「…っっ、ひ、…ぅぅ…っ」
俺の部屋を通りすぎてガチャっと隣のドアが開閉する音がすると一先ず安堵したが。声を出してはいけない状況は変わらない。
「良かったね。やっぱり勝手には入って来ないね」
「ゃ…め…っ、今日…はっ、王様ゲーム終わり…!流石に…っ声聞こえちゃう…!」
「さーて次のメモはどうしよっかなぁ」
「!?」
ハルヒがニヤニヤ笑いながらメモを引くと、お臍と書かれており、悠斗が引いたメモには乳首と書かれていた。
「待って…凛くんにっ…聞こえちゃう!だめ…っ絶対…」
「本気で焦ってるレン可愛い…最初は手加減してあげるから声我慢しようねー?」
「ぅぁッ………」
こんな時に一番嫌な組み合わせを引かれてビクッと跳ね、声も少し漏れた。
「…んんんっ、ゃっ…ゃだ…!」
こしょこしょと爪でお臍周りをくすぐられ、足がピンと伸びるとそれを見てハルヒはクスクス笑う。
「足すごい伸びてる。気持ち良いね。レン」
「こっちもぷっくりしてる」
ピンピンと何度も乳首を指で弾かれると普段なら絶叫してるレベルだろう。
「~~ッッ、く…っっぅ、ぅ……ぅぅぅぅ…っ」
「うわ、声エロ」
ガクガクと体を震わせながら必死に耐える俺を楽しそうに見つめる三人。隣に凛が居て、もしかしたら入ってるかもしれないと言う恐怖に怯えた。
「んは…っっ、だ…っめぇぇぇ…」
クリクリとお臍に指を入れられると限界が訪れ、小さいとは言え声が漏れ、必死に首を左右に振った。
「…なぁ、レンー。俺もメモ引いたけど脇腹だったから失礼しまーす」
「…っ!?」
狭い中割り込んできたハジメはツンツンと脇腹を突き出した。
「てめ…っっ今、まじで…っ」
弱い三点責めに耐えられるはずはないが、凛にだけは絶対に知られたくないので死ぬ気で声を我慢した。
「ぅぅ…っ、だ、め…っぁ…ぁぅぅっ…、ぅぅ…くぅ」
「頑張るねぇ」
もう頭が痺れて爆発してしまいそうな程にクラクラし始めた時、ハルヒがチュクッと音を立ててお臍にしゃぶりついた。
「あっ、────~~、ッッんぐっ」
大きな声が出そうになった瞬間に悠斗が口を塞いでくれた。
「~~っっ!! ふっ、ぐぅぅぅぅぅ…っっ」
背中がのけ反り声が我慢しまくっている所為かいつもより体を震わせたが、止める気のないハルヒの攻撃は俺を確実に追い詰めた。
「流石にお臍は終わりね。今度もっとたくさんしてあげるから」
「はぁ…っ、はぁ…っ」
ガクガク震えながら泣くとよしよしと頭を撫でられた。しかしゲームは続行するようで、新たなメモを引く。
「次は電マだって。あはは、やばいかな?音響くかな」
「無理無理…っ!! 絶対…っ」
「じゃあ汚れないように一先ず用意してくれてたバスタオル借りるね」
ハルヒが俺から一度離れると、昨日から用意していたバスタオルを手に取り持ってこようとしたその時。
トンッとバスタオルの中から何かが落ちた。
「?」
ハルヒがそれを拾うと、落ちたのはこの前凛が持っていたコンドームの箱だった。
「!?!?」
「…は? 何これ」
中身は殆ど無くなったゴムを見て真顔になったハルヒに青ざめた。今まで元気だった股間は一気に大人しく萎んでいく。
「それはっ」
「レン、説明出来る?」
ハルヒが表情を曇らせながらこちらにバスタオルと箱を持ってくると、悠斗の腰のポケットに入れていたスマホが振動した。
「あ? 凛から電話だ」
変なタイミングで悠斗に電話が入るとスピーカーにはしたが、隣には聞こえない様に俺達に聞かせてくれた。
『あ、悠斗くん?今平気?昨日さぁ、レンくんが嬉しそうにバスタオル用意しながら誰か遊びに来るって言ってたんだけどやっぱり彼女かな?玄関の靴が仕舞われてるから、誰が来てるか分かんないんだよね』
