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第81話 子供っていいな

 東雲さんを弄って遊んでいる蒼介に、しゃがんで涙目になっている東雲さん。よく分かんないけど、仲が良さそうなのは分かった。  でも楽しそうにしていて、僕と一緒にいた頃の蒼介と同じぐらい生き生きしていた。もしかしなくても、特別な関係なんじゃないかな?  それに確か、蒼介って今年から係長になったって透真から聞いた。部長と係長っていう関係よりも親密そうだ。 「蒼介、おめでとう」 「湊……お前の結婚式なのに、変だろ」 「あはは、確かに」 「まあ、さんきゅ」  照れ隠しの後頭部を掻く癖をしていて、嬉しくなってしまう。そう思って微笑み合っていると、後ろから彼に抱きしめられた。  後ろを向くと少し不貞腐れていて、嫉妬しているようだった。なんか可愛くて、頭を優しく撫でてあげる。  嬉しそうにしていて、僕までも嬉しくなってしまう。そこで顔を真っ赤にした蒼介に、咳払いをされる。 「お二人さん、子供が見てる」 「……そうだね」 「俺は気にしな」 「少しは気にしてよ」  僕がそう言うと彼は少し、不服そうに離れた。もうっ、そんな風に不貞腐れないでよ……。マジで可愛い。  そう思って見つめていると、蒼介に再び咳払いをされた。東雲さんが驚いているようにだった。  いつも堂々とカッコよく、部下を纏めている社長の一面を見て驚くのも無理ないと思う。 「ゴホンッ……とにかく、蒼介も東雲さんも来て下ってありがとうございます。輝くんも、ベールボーイよろしくね」 「うんっ! 僕、頑張るよ」 「可愛い……この二人のお兄さんみたくなったらダメだよ」  僕がそう言うと二人は、一瞬フリーズをしていた。しかし直ぐに僕の言っている意味が、分かったようで猛抗議してくる。 「湊、それは聞き捨てならないな! 社長みたいな感じなら、分かるが!」 「その言葉そっくりそのまま、お返しします。お前みたいな感じなら、分かるが」 「ふっ……俺の方が年上なのですが?」 「そんなことは、どうでもいいですよ。それに、俺は社長なのだから俺の方が上です」  何この喧嘩……子供でも、もっとマシな喧嘩をすると思うんだけど……いい歳した、大人のする喧嘩とは思えない。  おそらく最年長の東雲さんは、オドオドしているだけで何もしない。そう思って呆れていると、意外な人物が喧嘩を止める。 「そーすけくんも、しゃちょーさんもケンカはダメ! 仲良く!」 「はい……可愛い」 「子供っていいな……可愛い」  蒼介と彼は完全に、毒気が抜かれていた。子供の無邪気さには、誰も勝てないらしい。  それよりも、僕の方を見て可愛いと言っている彼を無視する。見つめ合っていると、黙っていた東雲さんが口を開く。 「お二人を見ていると、俺たちも結婚式挙げたくなるよな」 「おまっ! ゴホンッ、余計なことを言うな」 「いいじゃん。幸せいっぱいの、お二人を見たら結婚したくなるだろ」  東雲さんは蒼介の肩に、手を置いて笑っていた。蒼介も満更でもないように、顔を真っ赤にしていた。  やっぱ僕が、思っていた通りの関係性みたいだね。そう思って微笑んでいると、彼にこそっと耳元で囁かれる。 「なあ、あの二人って」 「うん、多分。結婚考えるような間柄ってことだよ」  蒼介はαだし、東雲さんもαだと思うけど。同じくαの男性同士でも、結婚はできるからね。  なんか幸せそうにしている二人を見て、僕まで嬉しくなってしまう。彼は僕の言葉を聞いて、興味なさそうにふ〜んと言っていた。  一応二人とも社員なんだから、もう少し興味持ってよ。僕は言い合っているというか、仲良く戯れ合っている二人に声をかける。 「お二人とも、結婚式には呼んでね」 「はい、もち」 「まだ、するかは決まってない」 「結婚することは確定だな」  蒼介は東雲さんの言葉を、遮って否定していた。しかし東雲さんは、蒼介を優しく見て微笑んで結婚すると言っていた。  やっぱり満更でもない様子の蒼介は、否定も肯定もしないで黙っていた。僕が心配する必要ないぐらい、大事な人が出来たんだね。 「改めて、おめでとう」 「湊……ありがとな」 「うん、近いうちにさ。また四人で飲もうよ」 「ああ……そうだな」 「俺も一緒に行くのが、条件だ」  彼は僕を後ろから抱きしめた状態で、またもや嫉妬し始める。可愛いんだけどさ、いい加減にしてほしい。  分かるけどさ、自分抜きで話されるの嫌なの。ましてや透真と律さんは、気にしないにしても。  蒼介に関しては気になるのも……それにしても、嫉妬深すぎて心配になるよ。これから何度も、飲み会とかあると思うし。 「ちっ……」 「舌打ちする」  僕がどうしようと、悩んでいると蒼介が分かりやすい舌打ちをしていた。それを見た彼が嫌悪感マックスの顔をして、何かを言いかけたけど僕が遮った。 「二人ともその辺で止めないと、本気で怒るよ」 「すみません……」 「ご、ごめんなさい……」  またもや借りてきた猫のように、大人しくなった。相変わらず、オドオドしている東雲さん。僕たちの中に変な沈黙が訪れた。  その沈黙を破ったのは、いきなりドアを開けて入ってきたノアさんだった。その後ろからノアさんに、ツッこんでいる中元さんもいた。 「タノモー!」 「いや、違うから! お邪魔します」 「あっ! ソースケ! ここで会ったが、百年目!」 「だから! いい加減、正しい日本語を覚えろ! 失礼します」  相変わらず、変な日本語のノアさん。ノアさんに、ツッコみつつ頭を下げて入ってくる中元さん。  どこからツッコめば、いいのか分からない……だけど、急な笑いが混みあげてきた。僕のその笑いを皮切りに、張り詰めていた空気が緩和した。  ノアさんってたまに、わざとなんじゃないかな? って思う時があるんだよね。まさかね……今もいつものように、蒼介に絡みに行っている。 「ソースケ! 久しぶり!」 「久しぶりです。ノアさんに、中元さん」 「お久しぶりです。お元気そうで何よ」  中元さんが挨拶しようとすると、ノアさんが遮っていた。するといつものように、空気の読めないことを言い始める。 「ねえ、なんでソースケとミナトは別れ……んぐっ」 「おいっ! ノア、余計なことを聞くな! すみません」 「あはは……」  中元さんが、慌ててノアさんの口元を押さえていた。中元さんが謝ってくれたけど、僕たちの中に変な空気が流れる。  なんとなく彼と東雲さんの、目が冷たくなったように感じた。二人からしてみれば、聞きたくない話だよね。  僕はなんて言えばいいのか、分からなくて困っていた。そんな時。何やら喧嘩をしながら、透真と律さんが控え室に入ってきた。

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