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エピソード17−②

 中学生になってからの一年でだいぶ背も伸びた。  俺は憧れの龍惺のように髪を染め始めた。いろんな色に変えて最終的には今の金髪になったわけだが。  俺が髪を染め始めた頃には彼は地毛の黒髪に戻っていた。  龍惺は高校を卒業後、バイク好きが高じて二輪自動車整備士二級の資格を取るために専門学校に通った。今は実家のヤハギモータースで働いており、ゆくゆくはそこを継ぐことになっている。  風を切って走る龍惺も、喧嘩の強い龍惺も、夢のために頑張る龍惺も俺は「かっけー!!」と思っていた。  俺が中三の頃だった。  俺らとは別の学区から来た二人がいた。  城河樹と金森明。  免許を持っている仲間の後ろに乗り、たまに起きる別チームの小競り合いに参加していた。  妙に喧嘩の強い二人だった。 「今日はT高の後輩と走ってたんですけどね」  再びしゃがみ込んでバイクのメンテをしている龍惺の傍らに立ち俺は言った。 「おう」 「T高近くのコンビニで集まったんすよ」 「おう」  ぶっきらぼうな声だがいちいち相槌を打ってくれる。 「そしたら……」  俺は溜めた。 「そしたら?」  溜めすぎてたら気になったらしい。 「なんと! 樹に会っちゃいましたー」  俺は両手を広げ(おど)けて言った。 「樹に?!」  バイクを蹴飛ばしそうな勢いで立ち上がる。 (樹の話になるとこの反応かー) 「そうなんすよー。高校の時によく一緒にいた男子と一緒でしたー。樹とは正反対の可愛い感じの子」 「……俺も一緒に行けばよかったかな」  ぼそっと零した。  どうやら後から言ったことはスルーされたっぽい。  樹たちが俺らの走りに加わった当初から、どういうわけか龍惺は樹を気に入っていた。  中一にしては身体も大きくスポーツでもやっていたのかという筋肉のつき具合だった。無表情で無気力で無愛想。喧嘩は率先して出ていくし強いが、何か振り切るような危うさもあった。  たぶんそんなところが気に入っていたというより、気になっていたのかも知れない。 (龍惺さん、面倒見いいからなー)  龍惺自らバイクの後ろに乗せることも少なくはなかった。  俺はそんな龍惺に特別扱いされている樹がちょっと気に入らなくて、彼奴が同高に入って来たのをいいことにちょっかいかけていた。その頃にはもう仲間から抜けていたのに。  着拒やブロックされてる今でも樹のことを気にしている。  俺はちょっともやっとした。 (いじわるしたれー) 「龍惺さんのこと、ストーカー呼ばわりしてましたけど」 「むっ」  目に見えて表情が変わる。 「あれですよ、あれ。例のカフェの」        

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