悠斗が来る事も伝えていなかったので一緒に居ると思っていない凛は、悠斗が話す前にペラペラ喋り出す。個人的に連絡を取っていた事と、俺以外にもよく喋る所を見て少し驚いた。
『バスタオルってさ、絶対ヤる気だよね?レンくんクールに装ってるくせにやる事分かりやすいからさぁ。ていうか、彼女どんな人か知ってる?どうせレンくんよりかは可愛くないと思うんだー。そもそもレンくんより可愛い人なんてこの世に存在しないしね!しかも俺よりレンくんの事好きな人も居ないのと思うの。今聞き耳立ててるんだけどあんまり何も聞こえなくて。喘ぎ声でも聞こえてきたら録音して女を脅してやろうかとも思ったんだけど。ついでにさ、今日喧嘩する様にわざとコンドームの箱置いてやった。絶対別れさせる。レンくん、あんな嬉しそうな顔俺に見せた事ないくせにさ!彼女突き止めたら絶対──』
このタイミングで耐えられなくなった悠斗は咳払いをして電話を切った。
「以上、そのコンドームの真実でした」
悠斗がそう言うと、ハルヒは苦笑いしていた。
「…弟くん、レン愛が強すぎるな」
「いや、お前もなハルヒ」
二人にツッコミを入れられながらも、凛の本性を知った俺はそれどころではなかった。
「…ま、弟くんもあれだ。俺と同じでレンが好きなんだな。だから…その、責めてやんなよ?」
俺の表情を見てフォローを入れてくれたハルヒに申し訳なく思いつつも、俺はぎゅっと悠斗の背中に回した拳を握り締めた。
「ごめん、俺から誘ったのに。もうゲーム出来る気がしない。手外して」
「あ、はい」
ハジメがすぐにチェーンを取ると、シンと静まり返る部屋と、また振動し始める悠斗のスマホ。
「…あんな生意気な子は、ちょっとお仕置きしなきゃな」
俺が普段見せない表情をしたからなのか、三人の空気が少し張り詰めた。
「俺にもクソ生意気な事言ってきたし、長年の恨みでも晴らそうかな。いいの?レンの手前今まで我慢してきたけど」
「いいよ。電話に出て呼び出そう。その前に俺服着るわ」
やると決めたら心は揺らぐ事はなく、俺は服を着て乱れた髪の毛を整えた。悠斗にOKサインをして電話に出てもらうと、いきなり怒号から始まった。
『てめー俺の許可なく切ってんじゃねーよ。ふざけてんの?』
俺に対して多少小馬鹿にした態度はあったが、こんな口調初めて聞いた。悠斗は言わなかっただけできっと今までも暴言を吐いていたんだろうなと思うと申し訳ない気持ちになった。
「凛。今からレンの部屋おいで。俺居るから」
『…は?』
「来ないならレンに迎えに行かせるよ」
『…っ殺す』
「ついでにスピーカーにしてるから、お前の声、レンも全部聞いてたよ」
舌打ちと共にブチっと電話が切られると、めちゃくちゃ荒々しく隣の扉が開き、数秒後にコンコンとノックされた。
「おいで、凛くん」
俺が声を出すと、遠慮がちに扉が開き、今作ったであろう涙目の可愛い表情で入ってきた。
「…」
三人もいた事に驚いている凛だったが、すぐにトタトタと走ってきて俺に抱きついてきた。
「…ごめん、なさい。レンくん。俺…」
ぎゅっと涙声で抱きついてくる凛は可愛い。普段ならこれで許している所だが、折角の楽しい時間を壊された事、ふざけた悪戯、悠斗への態度。色んなものが合わさって許せるはずもなく。
今まで俺についていた手枷を凛の手首に巻きつけた。
「…へ?」
ドサッと押し倒して馬乗りになって動きを封じると、悠斗が凛の腕を掴み、近くにいたハジメの背中に回してチェーンで繋げた。その間、凛は動揺することはなかったが、巻き込まれたことによりハジメが焦ったように声を上げた。
