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エピソード12−①

 年明けて三日。  俺は元旦からバイトで昨日は休みだったけど、今日はまたバイト。BITTER SWEETは正月から大繁盛。昼のピークを過ぎて今は買い出しに行って戻って来たところだ。  実は今日は明から初詣の誘いがあった。  たぶん七星も一緒だろう。  会いたいような会いたくないような。でも行けなかったんだから結局そんなこと考えても仕方はなかった。  なのに。  さっきから俺の目の前でうろうろしているのは誰だ!! 辺りをきょろきょろ見回してなかなかに挙動不審だ。 「ナナ?」  立ち止まって動かなくなったところに俺は声を掛けた。どちらにしてもナナの横を通り過ぎてBITTER SWEETまで行かなきゃならないんだ。  七星が振り返る。 「いっくん」  吃驚した顔をしてその後ぱぁと顔が明るくなる。 (なんだその顔、可愛いなっ)  やっぱり俺は七星に会いたかったのかも知れない。しかしそれを顔に出しちゃいけないと無表情を装った。七星の顔が少し暗くなる。気にする余り無表情通り越して怖い顔にでもなっただろうか。  俺はなるべくいつも通りに振る舞おうとした。 「何してるんだ、こんなとこで。今日は確か……カナたちとー」 「あ、うん。初詣行ってきた」  続いて七星は何故かぴん背筋を立てた。 「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」  なんだか妙に堅苦しい挨拶をして深々と頭を下げた。  その姿が可愛すぎて思わず笑みが零れてしまった。 「あ、うん。よろしく」  七星は一頻り遊んだあと明たちと別行動を取ったらしい。何故か俺に会いに来ようと思ったようだ。しかし、店の名前もわからずに感だけを頼りにここに来て、迷子になったということだ。 (まったく……ナナらしいといえば、ナナらしい)  俺はといえばそんな七星を愛おしく思う気持ちが溢れ出てしまって、ちょっとヤバいくらいだ。何かやらかさないように気をつけなきゃと思いつつ、七星の髪をくしゃっとしてしまった。 (何やってんだ、俺)  俺は七星を伴って店の表のドアから入った。本来なら裏口から入るのだが、一緒に入ってやらないとどうせ七星はドアの前でうろうろしているだけだろう。 「ただいま帰りました」  そう言うとテーブルのセッティングをしていた店長がこっちを向いた。 「お帰り。けっこうゆっくりだったな」  その言葉を聞いて七星が謝ろうとでもしたのだろう。俺は慌ててそれを遮った。 「すみません。お客様連れてきたから、それで許して貰えませんか」    

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