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星間歩行 20

 結は家に帰っても絵に納得がいかないようで、本を読む明人の横顔を描き始めた。 「俺の顔が変わったのか?」  唇だけを動かして、明人が尋ねた。 「短編の賞を取ってから、顔つきが引き締まって目の色が深くなった。やっぱり目標を達成すると表情も変わるんだね。いい変化だと思うよ」  結は明人の表面的な変化だけを見ているわけではないような気がした。結が明人を好きだと知った衝撃や嫌悪感、迷い。ひとことでは言い表せない結への想いを、結は読み取っているのではないだろうか。  結がスケッチをする横で、明人は本を読み続けた。結の集中に引きずられるように、明人も本の世界へ入り込んでいく。  一時間ほど夢中で本を読んでいた。ふと気がつくと、結はスケッチブックの明人をぼんやりと眺めている。 「兄貴、どうした?」  結が途方に暮れたような顔で明人を見上げた。 「いくら描いても、明人に追いつけない」  明人の心にある結への拒絶を、結は画家としての鋭い視線で読み取っているのだ。 「集中しすぎて疲れているんだよ。ちょっと休憩しよう」  結の肩に手を置くと、明人は風呂を沸かすために立ち上がった。

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