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第42話 リス

 すると何やらニコニコ笑顔の、彼が近づいてきて腕を組んできた。どうしたんだろうと、思っているとよそゆきの顔をしていた。  変なの? と思っていると、保護者の人に頭を下げて歩き出す。僕もそれにつられて頭を下げて着いていく。  終始無言だと思っていると、人気のないとこに連れて行かれた。どうしたんだろ? と思っていたら何故か壁ドンされていた。  不思議に思って見つめていると、顎を持ち上げられてキスされる。そして少し怒っているというより、拗ねているように見えた。 「ど、どうし……んっ……」 「何、話していたんだ?」 「えっ? 誰と?」 「さっきの女の人と」  さっきの女の人? もしかして、子供の保護者の人のこと? 何って……僕は急に恥ずかしくなって、目を逸らしてしまう。  だって話していた内容って、パパになれるとか……だし。子供がほしいな……なんて、少し思ってしまった。  そのことを思い出して全身が火照っていく。次の瞬間、首筋にキスしてきて変な声が出てしまう。 「あっ……んっ……やめっ」 「何話していたか、教えて」  綺麗な青みがかった黒い瞳が、少しうるうるしていた。この目に弱いんだよね……と思って、目を合わせるのが恥ずかしくなった。  そのため逸らそうとすると、もう一度顎を支えられて強引に向けられる。やっぱ、この目が好きだ……。  僕を捉えて離さないこの、綺麗で少し憂いを帯びている。僕は目を見てしっかりと伝える。 「その……花楓がいいパパになりますね。って言われて、その想像したから……」 「パパ……想像って、その……なんか、ごめん」 「いいよ……花楓って、嫉妬深いよね」  僕の言葉に一瞬目を丸くして、直ぐに茹でたこのようになった。そして、僕の肩に頭を乗ってけてきた。  恥ずかしそうにしていて、それがとてつもなく可愛かった。僕は思わず、頭を撫でてあげると嬉しそうにしていた。  そして顔を上げて僕の目を真っ直ぐに見て、少し拗ねながら聞いてくる。マジで可愛すぎて、何でもしてあげたくなる。 「嫉妬深い俺は、嫌い?」 「嫌いになんてならないよ」  背伸びすると彼は、少し屈んでくれた。そのまま優しく触れるだけのキスをして、僕たちはしばらくの間抱き合っていた。  しかし離れることを決める……何故なら、今は真夏でコンクリートに反射した太陽が僕たちの体力を容赦なく奪っていくからだ。  なんかカッコいい感じで言っているが、要は熱中症になりかけた。僕たちは急いで室内に入って、フードコートに向かう。 「アチ〜、飲み物〜」 「とりあえず、適当に買おう〜」 「アイスもね〜」  僕はオレンジジュースとチョコアイス、彼はアイスコーヒーと苺アイスを買った。空いている席に座って、僕たちは凄い勢いで半分以上を飲んだ。 「は〜生き返るう〜」 「流石に炎天下の下では、やめることにする」 「そういう問題じゃなくて、人目を気にしよう」  僕がそうツッコむと、彼はまたもや拗ね始める。ほんと大きな子供なんだから……僕よりも、体が大きいから困るんだよね。 「……ちぇ、ワーリマシタ」 「すげー棒読み」  この人反省してないし、またやりそう……。そんなことはどうでいいか。僕はアイスに乗っている、イルカがプリントされているのクッキーを食べる。  このクッキー美味しいな……そう思っていると、彼はそのクッキー見つめていた。アイスを食べていたが、物凄く凝視している。 「どうしたの? クッキー苦手?」 「なんか……このイルカが可愛くて、食べれない」  そんなことを真顔で、眉間に皺寄せながら言っているあんたの方が可愛いよ。そう思って、僕は愛おしくなって見つめる。  僕はクッキーを手に取って裏返しにして、口元に運んであげた。すると少し僕の方を見て、ハムっと食べてモクモクと食べていた。  まるでリスのように、餌付けしているようで可愛かった。食べ終わったから、手を引っ込めようとした。 「ちょっ!」 「ご馳走様」  すると何故か人差し指をペロっと舐められた。僕が声を出すと、イタズラな笑みを浮かべていた。  こいつ……僕は少しイラッとしたから、無視してアイスを完食する。彼を見るとニヤニヤしながら、アイスを食べていた。  僕は若干睨みながら、ジュースを飲んでいた。そんな僕の視線に気がついたのか、にっこりと微笑んできた。  なんか余裕の笑みに腹たつが、それでもやっぱイケメンはズルい。僕はそう思って目を逸らして、飲み干してもなんか体の熱が収まらなかった。  それどころか……むしろ、上がっていくような感じがした。彼が食べ終わったのに気がついて、立ち上がると彼がプレートを返しにいく。 「あっ、待って」 「置いていかないよ」 「分かってるよ……そのぐらい」  僕は後ろを着いて行って、プレートを返し終わる。その次は、お土産コーナーに行って、お土産を見ていた。  僕と彼にはお揃いのペンギンのストラップと、チンアナゴの置物があったからそれを買おう。  クッキーとイルカのキーホルダーと、他に何かあるかな? 透真に律さんに、色々と迷惑と心配かけてるし。後は……蒼介には買わなくていいよね……。 「決まった?」 「う、うん。決まったよ」  余計なことは言わなくていいよね。僕たちはレジに並んで、順番を待っていた。凄い人混みで、休み期間だもんね。  彼のカゴの中を見てみると、大量のお土産が入っていた。しかも脇にアザラシの小さいぬいぐるみを持っていた。  意外とそんな趣味があるんだな。なんかこの大きな人が持っていると、アザラシが一層可愛く見える。  買い物が終わって外に出ようとすると、頭にキャップを被せられた。気になって見てみると、穏やかに見つめてくる。 「これ」 「暑いから被ってて。後これ、アザラシあげる」 「ありがと……てか、アザラシって」 「なんか可愛くて、湊にあげたくて」  そんなとびっきりの笑顔で言われたら、素直に貰うしかないじゃん。僕たちは手を繋いで、歩き出すけど暑いよ。 「なんか、お腹空かない?」 「そう言われると、もう二時か……この近くに美味しい寿司屋があるんだけど、そこでいい?」 「お寿司! 食べたい!」 「オッケー、海鮮丼が美味しいから」  海鮮丼か、美味そう……涎が出てきそうなのを我慢して、寿司屋さんに案内してもらう。  回転寿司で海鮮丼って珍しいなと思って、電車に乗って着いて行くと……回らないお寿司屋さんでした。  ですよね〜この人が回転寿司に行かないよね。回転寿司でいいんだけど、鼻歌混じりな彼を見て何も言えない。  まあいいか、せっかくのデートだもんね。そう思って気にしないことに、しようと思ったんだけど……。 「花楓様、お待ちしておりました。ご案内いたします」 「はい、よろしくお願いします」  予約してたのかな? というか……こんな高そうなお店に、Tシャツにジーパンっていいのかな?  様付けされるって、相当な高待遇だよね? VIPってやつ? 初めて見たよ。なんか僕のためにしてくれてるんだろうけど……。

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