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星間歩行 29
次の朝、明人は目覚まし代わりのラジオのニュースで目を覚ました。結は出かけたようで、すでにマンションにはいなかった。
歯を磨いて、キッチンに向かう。結が作った朝食が用意されていた。ゆで卵にキャベツとにんじんのコールスロー、コーヒー。トースターでパンを焼いて、自分のテーブルへ持っていく。
ニュースを聞きながら、朝食を食べる。ゆで卵は半熟、コールスローにはゴマがかかっていた。すこし酸味のあるモカが濃いめに淹れてある。
すべてが明人の好みに合っていた。トーストをかじりながら目を見開く。
結は子供のころからずっと明人の好みをわかっていたのだ。
明人のテーブルにある小さな多肉植物を見る。観葉植物を置くと仕事がはかどるといって結が買ってきたものだ。結は、明人が植物を育てるのが苦手なことを知っているので、手のかからない多肉植物にしたのだろう。
家で使うシャンプーや芳香剤なども、すべてが明人の趣味に合わせてある。結との生活が居心地いいのはそのためだ。
結はずっと自分のことを考えて生活してきたのだ。家賃を入れられず悪いと思って、明人の趣味に合った日用品を買ってきていたのだ。
――弟にお金を稼がせて絵を描くのは、さぞかし楽しいだろうな、兄貴?
感情に任せて結に放った言葉を思い出す。
結にひどいことを言ってしまった。朝食を片付けながら、明人はいつか結に謝らなければと考えていた。
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