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第74話 構わない

 自然を見て歩いていると、何やらドラマか映画のロケをしていた。俳優さんや女優さんたちが、カメラの前で演技をしていた。  こんなところ見る機会なんて、そうそうないから僕は見入ってしまう。凄いな……堂々としている。  すると何やらスタッフさんが、こっちを見て何やら話していた。すると初老のスタッフさんに、彼に英語で話しかけてきた。 『君、芸能界に興味ない?』 『ないです』  そうきっぱり言って、その場を後にしようとする。僕はスタッフさんに頭を下げて、彼に着いていく。 「いいの? そんなにあっさり決めて」 「俺は湊と一緒にいれれば、それで構わないから」 「つっ……ん、そうだね」  僕は嬉しくなって、彼の腕に強くしがみつく。彼も僕を見て微笑んでいて、僕たちはお互いを見つめていた。  ソフトクリームがあったから、食べたくなってきた。そのため、僕は彼に聞いてみる。 「ソフト食べよう」 「おう、いいな」  僕はバニラで彼は、チョコを買ってベンチに座る。のどかな草原を見ながら、食べるのは心が落ち着くよね。 「アイス、久しぶりに食べたな」 「そういえば、花楓は京都以来だよね」 「冷たいの苦手なんだよな」  僕はたまに食べているけど、彼が食べてるとこ見たことないな。冷たいの苦手なのか……なんか、可愛い。  暗くなってきたからか、少し肌寒くなってきた。僕が両腕を摩っていると、彼に抱きしめられた。 「寒いから、そろそろホテルに戻るか」 「うん、そうだね」  僕たちは腕を組んで牧場を後にする。トロリーという二階建てのバスに乗って、ホテル付近の停留所で降りる。  海辺を歩いて、ホテルの向かっている。ハワイに来ても僕たちは、いい意味で何も変わらずに過ごしている。  最初は勤めている会社の社長だったのに、あっと言う間に恋人になって結婚した。あの頃の僕に言っても信じないだろうな。  そう思って、歩いている彼の横顔を見つめる。相変わらず、綺麗な顔立ちしてるよね。そういえば、一目惚れって言っていたけど……。  僕よりも彼の方が、何倍も綺麗なのに僕のどこが好きなんだろう。ジーと見つめていると、視線に気がついた彼と目が合う。 「どうした? 俺の顔に、何か付いてるか?」 「ううん、只……凄く幸せだなって思って」 「湊……ふっ、俺も幸せだ」  僕は周りに誰も位なことを、確認してから立ち止まった。彼が不思議そうに見つめてきたけど、背伸びをして彼の首に腕を回す。  驚いていたけど、直ぐに優しく微笑んでくれた。少ししゃがんでくれて、軽く触れるだけのキスをした。  そのまま僕は彼の背中に腕を回して、抱きついて顔を見上げる。優しく微笑んでくれて、鼓動が早くなってくるのが分かった。 「このまま可愛い湊を見ていたいけど、続きはベッドでしよう」 「さ、流石にここではしないよ」 「分かってるよ。お腹空いたし、ホテルで食べよ」 「うんっ!」  僕は再び彼と腕を組んで、ホテルに向かって歩き出す。ホテルの最上階にあるレストランに、連れて行かれた。  いかにもな、高級な感じの雰囲気が漂っていた。アロハシャツに短パンって、大丈夫なのかな。  ドレスコードとかあるんじゃ……そう思って、進んでいく彼の裾を掴んで小さい声で告げる。 「この格好で大丈夫?」 「ふふっ、大丈夫。ここはラフな感じで、入れるのが売りだから。周りを見ても、そうでしょ」 「た、確かに……」  彼に言われて周りを見渡すと、僕たちみたいにラフな格好の人がたくさんいた。ひとまず安心して案内された席に座る。  メニューを渡されて見ると、値段は安心できる感じじゃなかった。まあ、分かってはいたけども……。 「何、食べる」 「えっと……この、ハンバーグで」 「いいのか、それで」 「うん、ハンバーグが食べたい」  僕がそう言うと笑って、ウエイターさんに注文をしていた。それはいいんだけど、なんか凄いものを注文していた。 「プレミアムステーキと、特上ハンバーグ。デザートにチーズケーキで……後は、赤ワインと水で」 「かしこまりました」  よく分からないけど、また高そうな……そう思ってメニューを見てみると、目の玉が飛び出るようなお値段だった。  僕がメニューと睨めっこしていると、彼にメニューをヒョイっと奪われた。そして満面の笑みを浮かべていた。 「値段は気にするな」 「気にするなって……庶民には、出せないよ」 「あのな……お金の心配はしなくていい。俺が出すから」 「いつもいつも、悪いよ」  今回の新婚旅行もだし、基本的に全部出してもらっているんだから。少しは僕も出したいよ……。  そう思っていると、テーブルの上に置いていた手を握られてニコリと微笑まれた。その表情が綺麗で、見惚れていた。 「俺は湊が喜んでくれればいいよ」 「嬉しいよ……だけど、僕は花楓が喜ばなきゃ嬉しくないよ」 「湊……俺は湊といれば、何処にいたって何をしてたって幸せだよ」  ほんとこの人、なんで無駄にこんなにカッコいいの……心臓がうるさくなってしまう。それでも嬉しくなって、僕たちはしばらく見つめ合っていた。  赤ワインと水が運ばれてきて、僕たちは手を離した。ワインを注いでもらって、僕たちは乾杯した。 「花楓は水でいいの?」 「ああ、酔うとマズいからな」 「あー、なるほど」  完全に忘れていたけど、酔うと気性が荒くなってしまうから。それ以前に多分、弱いんだろうな。  まあいいや……赤ワインを口に含むと、そんなに詳しくないけど高級なものなのは直ぐに分かった。  広がってくる香りや、後味でいいものだと分かる。これハンバーグに合うんだろうな……。  早く食べたいなと思っていると、ステーキとハンバーグが運ばれてきた。鼻腔をくすぐられるいい香りに、舌鼓を打ってしまう。 「湊、よだれが出てるぞ」 「嘘っ」 「嘘、だよ」 「もうっ!」  少し不服だったけど、僕は直ぐに微笑んでしまう。冷めてしまう前に食べようと思って、ナイフとフォークで切っていく。  肉汁がぶわあと出てきて、それだけで食欲をそそられた。一口サイズに切って、口に含むと口いっぱいに旨みが広がってくる。 「う〜美味しい」 「ふふっ、それはよかった」 「ステーキも美味しい?」  僕が少し食べたいと思って、聞いて見ると一口大に切ったステーキを口に運ばれた。一応、一回遠慮しとく。 「食べるか?」 「いいの?」 「もちろんだ、食べて。はい、あ〜ん」 「もぐもぐ、うん……美味しい」  流石高級ホテル。焼くのが上手いようで、程よい焼き加減でかなり美味しかった。赤ワインにもよく合って満足している。  僕たちは、いつもよりもかなり早いペースで食べ終わった。僕が口元をナプキンで拭いていると、彼に笑いながら声をかけられた。

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