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長い一日を終えて

ようやくと僕は、僕たちの遊び場。 落研の部室へと向かっていた。 今日は、賢太郎先生や、結衣ちゃんなどいろいろな人に呼び出され、全然東や、奏に会えていない。 早く会いたい。 そんな気持ちで本館から部室棟につながる渡り廊下を走り抜ける。 レンガ建てのアパートのような建物の一階、右隅。 僕たち以外誰も近寄ることのない部屋。 少し、息を整えドアノブに手をかける。 「遅かったな。」 相変わらず、本に目を向けたまま声をかけてくる奏。 どうやら、まだ東は来ていないらしい。 「ねぇ、東は…?」 「文化祭の講堂企画の会議かなんかで、菱川に連れてかれた。」 あぁ、なるほど。 菱川っていうのは演劇部の部長で、人形みたいなかわいい顔をした男子だ。 僕らと同い年で、とても演劇に対して情熱を燃やしている。 何故、そんな菱川に東が連れ出されたかというと、毎年落研と演劇部は、文化祭の講堂企画で協力体制をとっているからだ。 お互いに人数の少ない部活同士、落研の部員が演劇部の劇に役者として出たり、演劇部のスタッフが落研の独演会の証明をやったりと上手いこと共存してきたわけだ。 そんな訳で、今年も東は落研部長としてあくせく働いているという次第だ。 ほんと、部長はたいへんだねぇ。 ということは… 「東は、会議終わったらそのまま帰るってさ。」 演劇部の部長の菱川はよほど熱心らしく、下校時間ぎりぎりまで会議を続けるのでいつも演劇部との会議の時は、東は先に帰っててと言っていた。 よほど会議で疲れるらしく、すぐに帰って寝てしまうらしい。 あぁ見えて体力ないからなぁ、東は。 と、いうことは、今日は奏と二人きりって訳か。 なんだかんだ言って、付き合うようになってから二人きりになるのって、初めてかも… なんか緊張する… 「ねぇ、奏…」 「なに…?」 奏はやっぱりこっちを向いてくれない。 まじでムカつく… 「そぅいえば…賢太郎先生に煙草ばれた…」 「…はぁ?」 ようやくと、奏はこっちを見た。 「なんか、匂いでわかったって。でも黙っててくれるってさ。いい人だよね。賢太郎先生。」 そういうと、訳が分からないといったように首を傾げてから、本を閉じる。 「まじ?」 「マジ。」 「わっけわかんねぇ。」 そういって、奏はブレザーの内ポケットから、黒い箱を取り出す。 「まぁ、停学とかならなくてよかったじゃん」 何故だか機嫌が悪そうになった奏をなだめるようにいう。 「……そうだな。」 奏は取り出した箱を、開ける。どうやら煙草のようだ。 あれ……あれから吸うようになったんだ。 全然気づかなかった… 慣れた手つきで、煙草を一本取り出し、それを咥える。 長い指がセクシーで、奏の動作にはよく見とれてしまう。 「まぁ。いろいろ、気をつけろよ。田辺にばれたってことは、他の奴にもばれるかもってことだから。」 そーいえば賢太郎先生って田辺って名前だったな。 ずっと、下の名前でよんでたから忘れてた。 てか、自分で煙草咥えながら言うなよ。 「わかった。気を付ける。」 そう答えると、奏はイラついたようにメンソールを噛んだ。 ポケットから百円ライターを取り出し、火をつける。 一回息を吸い、大きく煙を吐く。 「ふぅ……それから、田辺にも気をつけろよ?」 ……なんで? 賢太郎先生は黙っててくれるって約束してくれたんだから、他の人に気を付ければいいだけじゃん。 「まぁ、頭の隅にでも置いておけ。」 奏がもう一度紫煙を吐きながらそういった。 まぁ、奏がいうならそうしとこ。 …だから、駄洒落じゃないってば。

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