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第9話
ノエルは、人間じゃないのかもしれない──。
そんな非現実的な事を思う。いや、すでに非現実的なことは起こっている。マナトと片桐の《天罰》による死。そして、死んだはずの仔猫の蘇生。
結局、元気になった仔猫は知り合いに譲った。ノエルは酷く落ち込んだが、ルカの猫アレルギーが判明してしまい飼う事はできなかった。理由が理由であったため、渋々ながらもノエルは納得してくれた。
一体ノエルは何者なのか──、あれからルカは色々と考えを巡らせた。
生物の生死を自由に操れる神的存在なのか、もしくは死神とか?この世の者でないとするなら、人を狂わすほどの美貌を持つ理由にも納得できる。
もし自分が望んだ人物を殺してくれと頼めば、殺してくれるのだろうか──。
「こいつ、嫌い」
ルカはテレビに映った女性タレントを見てそう言った。
「嫌い?なんで?」
「この前、同じ番組出た時に意地悪された。業界で性格悪いって有名だし、みんな嫌いだって」
ノエルはルカの顔を覗き込むと、
「ルカ、意地悪された?嫌い?」
そう訪ねてくる。
「うん、大っ嫌い」
次の日──、そのタレントが自宅の階段から落ち意識が戻らないというニュースが流れた。死ぬまでには至らなかったが、意識不明なら死んだも同じだ。
間違いない、毎回人を殺すまではできずとも、再起不能以上にする事ができるのだ。生死が別れるのは何か条件があるのかもしれない。きっと自分が頼めばノエルは躊躇うことなく『天罰』を降 してくれる。
「悪い人は生きている価値はない」
「悪人は死んでもいい」
ルカはまた一つノエルに嘘を教えた。ルカの嘘 を鵜呑みにし、ルカが邪魔だと思う人々の名前を口にすると必ずその人物に『天罰』が降った。ある人物は植物人間に、ある人物は自ら命を断ち、ある人物は心臓発作で死んだ。
最初こそ罪の意識に苛まれたが、段々とその感覚が麻痺していった。
更に、ノエルの嫉妬心を煽るため、わざとノエルにSEXをしているところを見せつけた。その度に相手には天罰が降ったが、着実にノエルの自分に対する執着心が大きくなっていった。
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