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エピソード18−①

 八カ月に渡るごたごたは終結を迎えた。  俺も七星も怪我を負い、俺は七星と一緒に卒業することができなくなった。  でも俺はそれをすんなりと受け入れた。すべては俺のしてきたことの報いだ。  そして、俺は決意をしたんだ。  七星がいなくても、俺は一人で頑張れる。七星に追いつく為に。  そんなふうに思えるのも七星が俺を諦めずに、メッセージを送り続けてくれたから。  酷い言葉で遠ざけたのに。 * *  しばらく会えなくなる。  だからその前に想い出を作りたいと思った。 『今度水族館行かないか?』 『水族館? え、行きたい!』 『一昨年(おととし)彼奴らと一緒に行ったとこでいい?』 『うん! いいね! またみんなで行きたいと思ってたんだ』 「…………」  水族館に誘った。  どうやら、七星は明や日下部も一緒だと思っているらしい。 『二人で行く』と返信しようか迷ったが『なんで?』とか『みんなで行こう』とか『二人で行くなんておかしくない?』とか言われたら、かなりのダメージなのでそのまま黙っておくことにした。  三月二十八日。  約束の日。  十時台最初のバスに乗ることになっており、俺は七星の家のフェンスの外側でまっていた。  まるで初デートでもするかのようにどきどきしていた。 (や、デートじゃないけどさ! でも俺だけはそう思っててもいいかな)    二人でバスに乗り、最寄り駅の改札を抜け電車に乗った。最寄り駅についてからも電車で移動中も七星はしきりに周りを気にしていた。 (これは……カナたちを探してる感じかぁ)  ちょっと胸が痛むが気がつかなかったフリをしよう。 (俺はみんなで行くなんて一言も言ってないしな!)  水族館の中に入ってからとうとう七星に問い詰められた。 「大くんたちは?」  どきっ。  俺の心臓は跳ね上がったが、まるで初めて気づいたように驚いた顔をする。 「今日大くんとメイさんも一緒なんじゃ」 「俺――彼奴と一緒だって言ったか?」  ひたすらしらばくれると七星は固まった。たぶんラインでのやりとりでも思い返しているんだろう。 (あー俺と二人なのそんなにやだったかな)  俺はだんだん不安になってきた。 (確かに俺みたいな無愛想な男より、カナや日下部と行ったほうが楽しいかも知れないよな……) 「言って……ないね?」  どうやら振り返り終了した七星がそう結論を出した。 「言ってない」 (二人で行くとも言ってないけど) 「――俺と二人じゃ……嫌か?」  さっきから不安に思っていたことをとうとう口にしてしまった。 「今日はナナと二人で来たかったんだ」  自分が今までになく気弱な表情をしているんじゃないかと思っている。  しかし、こんなふうに言えば七星のことだ。例えそう思っていても「みんなと行きたかった」なんてことは言わないはずだ。 (俺……かなりズルいよな)  

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