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第58話 苦手なの?

 早いもので、クリスマスイブになった。去年はクリスマスどころじゃなくて、何も出来なかった。  付き合ってからも、結婚してからも初のクリスマス。彼も僕も浮き足立っていたんだけど、僕はとある事実に気がついてしまう。  彼にお金を払っても貰ってばかりで、悪いなとは思った。厳密に言うと、前から思ってたんだけど……。 「また今度ね」  そう言われて、受け取ってくれなかった。確かに僕は彼の元で働いているとはいえ、大元は財閥からの給料だ。  結婚したし僕も、帝財閥の一員になった。なんか色々と複雑な立場に、なったような気がした。  そんなことを、堂々巡りで考えてしまう。そこで僕はいい方法を、考えたんだよ。 「クリスマスイブは、僕が計画するから」 「う〜ん、じゃあお願いするよ」 「うんっ! 楽しみに待ってて」  一週間後。色々と準備をして、僕たちはデートに行く。電車で僕たちは最初の目的である遊園地に向かった。 「遊園地って、来たことある?」 「小さい時に一度だけ、来たことあるぞ」  そうなのか、僕は何度も来たことあるけど。彼の初めてを、僕と一緒に過ごせるのはとても嬉しい。  それにしても、流石クリスマスイブ……電車の中が込み込みで、後ろから抱きしめられる形で守ってもらっている。  何でもないような会話をしているが、必然的に壁ドンみたいになっている。正直、目のやり場に困っている。 「って、ことなんだが。湊、ふう〜」 「んあ! 耳元で!」 「シー、ここ電車」 「……誰のせいで」  僕がぼーとしていると、耳の息を吹きかけられた。大きな声が出てしまって、僕の口元に手を置かれてしまう。  ほんと、誰のせいだと思ってんだよ……とは思いつつも、左手の薬指に同じ指輪を嵌めている。  なんか嬉しくなってしまう。電車が目的地の駅についたから、僕たちは手を繋いで遊園地へ向かう。 「湊、寒くないか」 「う、うん……大丈夫」  こんな風に手を繋いで、甘い声を出されたら体温が上がるに決まってんじゃん。繋いでいる彼の手に、指輪があってますます心臓がうるさくなる。  ほんと、イケメンはズルい……思わず左手を口元に当てて、恥ずかしがってしまう。視線を感じて見ると、骨子を見て微笑んでいた。  そんな愛おしいものを見る目で、見ないでよ……恥ずかしくなって、目を逸らしてしまう。  急に手を引っ張られて、肩を抱かれた。驚いていると、子供が走っていくのが見えた。 「当たらなかった?」 「う、うん。ありがとう」  助けてくれたみたいだから、俺はニコリと微笑んで目を見た。何故か顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまう。  変なの〜って思って、遊園地へと入っていく。待たなくてもいいように、フリーパスを買った。 「フリーパスって、便利なのがあるんだな」 「うん、基本的に待たなくていいんだよ」 「いいのか、ここも払って貰って」 「今日は、僕のプランの日だから」  僕がそう言うと、嬉しそうにしていた。僕たちは逸れないように、腕を組んで歩き出す。  まずはっと……パンフレットを見て、近くのジェットコースターに乗りに行く。他の人が待っている横を階段で昇っていく。  なんか悪いような感じがするけど、フリーパスだもんね。先に彼が乗って、手を差し伸べてくれたから手を取って乗り込む。  まるで映画のワンシーンのように見えて、心臓の音が煩くなってしまう。マジでイケメンすぎて、体温が上昇していく。 「どんな感じだろうな」 「映画がモチーフになってるみたいだよ」  四人一列になっていて、僕が一番左端に座った。安全バーを下ろされて、出発したら手を繋がれた。 「少し怖いから、繋いでいいか」 「うん、いいよ」  彼にも怖いものがあるんだなと思って、可愛く思えてきた。ただ一つだけ問題があった……それは僕がジェットコースターが、苦手だと言うことを忘れていたことだ。 「湊、大丈夫か」 「う、うん……落ち着いてきた」  近くのベンチで、彼に膝枕をしてもらっている。誤算だった……彼に楽しんでもらうことしか、考えてなかったから自分のこと忘れてた。  はー、カッコ悪いな……彼みたいにスマートにできないや。そう思っていると、頭を撫でてもらって心地よかった。 「湊、無理するなよ」 「うん、ありがと」  横を向いていたけど、上に向き直って見つめ合う。周りから好奇の目で、見られていたがそんなのは関係なかった。  しばらくすると、彼のお腹が大きな音を鳴り響かせた。お腹の音がダイレクトに、伝わってきて思わず爆笑してしまう。 「あはは、いい音!」 「……はずっ」  耳まで真っ赤にして、口元に手を置いていて……それがとてつもなく、カッコよくて見惚れてしまう。  僕は起き上がって、彼の腕を組んで微笑む。彼も優しく微笑んでくれて、僕たちは立ち上がって、そのまま近くのフードコートに足を運ぶ。 「何食べる?」 「パスタがいい」 「じゃあ、シーフードパスタセットと……僕はハンバーグセットで」  彼は海鮮パスタとコーンスープのセット。僕はハンバーグと、ご飯がついたセットを頼んだ。  席について料理が、できるのを待つことになった。僕たちは目の前の席に座って、見つめ合って会話をしていた。 「クリスマスイブは、やっぱ込み込みだね」 「だな……でもこうやって、のんびりするのもいいな」 「慌ただしいの、疲れるからね〜」 「あ〜だな」  まるで熟年夫夫みたいな、感じの会話をしていた。料理が出来るまで、ニコニコして見つめ合っていた。  料理が出来ると彼が、取りに行って持ってきてくれた。美味しそうな匂いが、漂っていて食欲がそそる。 「美味しそう! 頂きます〜」 「ふふっ、頂きます」  ハンバーグを一口食べると、肉汁がジュワッと溢れてきた。デミグラスソースが、食欲をそそる。  前から視線を感じて見てみると、彼がこっちをニコニコしながら見ていた。ハンバーグ食べたいのかな?  そう思って一口箸で取って、口元に運ぶと一瞬戸惑っていた。しかし直ぐにハンバーグを食べて、嬉しそうにしていた。 「美味しい?」 「美味いな。湊もパスタ、食べるか」 「うん、ちょうだい」  僕が口を開けるとパスタを一口、フォークで取って食べさせてくれた。口いっぱいに、広がるシーフードが絶妙だった。  こうしてシェアするっていうのも、いいよなあと感じていた。お腹いっぱいになったところで、僕たちは再び園内へと繰り出す。 「次何に乗るんだ」 「う〜ん、お化け屋敷がモチーフのアトラクションなんてどう?」 「……それはなしで」 「苦手なの? 可愛い」

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