22 / 36

空に雨降り、小道を行けば

「♪あーめ」 外を見渡すと雨が降っていた。まだ梅雨には早いが、ざぁざぁと雨粒が落ちる。 昨日の電気プレイのせいで、身体はクタクタだ。 あの後、ふたりで僕の出したいろんな液体をカタした後、もう一度シたのもつらかった。 辛かったけど、やっぱり、奏のやつ入れてもらってなかったから… 「♪が降れば」 しとしとと落ちる雨粒が、窓のそばに生えた大きな楠の葉を打つ様子を見つめていると、何故だか心が落ち着く気がする。 賢太郎先生のしゃべる声を跳ね除け、雨の音が耳に響く。 でも、あの電気プレイには結構怒ってたりする。 エッチした後は、ずっと奏の事を無視していた。 今後、痛いのしないなら口を利くこともやぶさかじゃない。 「♪小川」 滝のように落ちる、雨の先の景色は少しかすんで見える。 かすんで見える外の景色は、いつも見ているものよりも少し幻想的で、いつまで見ていても飽きない。 「♪ができ」 落ちてゆく雨が水たまりをつくり、その水面を揺らす。 幾何学的に広がる水面はとても綺麗だ。 「♪水が」 聞こえないはずの水音が脳内に響いてゆく。 「♪流れて」 雨の日は割と好きだ。 外を出歩くのは億劫だが、こうやって外を見ていると幻想的な風景なのでとても好きだ。 「♪みんな」 やがて雨がもっと強くなり、だんだんと外が強くなる。 「♪死ーぬ」 昔なんかのコントで見た歌を口づさむ。 特に意味がないのだが、何故だか雨の日にはこの歌が思い浮かぶ。 特に意識しているわけではないのだが、不意に歌ってしまう。 皆もそういうことあるよね…? 「いーなずみ。物騒な歌を歌うな。」 賢太郎先生に教科書の背でコツンと叩かれる。 「あぅ…ごめんなさーい。」 「はぁ。まったく。はい今日は解散!今日は設楽先生が休みだから、ホームルームないからかえっていいぞー」 授業終了のチャイムが鳴る、4分前。 蜘蛛の子を散らしたように、クラスメイト達が散ってゆく。 「稲角。お前次のテストで赤点取ったらホントに許さないからな。」 賢太郎先生が僕の耳元に顔を寄せて注意する。 しゃべるたびに、KOOLの匂いが微かに香る。 賢太郎先生の声は低いので、少し腰に響く。 「わかってますよー。」 実の入っていない返事を返すと、先生はいかにも不満、といったような表情をして、僕の頭に、ぽんと頭に手を乗せる。 賢太郎先生のごつごつとした男らしい指が頭に当たる。 賢太郎先生、手おおきいな… 「いざ赤点取って泣きついてきても知らないからな」 強く頭を押さえつけ、ぽんと頭を離し、すたすたと去って行ってしまう。 いーもーん。 奏に教えてもらうもーん。 そんなことを思いながら、今日も、落研に行く準備をする。 雨の降る渡り廊下をゆっくりと進む。 いつものレンガの建物、いつもの無機質な扉。 でも、今の僕にとってはこの何でもないものが、こんなにも愛おしい。 「穂影いらっしゃーい。」 この部屋の主、東が僕をいつものように迎えてくれる。 いつものありふれた日常も、愛しい人の言葉なら、退屈せずに何度だって繰り返せる。 ただ、今日は少しいつもと違うことがある。 「あれ…?奏は?」 金髪の活字中毒こと、奏の姿が今日の部室には見当たらなかった。 東が用事でいないことはたまにあるが、奏がいないことは珍しい。 「家の用事で今日は早く帰るんだって。LINEにそう書いてあったよ。」 ポケットからスマホを取り出してみると、しっかりとLINEに絵文字も何も入っていない飾り気のない、奏らしい文章で連絡が入っていた。 「じゃぁ、今日は、東と二人きりかぁ。」 「そ、そうだね!」 何気ない僕のつぶやきに、東が動揺した声で返事を返してくる。 あっ…そうか、東と二人きりになるのは付き合ってから初めてだっけ。 僕は、部屋の右手に置いてある3人掛けのソファに鞄をに放り、そのソファの前に置いてある、低いテーブルに沿ってL字を書くように並べられた一人がけのソファに座る。 ここが僕の特等席。 ちなみに、東は僕が鞄を放ったソファにいつも座っている。 奏もそのソファかな。 東が持ってきたであろう少年誌をぱらぱらと読み始めると、東は座っている大きなのソファの上で小さくもじもじしし始めた。 あれれー東ちゃん、キンチョーしてるぅ うへへ。 ホントに東はかわいいなぁ。 奏と違って。 「ねぇ、東…」 「な、なぁに?」 ちょっと色っぽい声で、呼びかけると、身体を小動物のようにピクンと跳ねさせ、目をそらす。 ほんと、かわいい。 僕は腰をあげ、東の座ってるソファまでいき、隣に座る。 「え…?ほ、ほかげ」 「ねぇ、ちゅーしていい?」 そうして僕は、ちょっと強引に東を押し倒した。

ともだちにシェアしよう!