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第43話 頼ってほしい

 たまに壁を感じるんだよね……仕方ないんだけど、相手は御曹司だし……前の僕なら引け目を感じていただろう。  でも今は違う、信じているから。何があってもって、でも心のどこかで蒼介もそうだったんだよね……。  漠然とそんなことを考えていると、個室に案内されて注文を取っていた。そこで彼に声をかけられて我に返る。 「湊、何か食べれない生ものある?」 「あー、基本何でも大丈夫だよ。でも、大葉は苦手だよ」 「分かった、彼のは大葉抜きで」 「かしこまりました」  店員さんが個室から出ていくと、目の前に座っていた彼に頬を触られた。驚いていると、優しく微笑んでいた。  僕はその手に自分の手を重ねて、目を見て微笑んだ。たったこれだけで、僕は不安や焦燥感が消えていくから不思議だ。 「何かあったのか?」 「えっ? 何が?」 「ずっと心ここにあらずって、感じだったから」 「あー、暑いからかな」  僕がそう言って微笑むと、立ち上がって隣に来て抱きしめられた。どうしたんだろう? と思っていると、顔が近づいてきた。  キスされると思って目を瞑ったけど、一向にされないから目を開けてみる。少し悲しそうにしていて、僕は頬に優しく触れてみる。 「湊、やっぱ何かあったのか?」 「な、んで」 「見てれば分かる」  そう言って真剣な表情をしていて、青みがかった綺麗な瞳が僕を捉えて離さない。この人に、隠し事はできない。  なんとなくだけど、そう思って僕は意を決して言うことに決める。その間、彼は優しく微笑んでくれる。 「花楓に不満があるわけじゃなくてさ……やっぱ、住む世界が違うんだなって思って」 「住む世界? 人間界以外があるのか?」 「はあ……そういうことじゃない」  この天然なのかよく分からない発言は、一体なんなんだろうな。でもそんなとこが可愛くて好きなんだけど。 「こんな高級なとこ知ってたり、僕のこと大事にしてくれるとことか……僕の方が年上なのに」 「はあ……もう、マジで可愛い」 「なっ! 僕は真剣に!」  彼の方を見てみると、優しく僕を見つめていた。キャップを取られて、優しく頬に触れられた。  目を瞑ると今度こそ、優しく触れるだけのキスをされた。足りないなと思っていると、今度は舌を入れられた。 「んっ……やめっ」 「やめていいの?」  僕が思わず首を横に振ると、クスッと笑っていた。その表情がいつもより、綺麗で輝いているように見えた。  僕が首に腕を回そうとすると、店員さんに暖簾越しに声をかけられた。彼は少し嫌そうに、返事して席に戻る。  海鮮丼が運ばれてきて、サーモンやマクロなどの豪華な丼だった。早く食べたいと思っていると、お腹が盛大に鳴った。  恥ずかしいと思っていると、店員さんはニコニコしてその場を後にする。目の前にいる彼は、声を押し殺して肩を揺らして笑っていた。 「食べるよ」 「どうぞ、召し上がれ」  僕たちは海鮮丼を食べながら、談笑をしていた。こんな風に笑っていられるのは、彼のおかげだよね。  美味しい海鮮丼と味噌汁を食べて、彼と目を合わせて幸せなひと時を過ごす。お茶を飲んで、まったりする。 「美味しかった〜」 「お気に召してくれたようで何より」  そんな感じで僕たちは、完全に寛いでいた。そこで気になったことがあったから、聞いてみることにする。 「ここには、よく来るの?」 「商談とか会議とかで、もっと広い個室を使うよ」 「流石、会社の社長」 「凄いのは帝であって、俺じゃないから」  そう言って少し悲しそうな表情を浮かべていて、僕は少し胸が痛くなってしまう。軽く過去のことを話してくれたけど、それでもまだ全部は言ってくれていない。  信用してるとか、してないとかの問題じゃない。なんていうか、僕に気を遣わせないためなんだと思う。  イジワルなこと言ったり、揶揄ってきたりもする。それでも僕のことを、一番に考えてくれている。  そんな彼だから心配になってしまう。もう少し僕のことを、頼って欲しいから。そう思って僕は彼の隣に座って肩に頭を乗せる。 「花楓は僕に話してって言うけど、花楓は話してくれないよね」 「……ごめ」 「あっ! 違うよ! 怒ってるとかじゃなくて、僕のことももう少し頼ってほしい」  少しバツが悪そうな声を出した彼を、起き上がって目を見て微笑む。僕がそう言うと少し驚いていたけど、直ぐに笑顔になって抱きしめてきた。 「もうちょっとだけ、待ってて……こんな風に誰かに、弱音を吐くのに慣れてないんだ」 「そっか、別に急かすつもりはないよ」  誰にだって苦手なことや、怖いことはある。僕にだってたくさんあって、それでもその度に助けてくれる。  時には間違ってしまったり、すれ違ってしまうこともある。それでも、その度に僕たちが共に成長していく。  最初は恋だったものが段々と、愛になって家族になっていく。そういうもんだと、僕は思っているから。 「ただ、花楓が心配なんだよ。僕のこと優先してくれるけど、いつも後回しにするでしょ。嬉しいけど、お互いに歩み寄るのが大切だと思うから」 「湊……ありがと」  嬉しそうにしている彼の様子を見て、僕も嬉しくなってしまう。それから暫くしてから、僕たちはお店を後にする。  お店から出て僕たちは、手を繋いで歩き出す。次はどこに行こうかと、スマホで検索していた。 「湊はどこ行きたい?」 「う〜ん、この近くに縁結びの神社があるから。そこがいい」 「……誰と結ぶんだ」 「花楓以外に誰がいるの?」  僕がそう言って顔を見ると、何故か顔を真っ赤にしてそっぽを向く。変なの? と思って、特に気にせずに歩きながら説明をする。 「縁結びの神社ってカップルで行くと、より強く結ばれるんだって」 「……サラッと言えるのかよ」 「何が?」 「べ、別に……」  またもや顔を真っ赤にしていて、変なの? と思いつつ、熱中症かな? と思ったから、買っておいたペットボトルの水を渡す。  僕が渡すと飲まずいるから、仕方ないなと思って開けてあげる。すると無言で飲み始めたから、安堵のため息が出る。 「元気でた?」 「……マジで可愛い」 「誰が?」  僕が顔を覗きながら聞くと、また更に顔を真っ赤にしていた。不思議に思いつつも、僕も水を飲み始める。  なんか視線を感じて見ると、僕を凝視していた。なんか最近、彼が変な行動を取ることが増えたような気がする。  気にしないことにして歩いていると、神社の前に到着した。ネットに神社で帽子はダメだと、書いてあったから外すことにした。  手を洗ってうがいをしてから、並んでいる参拝の列に並ぶ。休日ってこともあってか、だいぶ混んでいた。 「そこそこ、並んでるな」 「だねえ〜」

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