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第77話 ココナッツドリンク

「湊、プール行こうよ」 「うん、分かったから……耳元で話さないで」 「ふっ、了解」  優しく笑って離れて、スーツを脱ぎだす……やっぱ、綺麗な体してるよね。そう思って見つめていると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。 「どうしたんだ? 見惚れてたのか」 「ちが……うくないけど」 「ふふっ、分かった。いいから、着替えようか。それとも……手伝おうか」 「だ、大丈夫……」  もうっ……僕は急に恥ずかしくなって、後ろを向いてスーツを脱ぎ始める。いつものように、こっちを食い入るように見てくる。  そんなに見て何が楽しいのだろうか……彼みたいな筋肉なら、見てて飽きないだろうけど……。  僕みたいな感じだと、貧相だからな……そんなことを上半身裸で考えていると、後ろから肩を掴まれた。  そして耳元で囁かれて、体がビクンとしてしまう。睨みながら後ろを向くと、ニヤニヤしていた。 「着替えないのか」 「ひゃあ……耳元で、言わないで」 「ごめんごめん、ぼーっとしていたから」 「もうっ……」  急激に恥ずかしくなって、僕は彼から少し距離を取った。そして今度こそ、肌になってビキニを着た。 「日焼け止め塗るから、そこの椅子に座って」  僕が椅子に座ると、優しく丁寧に日焼け止めを塗ってくれた。少し冷たかったけど、いやらしい塗り方をしてきた。  もうツッコむの止めようと思う。すると無言で海パンとアロハシャツを、渡されたからそれを着た。 「行こう、湊」 「うん、楽しみ!」  手を差し出されたから、僕は彼の手を掴んで歩きだす。左手に輝いている指輪を見て、嬉しくなってしまう。  ずっと結婚したかったから、彼と出来てほんとに良かった。そこで僕は一つ気になったから、聞いてみることにした。 「この指輪なくさないか、心配になってきた」 「ん〜ちょっと、待ってて」  最上階にあるプールに向かう途中に、売店があってそこに彼が向かう。僕は適当に、その辺に置いている壺とかを見ていた。  高そうな感じだな……営業の時に何度か、美術館とか行ったことあるけど……これ多分、有田焼だよね……。  詳しく分からないけど、この壺二百万ぐらいするやつだよね……そう思っていると、いつの間にか来ていた彼に声をかけられた。 「お待たせ、これつけて」 「これって?」  僕が彼が持ってきたネックレスを見ていると、僕の指輪を取ってネックレスに指輪を通していた。 「指輪をこれに通して……っと、これでいいだろ」 「へえ〜、いいね。これ」 「俺とお揃いだ」  僕が喜んでいると、首に指輪をつけたネックレスをつけてくれた。彼も自分の首に、ネックレスをつけていた。  彼の白い首に銀色が、映えていて綺麗だった。嬉しくなって僕は、彼と腕を組んで歩き出す。  プールに行くと既に、結構な人だかりが出来ていた。僕たちはアロハシャツを、鍵付きのロッカーに入れた。  そして手を取り合って、ゆっくりとプールの中に入っていく。冷たかったけど、彼と一緒なら大丈夫だと思えた。 「湊、ゆっくりな」 「うん……」  浮き輪を使って僕はぷかぷか浮いていた。隣には優しく微笑んで、流されないようにしてくれている彼がいた。  空を見上げると、雲ひとつない青空が広がっていた。日差しは暑いけどプールが冷たくて、嬉しくなってしまう。  浮き輪から降りて僕たちは、軽く水泳をしていた。一緒に遊んでいるだけで、心も体もポカポカしてくる。  すると徐に後ろから抱きしめてきた彼が、僕の脇腹を摘んで失礼なことを言ってきた。 「湊、太った?」 「う〜それは、指摘しないで。気にしてるんだから」 「まあ、湊の場合。太ったっていうより、標準になったって言った方が的確だろうが」  そうかな……僕だって、早いものでアラサーになってしまった。時の流れって残酷なようで、代謝が落ちてきたようだった。 「ダイエットしようかな」 「ならいい方法がある」 「どんな方法?」 「夜の運動」  そんなことを耳元で囁かれて、一瞬意味が分からなかった。しかし直ぐに意味が分かって、顔が熱くなってしまう。 「もうっ! やめてよ!」 「あはは、冷たいっ!」  僕は少し怒って彼に水を少し浴びせると、彼は嫌がる素振りをしていた。そんな感じで僕たちは、人目も気にせずにはしゃいでいた。  しばらくして喉が渇いてきて、何か飲み物を飲むことになった。プールの近くにある売店に行くと、ココナッツドリンクが販売されていた。 「美味しそう」 「いいな、二つで」  ココナッツドリンクを買って、パラソルの下にあるビーチベッドに寝転んだ。初めて飲んでみたけど、なんか不思議な味がした。  スポーツドリンクを薄めたような味で、なんとも言えない上手く表現できない。美味しいけど、う〜んって感じがした。 「美味か」 「う〜ん。不思議な味」 「そうか? 俺は美味いけど……留学時代は、よく飲んでたな」 「そうなの?」 「ああ、ペットボトルで売ってたからな」  へえ〜そうなんだ。結構ポピュラーな飲み物なのかな? 喉が渇いていたのもあって、直ぐに飲み干してしまう。  そんな風に談笑していると、にわかにお腹が空いてきた。そのため、僕たちはアロハシャツを着て一旦部屋に戻った。  晩御飯の前に、シャワーを浴びようということになった。優しくいやらしく、ビキニを脱がされた。 「もうっ……自分で出来るよ」 「俺がやりたい。盛大に甘やかしたい」  そんなことをそんな声で言われた、嫌だって言えないじゃん。恥ずかしかったけど、流れに身を任せることにした。  もうツッコむのは止めることにした。軽くシャワーを浴びて、体を拭いてからスーツに身を包んだ。  レストランに行くと、窓際の席が空いていたからそこに座る。ロブスターやステーキが、付いた豪華なコース料理を頼んだ。 「コース料理とか……毎日美味しいものを、飲んだり食べたりしてるから太るんだよね」 「新婚旅行中は、気にしないことにしよう」 「自分から言ったんじゃん」 「……ほら、赤ワイン飲んで」  この人、ほんと誤魔化すの下手すぎでしょ。まあいいや……僕たちは、赤ワインと水とで乾杯した。

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