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第26話 花楓side  太陽のような陽だまり

 今直ぐに結論は流石に出せないか……四年間も付き合っていたのだから、そんなに簡単じゃない。  聞いた話によると、ご両親が既に他界しているようだった。一番キツイ時期に、俺が守ってやれなかった。  どちらにせよ。最後は俺の元に来るのだから、関係ないな。でも今は事を、荒立てないようにしないとな。 「では、こうしましょう。私の秘書になってくれませんか?」 「秘書……ですか」 「はい。ちょうどもう一人、欲しかったところなんですよ」  普通に言っても埒が開かないから、俺は悲しそうに微笑む。すると簡単に絆されてくれて、秘書になることが決まった。  まあもう既に手配は済んでいて、書類とかも作成済みだけどな。後はサインとハンコで、正式に秘書になれる。 「秘書の件、お願いいたします」 「はい、ありがとうございます」 「でも……あ、あの……経験がないので」 「大丈夫ですよ。人は誰しも、初心者です」  大丈夫……もし仕事が出来なかったとしても、君はもう俺からは逃げれないんだから。  やっぱ、俺に対して少しよそよそしい。仕方ないが、少しイラついてしまう。俺に早く慣れてもらうには、スキンシップが有効的だろうと思った。  そのため、頭を撫でたり抱きしめたりした。嫌がるそぶりもなく、簡単に受け入れてくれる。  同じベッドに寝ると、耳を真っ赤にして後ろを向いてしまった。俺は可愛いなと思って、静かに目を閉じる。 「……綺麗」  ボソッと呟かれて、うっすらと目を開けると俺の顔を見つめていた。頬を触っていて、俺は堪らずに抱きしめる。  起きていると分かると、離れていきそうだった。そのため俺は寝たふりをして、離れないように強く抱きしめる。  この匂い……太陽のような陽だまりのような、安らぐこの香りがいつの間にか俺を眠らせていた。  アラームの音で目を覚まし、キッチンに向かう。朝食の準備が終わり、寝室に入ろうとしてドアを開ける。すると、湊が体育座りをして泣いていた。 「寂しい……」  俺は話しかけようかと思ったが、次の瞬間……聞きたくもない名前を口に出された。 「会いたい……蒼介」  正直かなり腹が立ったが、それを心に閉まって柔らかく微笑んで寝室に入る。すると抱きつかれたから、頭を撫でて腰を支える。  なんだ……十分、俺に心を開き始めているじゃないか。そう思ったら、嬉しくてニヤリとしてしまう。  何故か直ぐに離れようとした。更に強く抱きしめて、愛おしいなと思い見つめる。 「しゃ……んっ」 「言い忘れていましたが、仕事以外で社長と呼ぶ度にキスしますので」 「えっ……えっと」  ニコニコ笑顔でキスをして、自分でも訳の分からないことを口走る。だって、俺はこんなに君が好きなのだから。 「なんて、お呼びしたら」 「花楓、意外の呼び方はないですよ」 「帝さんじゃ、ダメですか……ハードルが」 「苗字はダメです」  苗字は絶対に死んでも嫌だ。俺はこの帝って名前が、世界で一番嫌いだから。仕事の時は仕方ないにしても、愛する君にだけは言われたくない。  俺の言葉を聞いて、上目遣いで一生懸命に名前を呼んでくれた。ほんとに、可愛くてどうにかしてしまいそうだった。 「か……えで……さん」  それから朝食を食べて、湊の住んでいた家に荷物を取りに行く。俺は湊に自分の部屋に行くから、リビングで待っているようにと言われた。  リビングに行くと驚くほど、散らかっていた。このままにして無視しようかと、思ったが湊が心配すると困る。  そのため仕方なく片付けて、写真立ても伏せておく。こうすれば、小笠原がもっと苦しむだろう。  酒瓶やタバコの吸い殻が、散乱している。一番腹が立つのは、これ見よがしに小笠原の名前だけが書いた婚姻届が置いてある。 「チッ……ふざけんなよ」  俺は婚姻届を手に取り、ビリビリに破いてゴミ袋の上の方に入れる。こんなの湊に見せる気かよ。  ーーーー見せるわけ、ねーだろ。  そう思っていると、湊がキャリーを持ってきた。正直全て持ってきたかったが、流石に寝室には行けないようだった。  無理にさせるわけには、いかないか……まあ今回の目的は、湊の荷物もあるが一番は……。  ――――あの野朗を心配させることなのだから。  目的は達成されたから、俺たちはそれから一緒に過ごす。最初こそ俺に遠慮していた湊も、段々と俺に気を許すようになった。  仕事をし始めて俺たちは、いつも一緒だった。しかし順風満帆だったが、何かが足りないような感じがしていた。  湊が飲みに行きたいと言ってきたから、飲みに行かせたが……そこで金城さんに、一つ忠告しておいた。 「湊さんに、余計なこと言わないでくださいね」 「何でそんなに、執着するんですか」 「そんなの決まってるじゃないですか。愛してるからですよ。狂おしいほどに」 「狂ってる……」 「褒め言葉として、受けとっておきますね」  湊さんの大切な人で、支えてくれた人なので……多めに見ますが、上司に向かって言うセリフじゃないからな。  まあいいや……湊にとっては、家族そのものだし。Ωの男性と結婚しているから、湊に危害が及ぶことはないし。  湊の誕生日になって、俺はうちの系列のホテルに誘った。誰かの誕生日を祝うって、初めてだから緊張する。  思わずキスをしていると、ヒートが起きたみたいだった。急にフェロモンの香りが、キツくなってきた。 「……発情(ヒート)の時期は、いつからですか」 「よて……いでは、三日後です」 「もう始まってますね。ここ、膨らんでますよ」 「ふっ……そこ、やめ」  人生初の他人の男性器に触れて口に含んだが、全く嫌な感じはしない。それよりも、足を上げているから……。  湊の大事な部分が丸見えになってしまった。指を挿れたりしたかったが、経験がないから傷つけてしまうかもしれない。  それに初体験は、ヒートの時じゃない時がいい。爪も切ったほうがいいだろうし、何も用意していないからな。  可愛い声と水音が響いて、俺の口の中に白濁した液体が出てきた。変な味だが全くと言っていいほど、嫌悪感がなく飲み込む。 「はっ……飲んで……」 「無理しないで、休んでください」  このままじゃダメだなと思った。ヒートの抑制剤を口に含み、水と一緒に湊にキスしつつ飲ませた。  荒く息をしている湊を、抱き抱えて隣接されている寝室に連れて行く。ベッドに寝かせて、ズボンを直して布団をかける。  俺は我慢が出来なくなって、ズボンから自分のものを取り出す。完全に主張しているものを、湊の顔を見ながらシゴいてみる。 「みな……と」  手の中に白いものが出てしまったが、とても虚しい気持ちになってしまった。  自分にこんな感情が芽生えるなんて、思いもしなかった。欲しい君が……君の全部が、欲しい。  落ち着くと、眠たくなってきた。ここ最近、書類のハンコやら商談やら忙しかったからろくに寝てないからな。  ベッドに寝転ぶと、いつの間にか寝ていたようだった。何やら鼻をつつかれていて、俺は湊をそのままの勢いで押し倒す。 「湊さん……だいぶ、良くなったようですね」 「は、はい……」  上から見下ろすと絶景だった。俺を見る瞳がうるうるしていて、綺麗で可愛くてヤバいと感じてしまう。  すると目を逸らされて首元が、見えてしまった。直ぐに俺は湊の顎を触って、強制的に目線を合わせた。

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