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第47話 運命の番

 夏季休暇も終わり、早いもので十月になった。花楓とのラブラブな生活は、毎日楽しいんだけど一つだけ不満がある。  婚約したって思ったんだけど、京都旅行から帰ってきて二ヶ月。家族に紹介してもらえない。  帝一族は僕が思っているよりも、大変なのは分かってる。だから特に何も言わなかったけど、そろそろ話が進んでくれると有り難い。 「僕は早く結婚したいんだけど……やっぱ、財閥ともなれば難しいのかな」 「どうでもいいが、そんなこと俺に言われても知らん」 「言ったでしょ。僕たちは、バカップルの避難場所じゃないから」  透真の家に来て、律さんにも相談を聞いてもらっている。彼は急遽出張が入ったから、北海道に行っている。  そのため、僕は二人の家に入り浸っている。一人でいるのが寂しいし、相談もしたかったからである。  なんだかんだ言って、二人は僕を甘やかしてくれる。だからつい、僕も甘えてしまうんだ。 「どうすれば、いいと思う?」 「はあ……まあ、社長の真意は知らないが。指輪もあるし、心配しなくても社長は湊のこと本気だと思うぞ」 「そんなことは、知ってるよ」  透真の言葉に、当然と胸を張って堂々と答える。そんなことは、分かってるんだけど……。  やっぱ、心のどこかで不安なんだよね……。どうしても、考えてしまうことがあるんだ。 「蒼介の時みたいに、手遅れになりたくないから」 「湊……まあ、何だその」 「Ωにとって番を作るのは、人生で一番の賭けだよ。しっかり考えた方がいいよ。但し、二人でね」 「律さん……ありがと」  僕は二人の言葉に凄く励まされた。二人に相談してよかったと思ったけど、この相談をしている中……。  二人は僕の前でも平然とイチャイチャしている。真面目に聞いてくれて、泊めてもくれる。  だけど、僕を無視して見つめ合うのは止めてほしい。どうしても考えてしまう……彼のことは好きだし、彼も僕のこと大事にしてくれている。  そのことは間違いないし、左手の薬指につけている指輪を見ると安心できる。それでも、心配になってくるし会いたくなってきた。  そんな時だった。僕のスマホが鳴って、見てみると彼からの着信だった。僕はイチャイチャしている二人を無視して、リビングから出て廊下で電話をする。 「もしもし、花楓?」 「元気にしてる?」 「うん、元気だよ。そっちは?」 「俺も元気だよ……でも、急に君の声が聞きたくなったら会いたくなって」 「僕も花楓に会いたい」  そんな他愛もない会話だったけど、心配事や不安が薄れていくような感じがした。彼の声には不思議な力があって、僕の心は晴れてしまう。  その日はそんな感じで、電話で話した。次の日に新幹線で帰ってくる彼を、駅に迎えに行った。 「おーい! 花楓!」 「み……なと」 「ど、どうし……酔ったのね」 「うん、気持ち悪い」  そう言って肩に頭を乗せてくる彼が、愛おしくて撫でてあげる。背中を摩ってあげると、嬉しそうにしていた。  少し肌寒くなってきて、彼の体温が心地よく感じてしまう。車まで連れて行って、水を飲ませた。すると落ち着いたようで、優しく微笑んでいた。 「寂しかった」 「俺も寂しかった」  そう言って抱きしめ合って、目を見て微笑んで優しくキスをした。久しぶりの彼の柑橘系の香りに、心臓の鼓動が早くなってきた。 「近いうちに、俺の両親に会わせるよ」 「それって……いいの?」 「当たり前だろ、遅くなってごめん」  そう言って頬を触って、優しく微笑んでくれた。僕は首を横に振って、再度抱きついた。 「嬉しい……」 「湊……愛してる」 「僕も愛してるよ」  僕たちは車の中で、キスをして微笑み合った。来週の土曜日に、実家の方に連れて行ってくれることになった。  早いもので前日になった。僕は鼻歌まじりで、書類の整理など秘書の仕事をしていた。そんな時に、秘書室に花楓が来て話しかけられる。 「広瀬さん、これから会議があるので一緒に来てください」 「分かりました、社長」  僕たちはお互いに微笑みながら、先に一階のコンビニに行って飲み物を買った。  会議室に向かう、その道中のことだった……。他の社員が大勢いる場所で事件は起きた。  今日の会議に出席するために、彼のお兄さんの双子の片割れの帝花舞さんが現れたのだ。 「兄さん……お久しぶりです」 「ああ、久しぶり……」  彼から話は軽く聞いていたが、仲は良くないらしい。それよりも、さっきから体が熱くなってきたような気がする。  吐息が漏れて崩れるように倒れてしまい、床にへたり込んでしまいそうになった。それを必死に彼が支えてくれる。  まるでヒートの前のような……それ以上に強くて、何かに縛られてしまう感覚。でもヒートは彼が出張に行く前に終わったばかりだった。 「湊! だいじょ……なんで、ヒートが」  急激な眩暈に僕は倒れそうになったが、直ぐに彼に支えてもらった。柑橘系の香りが強くなったのと同時に、違う香りが漂ってくる。  この香りはバラ? ……一体どこから? 匂いの元は直ぐに分かった。何故なら……彼のお兄さんから漂ってきていたからだ。  お兄さんは凄く辛そうにしていて必死にラットを堪えているようだった。周りにいた社員たちに、軽く取り押さえられていた。  道端などでヒートやラットを引き起こした場合。どんな身分が高い人でも、万が一に備えて抑えるのが普通だ。  僕は何が何だが分からずに困惑してしまう。彼も事態が飲み込めず、ひたすらラットを押さえ込んでいるようだった。  そんな時だった。透真が心配そうに顔を覗き込んで、話しかけてくれた。正直、頭が回らなくて動けない。 「湊! 大丈夫か! いいから、早く抑制剤飲めよ!」 「と……う」 「喋らなくていいから、ほらこれ飲んで」  口に錠剤を入れられて、ペットボトルの水を口に運ばれた。しかし上手く体を動かすことが出来ない。  そのため水が口から溢れてしまって、飲むことが出来ない。体の熱が徐々に上がっていくような気がした。  そう思っていると彼は、強引にペットボトルを奪って水を口に含んだ。僕に優しく微笑んで、直接飲ませてくれた。  すると体が徐々に良くなってきた。彼を見ると少し怒っているように見えて、透真に困惑気味に聞いていた。 「金城さん……これは、もしかして」 「……言いたくないですが、間違いなく【運命の番】です」  ――――運命の……番。

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