「え、ちょ、俺巻き込むなよ!」
「…初めまして」
「え? あ、どうもレンの友達でハジメです」
「凛です。貴方は格好良くないから別にいいや。そっちのお前は何かムカつく…俺のレンくんに近付かないでもらえます?」
「え?俺?」
『そっちのお前』と言われたのはハルヒであまりの口振りに普段口の回るハルヒが言葉に困っていた。
「凛くん。俺の大事な友達にそんな事言っていいと思ってんの?」
「……レンくんが傷つけられないようにしてるだけ」
「大丈夫だよ。ここに居る三人は俺の事傷つけたりしないし、すごいいい奴らばっかなんだよ。だから、酷い事言ったの謝って」
「ゴメンナサーイ」
「凛くん、そんな態度ならこっちにも考えがあるよ」
「…何」
カサっと俺とハジメが書いたメモを取り出すと、脇腹と書かれていた。
「脇腹?何する気?」
メモを見て不思議そうにしている凛に俺は問い掛けた。
「凛くんはくすぐり強かったっけ」
「え…」
俺の言葉を聞いた瞬間、ハジメの背中に回されていた手枷がガチャっと音を立てた。顔は明らかに動揺していたので、俺はニヤリと笑った。すると悠斗もニヤニヤ笑いながら近付いてきた。
「…っは、なせ!離せくそがっ」
近付いてきた悠斗を睨んで暴れ出すと、痛い痛いと喚くハジメ。
「おい弟っ。暴れたら俺の体に当たって痛い!大人しくしろや!」
グッと二の腕を掴んで更に動きを封じられた凛は焦ったように暴れ出した。
「じゃあ失礼しまーす」
隣から手を伸ばした悠斗が、脇腹に触れると、凛の体はビクッと激しく跳ねた。
「ぅく…っっ」
顔を歪めて鋭い視線を悠斗に送る凛。それを見て満足そうに笑う悠斗。二人のこんな表情は新鮮だった。
「んっ……ッッ、やめ…っ」
こちょこちょと悠斗が脇腹をくすぐると体に力を入れて必死に耐えているのが伝わってきた。
「悠斗、凛くんの足に乗っていいよ。俺はメモ引いとくから」
「サンキュー」
俺が少し体を動かしたと同時に、凛の足が悠斗に向けられた。
「お前ら兄弟は似てるよな。蹴られる事なんて想定内なんだよ」
ガシッと凛の足を掴んで押さえつけると、悠斗は凛の太腿辺りに座った。
「っざけんな悠斗!お前ぶっ殺すぞ!認めてやって仲良くしてやったのに!」
「どの立場の発言だよ。レンが居るから言ってなかったけど毎回めちゃくちゃ腹立ってたんだよ。…そんなお前を泣かす日が来るとは思わなかった。レンの前ではボロ出さない様にしてたもんな、お前。レンも凛の言う事は疑わないからさ」
悠斗がまた手を伸ばすとビクッと反応してギリッと歯を食い縛って睨んでいる様子が分かった。
「…まぁ年下を複数でいじめるのは趣味じゃねーけど、お兄さんからの提案だから悪く思うなよ」
凛のシャツを捲ると、直接脇腹に触れるとゆっくりと指を滑らせ始めた。
「ぁ…っ」
ピクリと跳ねた体と小さな声。さっきまで吊り上がっていた眉が下がり気味になり、あまり見ない表情が見えた。
「んく…っぅ、ぁッ、それ…っんん…ッ」
スルスルと感じる様なゆっくりとした動きで脇腹を這うと恥ずかしそうに腰をくねらせて声が漏れる凛。
「へぇ、感じてんの?その反応ー。ゴム持ってるくらいだからこんなの余裕だと思ってた。…所詮はガキだな」
「てんめ…悠斗、ふざっけんなよ…」
「言葉遣いには気を付けような」
「ひ…っぁはぁっ、ぁっやめっ、…やめろっ」
悠斗の攻めになす術もない凛は笑いながらジタバタ暴れている。
「凛くん。次足の裏だって」
「レンくんがしてくれるの…?」
少しだけ安堵した表情が見えたので、俺はメモをハルヒに託した。
