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第11話
「待ちなさい」
ふと、そんな声が脳内で響いたと思うと、部屋中が神々しい光に包まれた。
「やっと見つけましたよ、ノエル」
光の中から一人のスーツ姿の男が現れた。
「だ、誰だ……!どうやって入ってきた!」
完全なセキュリティ完備のマンションに侵入できるはずがないし、そもそも玄関すら開けていない。一体この男はどうやって入ってきたのか。
「ノエル、このままでは貴方はこの方と共に地獄に堕ちますよ」
その言葉にノエルはニヤリと不気味に笑い、ノエルはルカに頬ずりする。
「ルカと一緒なら……僕は地獄でも天国でもどっちでもいい」
そう言って舌先を出すとルカの頬を舐め上げた。
「ノエル……?」
ノエルの表情は見た事がないほど神々しくも見え、そして恐ろしく不気味に映る。
「僕はそもそも天界にいてはいけない存在だった。そうでしょう?ミカエル様」
ミカエル?だと?
そうノエルが呼ぶ名に大天使ミカエルの映像が浮かぶ。大天使など見た事などなかったが、なぜかルカの脳内で映像が浮かんだ。ブロンドの美しい髪に自分と同じ青い瞳。肌は透き通るように白く、同じくらい白く大きな羽を背負っている。脳内に浮かぶのが大天使ミカエルなのだとした、目の前の人物は何者なのか──。そう考えを巡らすと、
「人間の体を借りています。早く返さないとこの方の命に関わりますので本題に入ります」
まるでルカの心を読み取ったようにミカエルは言った。
「ノエル、貴方とうの昔に記憶は戻っていたのでしょう?」
その言葉にルカの息が止まる。
(記憶が戻っていた……?)
「本当なのか……ノエル……」
「だって、そうしないとルカの側にいられない」
「天界に連れて帰ろうと探し回りました。しかし、ノエルと貴方は罪を犯し過ぎました。多くの嘘をつき罪のない人間を手に掛け、必要ない殺生を繰り返しました」
「はははは!!」
ミカエルの言葉に急にノエルは高笑いをした。
「おかしいの……!ミカエル様……貴方こそ、大天使でありながら僕に嘘をついていたではないですか!皆と少し違うけれど天使だと──それは罪ではないと?」
天使……ノエルが?
ノエルは死神などではなく天使だというのか──。
ルカが想像する天使とノエルの姿はあまりにもかけ離れていて、信じがたかった。
ノエルの顔つきが徐々に険しいものになり、美しいのには変わりないのだが、天使というのには酷く恐ろしい存在に思えて仕方がなかった。
「嘘ではありません。貴方の生んだのは下級ではありましたが間違いなく天使なのです」
「そして父は──」
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