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穂影くんのよくある一日 3
『ごめん。昼に用事できた…ごはん先食べてて』
僕と奏と東のグループラインにメッセージを送る。
するとすぐに、既読が付き、奏の『了解』というメッセージと、東のOK!という可愛らしい猫のスタンプが送られてくる。
ホント、奏って味気ないよねぇ。
仮にも恋人どうしなのに。
それに比べて、東、男子でこのスタンプって…
マジでかわいい。マイエンジェル。
それにしても賢太郎先生はなんで僕の事呼び出したんだろ…?
居眠りしてたから…?
いや、そんなことで呼び出すほど賢太郎先生は教育熱心じゃない…
じゃぁなんだ…?
職員室の扉をあけ、賢太郎先生の机を探す。
あ、居た。
賢太郎先生の机はいろんなフィギュアやら書類やらが散乱していてすぐに見つかる。
もはや一種のランドマークだ。
いかにも安くて栄養価のなさそうなカップ麺を食べてるところがなんとも賢太郎先生らしい。
「えっと…」
恐る恐る呼びかけると、賢太郎先生はカップ麺を食べながら何かを探し始める。
ごそごそと資料で散らかった机から、鍵を探しだしこう言った。
「すぐ食べ終わるから、先にこの部屋行ってて」
渡されたのは、生徒指導室2というタグの付いた鍵だった。
うげぇ…なんかいやな予感。
「そこでですぐ右にあるから」
賢太郎先生の指示に従って、生徒指導室に向かう…
めんどくせぇ…
なんで生徒指導室なの…
しかも賢太郎先生が…
先生のいうとおり、職員室の中の奥まったところに、生徒指導室2と書かれたプレートをさげた教室があった。
鍵を開け、ガチャリとドアノブを回す。
その部屋には大きな机と、向かい合うように置かれた椅子が二つあるだけの狭い部屋で、実に殺風景だった。
重い足取りで椅子につく。
いろんなことが頭の中を駆け巡り、様々なことを想像してしまう。
あれもこれもと過去の悪事を思い出しているうちに、ドアが開き、賢太郎先生がのっそりと顔を出す。
「待たせて悪かったな」
軽く謝りながら席に着くと、先生は煙草を取り出した。
あ、やっぱり僕と同じ銘柄…
「あの先生。煙草…」
一応生徒の身分なのでつっこみを入れる。
「いいんだよ、ここで吸っても、誰にもばれないし。」
先生。だからって、吸っていいって理由にならないと思いまーす、
そんなことはどこ吹く風で、先生はメンソールを噛み、煙草に火をつける。
「ふぅ…まぁ、呼出しといて、あれなんだけどさ…最近なんかあったか…?」
なんかって、っまた大ざっぱな。
まぁ、確かにいろいろあったけども。
ここで言えるような話じゃない。
「特に何も…」
「ホントか…?」
賢太郎先生が心配そうに見つめてくる。
あれ?僕そんなに元気なかったかな…?
「ええ…なんでですか…?」
小首をコトンと傾げて聞いてみる。
賢太郎先生にまでかわいいアピールをする必要はないが、クセって怖いものだ。
「いや、だって、お前、煙草吸うようになったろ?」
その瞬間僕の頭が真っ白になった。
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