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星間歩行 15
短編小説の賞を取っても、明人の身辺は何も変わらなかった。明人はふたたび投稿小説の構想を練った。
いままでのことを題材に、明人は兄と妹の恋愛の話を書こうと決めた。
妹は異形の者と入れ替わり、異形の者が兄を見初める。急に美しくなり兄を惑わせる妹に引きずられて、兄は内緒で妹と付き合うようになる。
明人は異形の者を結になぞらえていた。結をひもとく手がかりになればと考えた。
明人は自分も結から題材を得ていると苦笑した。そして、結がとなりで一生懸命絵を描いていたから、自分も小説を書かなければならないと思った。一方的な関係だったゴッホとテオとは、そこが違う。自分が表現者でいられるのは、そばに結という芸術家がいたからだ。
『天使の苗床』を思い浮かべる。明人は自分が結の苗床だと思っていたけれども、自分も結を苗床にして小説を書いているのだ。人は誰かの天使であり、苗床でもある。あの小説の主題は、本来そういうものではないだろうか。
明人はいつか結にこの話をしようと決めた。
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