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そんな僕らの日常で 2
「煙いんだよ。たっく。」
奏はイラついた顔でまた小説に目を戻す。
そのスキに奏のポケットから、煙草を奪う。
すると、奏は僕の事を軽くにらむ。
もーー。あの煙ったいのがいいのに。
わかってないなぁ。
「かわいいキャラも疲れるのだよ。」
「キャラって言うな。キャラって。」
そう。僕はクラスでは、中世的な顔立ちと小さな身長で、可愛いキャラを演じている。
上目づかいとか、いろんなことを知らないふりをするのもなかなか疲れる。
特に興味のないブスとか、ごつい男とかに付きまとわれるのマジ無理。
だから、タバコ吸わないとやってらんないってワケ。
「だってぇ。僕こう見えて結構肉食なんだよ?」
「知ってる。」
そう。かわいい顔して近づいて、いろんな女の子を食べちゃうのだー。
がおー。
もっとも、仲のいい奏や東には素で接してるけどねー。
「だよねぇ。んっ……」
歯でメンソールをつぶし、煙草に火をつける。
メンソールの爽快感と、煙草のピリピリとした感触が口の中を支配する。
吸い込んだ煙を肺の中に送ると、強張った気持ちが少し和らぐ。
「はぁ。おいしー。」
紫煙を吐き出すと、あたりに煙草の匂いが漂う。
散らかった室内を薄灰色の煙が埋め尽くす。
この感覚がなぜだかたまらなく好きだった。
「煙いっつったろ。せめて窓開けろよ。」
流れてくる煙にまた顔をしかめる奏。
よほど気に入らないのか、立ち上がってすりガラスの窓を開けようとする。
「ダメだよー。先公にバレるからー。ふぅ。」
煙草吸ったぐらいで停学なんて洒落にならないからね。
ある程度は注意しないと。
「しょうがねぇなぁ」
奏もそのことは重々承知のようで窓の鍵に駆けた手をもとにもどす。
流石、僕の親友。
大事なところでは味方してくれる。
にしても、東おそいなぁ。
あっ…そうだ、たまには奏をからかうのも悪くないかも。
「知ってるー奏?」
「なにを?」
突然の質問にきょとんとする奏。
ソファーに座っていた奏の上にまたがる、僕。
「ふぅ……こうやって煙を吹きかけるのって。今夜お前を抱くって意味なんだって。」
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