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星間歩行 38
明人は結とメッセージのやりとりを始めた。結が弱っているぶん、自分が結の面倒を見ようと思った。
最初は結が食事を摂っているか確認のためだった。が、だんだん内容が深くなって、今描いている絵のことにも言及してくる。
――何を描いたらいいか、わからなくなったんだ。
結は絵の方向性に悩んでいたようだった。
――何を描いても、塗り絵のような気がして。
――兄貴が描きたいものを、もう一回描いてみれば?
――だけど、星の絵は売れない。
明人は、結が何を描けば本質へ近づくのだろうと考えた。そして、自分は何をすれば、結の助けになるのだろう――と。
一月を過ぎても、ふたりは新しい題材を見つけることができなかった。
明人は、今は充電期間だと割り切って本を読むことにした。
二月の底冷えのする日曜日に、市立図書館へ行った。
明人はふだん立ち寄らない美術の棚へ向かった。美術史から絵の描き方の大型本まで、さまざまな本が整然と収まっている。
明人は油絵の描き方の本を開いた。が、専門用語がわからず、落胆して棚に本を戻す。
明人はゴッホの本が並んでいる一画に近づいた。
――やっぱり君らはゴッホとテオみたいに支え合っているんだなあ。
翔磨の言葉を思い出す。自分たちはどこが似ていて、どこが似ていないのだろう。自分なりに結の心を理解する手がかりになるかもしれない。
明人はゴッホの評伝を数冊手に取ると、貸し出しカウンターへ向かった。
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