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第23話 ロマンチックな躾
許可を出すや、真王が手首を捻ってネクタイを解く。大股で駆け寄ってくる。
「夕夜さん夕夜さん夕夜さん……っ!」
夕夜の内腿を鷲掴み、後腔にいきりたつ性器をねじ込んだ。
「ぁ、――はは、やっぱり、極上品だな、」
夕夜もこれが欲しくてたまらなかった。
真王の忠犬っぽい愛し方は、まっすぐ愛されたい夕夜にぴったりだ。
身体ひとつで満足させる、ふつうの恋愛なら王道、ダイナミクス持ちとしては物足りないとされるプレイ。
夕夜はこれがいちばん好きだ。サブでもドムでもふつうが好きで、何が悪い。痛みより甘さがいい。
いや、ひたひたに甘やかして褒めて、求めて尽くし尽くす――これもある意味、ロマンチックという特殊嗜好か。
「~~っ」
上の口も塞がれたので、嬌声は真王の腹の中に落ちていく。本当に食べられてしまいそうだ。
「はぁ、真王、がっつき……過ぎ、だ」
「ん、女王サマに言われたとおりにしてるだけ、だけど? あんたも気持ちよさそ」
さんざん舌を絡ませたのちに告げる。ただ、とろけた口調で苦情には聞こえまい。
案の定、律動しながらしらを切られた。女王に騎士の剣を突き立てるとは、背徳的なこと。
「熱 いな……」
摩擦熱が全身に波及する。ずぷずぷ突かれながらたくし上げられたスウェットを、すぽんと脱いだ。
真王の大きな目が、夕夜の赤い乳首も食べたそうに潤む。
それを見逃さず、傍らのタワーと乳首を交互に指差す。
「こっちも『喰わせてやる 』」
「やった。いただきます」
真王は嬉々として夕夜の乳首にホワイトチョコを垂らし、吸いついた。
「甘くて最高……」
身体を美味しく味わうアレンジは好評のようだ。
真王は右の乳首を舐め転がす間、左の乳首も次に食べるため確保するかのごとく、指で引っ掻いたり押し潰したりしてくる。普段料理しているぶん指先が器用だ。
「ぅ、ん……はぁ、ぁっ」
夕夜は天井を見上げ、胸から指先へと拡がる性感に身を任せた。
もっと味わわせてやりたい。真王を満たすことで、夕夜も満たされる。
それで好きにさせていたら、チョコまみれの唇が急に首筋にも這った。
「……んっ、何だ?」
「粗チンのせいで、赤くなってる」
真王が不満げに言う。
ハーネスの跡だろう。だが千歳に強要されたことなど、スイッチプレイを始めた時点で忘れ去っていた。
真王にも彼だけの「女王サマ」に意識を向けてもらうべく、やわらかい髪を掻き分けて囁く。
「すぐ消える。それより、奥まで『挿れろ 』」
乳首の賞味中、真王の性器は後腔の中ほどに留まっていた。これはこれで、先端の張り出した部分に前立腺を押し上げられて気持ちいいのだが。
これ以上の快楽を、知っている。
真王がぱっと顔を上げた。
性欲と奉仕欲の二重の本能が暴発しそうなのか、苦しげだ。夕夜の目には色っぽく、美味そうに見える。
「……制御できないかも」
「そしたらおれが躾けてやる」
「んじゃ、おねがい」
請け合った瞬間、真王が理性を放り捨て、腰をぐぐっと押し出してきた。みちみちと隙間が埋まる。
「っ、むしろ、これくらいが、『いい 』」
真王の出し惜しみもコマンドの使いどころのようだ。真王が自身の愛の大きさに怯むほど、愛せたとき彼の充足は大きくなる。
ローション代わりにチョコを注ぎ足して、極上品を根もとまで収めきった。
「腹いっぱい、だ。『いい子』だな」
夕夜は躾と称し、真王の腰にほっそりした脚を巻きつけて笑う。コマンドを効かせたぶんの快楽もあって、目の前がちかちかした。
「もー、間取りおんなじだから、料理する度にそのえろい顔思い出しちゃうよ」
真王は恨み言を言うが、顏はにやけている。実際は困っていまい。本心を顔から読み取った上で、あえて訊く。
「じゃあ、『やめるか 』?」
疑問形のコマンドは半分くらい効き、真王の律動が鈍った。ご馳走を前に指を咥える状態になり、真王が眉尻を下げて降参する。
「女王サマ、俺が悪かった。思いっきり動かさせて」
「悪い子にゃお仕置きだろ。『待て 』」
真王が完全に止まる。半泣き顔が可愛い。今の夕夜はドムだから余計に。
夕夜は主人然と微笑み、括約筋に力を入れた。真王の性器を絶妙な強さで締めつける。
さらに作業台に手を突いて骨盤をグラインドさせ、先端の敏感なところを擦ってやった。
体温で温められたチョコが甘く香り立つ。
真王は「うぅっ」「はぁ」と啼いていたが、なぜかくすくす笑い出す。
「何がおかしい?」
「や、スイッチプレイって未知だったけど、いつものセックスとあんま変わんなくね?」
言われてみれば。
以前想像してみたスイッチプレイはセックスと真逆で、しっくりこなかった。
プレイになったとて、痛みや恥ずかしさに耐えてみせずとも、気持ちは伝わる。
相手が真王だから。ふつうの愛し方が、互いにとっては特別になる。
「確かにな。どのコマンドも、真王とのセックス用みたいにしっくりくる。さすがおれの『極上の忠犬 』」
片手で真王の髪を撫でてやった。悦んだ真王の極上品が、腹の中でさらにふくらむ。
同時に夕夜の肌も、気の早い桜の花びら色にふわりと染まった。腿も、胸もとも、頬も。
「きれー……名花だ。褒めると感じんの?」
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