74 / 87
第74話 構わない
自然を見て歩いていると、何やらドラマか映画のロケをしていた。俳優さんや女優さんたちが、カメラの前で演技をしていた。
こんなところ見る機会なんて、そうそうないから僕は見入ってしまう。凄いな……堂々としている。
すると何やらスタッフさんが、こっちを見て何やら話していた。すると初老のスタッフさんに、彼に英語で話しかけてきた。
『君、芸能界に興味ない?』
『ないです』
そうきっぱり言って、その場を後にしようとする。僕はスタッフさんに頭を下げて、彼に着いていく。
「いいの? そんなにあっさり決めて」
「俺は湊と一緒にいれれば、それで構わないから」
「つっ……ん、そうだね」
僕は嬉しくなって、彼の腕に強くしがみつく。彼も僕を見て微笑んでいて、僕たちはお互いを見つめていた。
ソフトクリームがあったから、食べたくなってきた。そのため、僕は彼に聞いてみる。
「ソフト食べよう」
「おう、いいな」
僕はバニラで彼は、チョコを買ってベンチに座る。のどかな草原を見ながら、食べるのは心が落ち着くよね。
「アイス、久しぶりに食べたな」
「そういえば、花楓は京都以来だよね」
「冷たいの苦手なんだよな」
僕はたまに食べているけど、彼が食べてるとこ見たことないな。冷たいの苦手なのか……なんか、可愛い。
暗くなってきたからか、少し肌寒くなってきた。僕が両腕を摩っていると、彼に抱きしめられた。
「寒いから、そろそろホテルに戻るか」
「うん、そうだね」
僕たちは腕を組んで牧場を後にする。トロリーという二階建てのバスに乗って、ホテル付近の停留所で降りる。
海辺を歩いて、ホテルの向かっている。ハワイに来ても僕たちは、いい意味で何も変わらずに過ごしている。
最初は勤めている会社の社長だったのに、あっと言う間に恋人になって結婚した。あの頃の僕に言っても信じないだろうな。
そう思って、歩いている彼の横顔を見つめる。相変わらず、綺麗な顔立ちしてるよね。そういえば、一目惚れって言っていたけど……。
僕よりも彼の方が、何倍も綺麗なのに僕のどこが好きなんだろう。ジーと見つめていると、視線に気がついた彼と目が合う。
「どうした? 俺の顔に、何か付いてるか?」
「ううん、只……凄く幸せだなって思って」
「湊……ふっ、俺も幸せだ」
僕は周りに誰も位なことを、確認してから立ち止まった。彼が不思議そうに見つめてきたけど、背伸びをして彼の首に腕を回す。
驚いていたけど、直ぐに優しく微笑んでくれた。少ししゃがんでくれて、軽く触れるだけのキスをした。
そのまま僕は彼の背中に腕を回して、抱きついて顔を見上げる。優しく微笑んでくれて、鼓動が早くなってくるのが分かった。
「このまま可愛い湊を見ていたいけど、続きはベッドでしよう」
「さ、流石にここではしないよ」
「分かってるよ。お腹空いたし、ホテルで食べよ」
「うんっ!」
僕は再び彼と腕を組んで、ホテルに向かって歩き出す。ホテルの最上階にあるレストランに、連れて行かれた。
いかにもな、高級な感じの雰囲気が漂っていた。アロハシャツに短パンって、大丈夫なのかな。
ドレスコードとかあるんじゃ……そう思って、進んでいく彼の裾を掴んで小さい声で告げる。
「この格好で大丈夫?」
「ふふっ、大丈夫。ここはラフな感じで、入れるのが売りだから。周りを見ても、そうでしょ」
「た、確かに……」
彼に言われて周りを見渡すと、僕たちみたいにラフな格好の人がたくさんいた。ひとまず安心して案内された席に座る。
メニューを渡されて見ると、値段は安心できる感じじゃなかった。まあ、分かってはいたけども……。
「何、食べる」
「えっと……この、ハンバーグで」
「いいのか、それで」
「うん、ハンバーグが食べたい」
僕がそう言うと笑って、ウエイターさんに注文をしていた。それはいいんだけど、なんか凄いものを注文していた。
「プレミアムステーキと、特上ハンバーグ。デザートにチーズケーキで……後は、赤ワインと水で」
「かしこまりました」
よく分からないけど、また高そうな……そう思ってメニューを見てみると、目の玉が飛び出るようなお値段だった。
僕がメニューと睨めっこしていると、彼にメニューをヒョイっと奪われた。そして満面の笑みを浮かべていた。
「値段は気にするな」
「気にするなって……庶民には、出せないよ」
「あのな……お金の心配はしなくていい。俺が出すから」
「いつもいつも、悪いよ」
今回の新婚旅行もだし、基本的に全部出してもらっているんだから。少しは僕も出したいよ……。
そう思っていると、テーブルの上に置いていた手を握られてニコリと微笑まれた。その表情が綺麗で、見惚れていた。
「俺は湊が喜んでくれればいいよ」
「嬉しいよ……だけど、僕は花楓が喜ばなきゃ嬉しくないよ」
「湊……俺は湊といれば、何処にいたって何をしてたって幸せだよ」
ほんとこの人、なんで無駄にこんなにカッコいいの……心臓がうるさくなってしまう。それでも嬉しくなって、僕たちはしばらく見つめ合っていた。
赤ワインと水が運ばれてきて、僕たちは手を離した。ワインを注いでもらって、僕たちは乾杯した。
「花楓は水でいいの?」
「ああ、酔うとマズいからな」
「あー、なるほど」
完全に忘れていたけど、酔うと気性が荒くなってしまうから。それ以前に多分、弱いんだろうな。
まあいいや……赤ワインを口に含むと、そんなに詳しくないけど高級なものなのは直ぐに分かった。
広がってくる香りや、後味でいいものだと分かる。これハンバーグに合うんだろうな……。
早く食べたいなと思っていると、ステーキとハンバーグが運ばれてきた。鼻腔をくすぐられるいい香りに、舌鼓を打ってしまう。
「湊、よだれが出てるぞ」
「嘘っ」
「嘘、だよ」
「もうっ!」
少し不服だったけど、僕は直ぐに微笑んでしまう。冷めてしまう前に食べようと思って、ナイフとフォークで切っていく。
肉汁がぶわあと出てきて、それだけで食欲をそそられた。一口サイズに切って、口に含むと口いっぱいに旨みが広がってくる。
「う〜美味しい」
「ふふっ、それはよかった」
「ステーキも美味しい?」
僕が少し食べたいと思って、聞いて見ると一口大に切ったステーキを口に運ばれた。一応、一回遠慮しとく。
「食べるか?」
「いいの?」
「もちろんだ、食べて。はい、あ〜ん」
「もぐもぐ、うん……美味しい」
流石高級ホテル。焼くのが上手いようで、程よい焼き加減でかなり美味しかった。赤ワインにもよく合って満足している。
僕たちは、いつもよりもかなり早いペースで食べ終わった。僕が口元をナプキンで拭いていると、彼に笑いながら声をかけられた。
ともだちにシェアしよう!