「俺じゃお仕置きにならなさそうだから、この人にやってもらうね」
「はぁ? つーかお前誰だよ。とっとと帰れよ!」
「…うわぁ、なんか黙って見てたけど、凄い性格してるねぇ。意地っ張りな所はレンに似てるけどさ。ついでに可愛い声もレンに似てるから興奮したよ」
「こ、興奮?気持ち悪いなっぶっ飛ば…っひゃぁ!?ぁはははっ、ゆうっ…と、やめッ」
「まぁ俺は悠斗と違って恨みはないけど、可愛いレンの頼みだから容赦せずやるね。足の裏は弱い?」
「…ッ」
ぎゅっと足の指に力を入れ、触れさせない様にした反応を見てハルヒはクスッと笑った。
「はいはい、弱いんだねー可哀想だけどごめんねー?」
「~~ッッ、んっ…んんんっ、んんんっ!!」
無理矢理足を広げさせられてくすぐられると真っ赤になりながら可愛く声を我慢する凛は正直とても可愛かった。
「凛くん辛いね。素直に謝ろうか?」
俺が近くに座るとコクコクと頷いた。
「ごめんなさい…レンくんっ俺、レンくんの事心配で…っ」
「俺にはいいよ、まずは長年そんな態度取ってた悠斗にちゃんと謝ろうか」
「………」
「凛くん、出来ない?」
ゆっくりと凛の脇に指を滑らせて問いかけた。
「ぁぅ…っレンくんっ、レンくん、…っやめてっ」
ビクビクと可愛く跳ねる姿は唆られた。やめてと言ってもニヤニヤしながら攻めてきたみんなの気持ちが今初めて分かった。
「凛くん。ちゃんと謝ったら今日の事は無かった事にする。だから謝ろう?もし謝らないなら俺はもう凛くんと喋んないよ」
「…!」
その言葉を聞いて泣きそうな表情を見せると、すぐに悠斗の方を向いた。
「悠斗くん…今までごめんなさい…!ずっとレンくんは俺だけと遊んでたのに…っ取られた気がして、すごく…悔しくて、ずっと…」
それは無理矢理ではなく本気で謝罪しているように俺は見えた。悠斗も同じだった様で、ポンポンと凛の頭を撫でた。
「はいはい。初めてちゃんと謝れて偉いじゃん」
「凛くん偉いね。次は後ろにいるハジメに謝って。全くイケメンじゃないチビでアホそうって言ったろ?」
「いや言われてねーよ!!」
「あ…えっと、なんか俺のレンくんが…ごめんなさい。ついでに俺も眼中にないので…特に謝る事もないと言うか…」
「腹っっ立つなお前ら兄弟は!!」
「じゃあ最後はハルヒに謝って」
「あ、ハルヒって俺だよー」
ヒョコッと姿を見せて笑顔を見せるハルヒをじっと見つめる凛。
「………ごめんなさい」
特に思いつかなかったのかそれだけ言うと、ハルヒは凛の近くへ来てニッコリと笑った。
「あは、いいよー。でも一つ条件があってさぁ。俺レンの事大好きだからー、彼氏として認めてくれない?」
「は?彼氏?」
「うん。俺、凛くんと一緒でレンが大好きなの。だから恋人として認めてくれない?もし認めてくれないならー」
ハルヒはそう言ってメモを引くとニヤッと笑って見せつけた。
「泣いちゃうほどこちょこちょしていじめちゃうけどいい?」
メモには"泣くまでくすぐる!!"とハジメの字でデカデカと書かれていた。
「な…っ、認める訳ねーだろ!それなら悠斗くんの方が何百倍もマシだわ!!てめー性格悪いだろ!俺が抵抗出来ない時にそんな提案しやがって!!」
「そうだね、性格悪いかもね。でもこれくらいしないと認めないでしょ?…だ、か、ら。泣いて堕ちてくんない?」
「…ッ、ひぁぁぁぁ──!?」
そこから俺もよく知るハルヒのド鬼畜攻めが始まり、容赦なく泣かされた凛は俺達の事を認めてくれたのだった。
end.
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