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第5話
今年三〇歳になり、全盛期の若々しさは年々衰え始めている。ジムに通い全身のケアを毎日必死にやっている。それでも老いは確実に進んでいる。そんな事をここずっと考えていて、ノエルのあまりにも美し過ぎる容姿に自分のモデル人生が危ぶまれる気がして、咄嗟に連れ帰ってしまった。今思えばあの時はどうかしていたのかもしれない。
「おいでノエル」
ノエルを自分のベッドに呼ぶと、ノエルは素直にベッドに潜り込む。そして、自分を抱かせた。初めての時、ノエルは酷く動揺し怯えていた。ノエルにとってSEXは不浄な行ために思った様だった。自分の嘘 を信じるノエルに、みんなしている事、普通の事、そう言ってノエルを落ち着かせた。ノエルにしてもらうと嬉しいのだと伝えると、ノエルはルカが喜ばせる事ができる唯一の行ために素直に従った。ルカはルカで、これほどまでに美しい男に抱かれている事実、そして自分がいないと生きていけないノエルに対して愛おしさと同時に優越感を覚えた。そして時折、ノエルの美しさにも嫉妬した。
ルカのマンションから出ることのないノエルにとっての情報源はもっぱらテレビだ。映画が好きなようで飽きることなくずっと見ている。雑誌や本も好きなようでよく眺めているが字が読めないため、雑誌の写真をよく眺めていた。
「ルカ」
洗い物をしているルカにノエルが雑誌を片手に近付いてきた。
「これ、ルカ?」
そう言って雑誌の表紙を見せる。
先日発売されたルカが表紙の女性誌だった。『SEX特集』と大きな見出しと、裸の女性モデルと裸のルカが抱き合っている表紙。表紙を飾るルカの青い瞳がこちらを見つめている。
「そう、俺だよ」
「これも?これもルカ?」
中を開いて女性モデルとの絡んでいる写真を見せてくる。
「そう、俺。なんで?」
ルカが尋ねると、少し顔を歪ませ「すごく嫌な気分」そう言った。
一瞬、意味が分からなかった。
「はは、ヤキモチでも妬いたか?」
「ヤキモチ……?」
聞きなれない言葉に、きょとんとした表情を浮かべている。珍しいと思った。ノエルが感情らしい感情を出したことがなかったからだ。ノエルは感情がフラットで喜怒哀楽の起伏があまりない。だが、初めて感情らしい感情を露わにした。
「俺がノエル以外のやつと抱き合ったり触れ合ったりするのが嫌って事」
ルカはノエルの首に両腕を回すと、小首を傾げてみせた。
「イヤダ……とても……」
その言葉にルカは気分が良くなり、ノエルにキスをした。
もっと自分に執着すればいい。そして自分がいないと生きていけなくなればいい──。
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