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第6話 ブライアンと玉梓
「父さん、ただいま帰りました。」
鍾馗は、帰って来て真っ先に、父、犬塚伊邪那
(いぬづかいざな)に挨拶した。
そしてブライアンを紹介する。飼い犬のシノも飛んできて尻尾を降っている。
「鍾馗さん、随分長い旅でしたね。」
母も嬉しそうだった。
「大学の寮で同じ部屋だったブライアン・メイストームだよ。
しばらくウチに住むからよろしくお願いします。彼は大学で日本の文化を研究しているから、論文を仕上げたいそうだよ。
日本語は大丈夫だと思う。」
そこへ巫女姿の女性が現れた。白衣(びゃくえ)に緋袴(ひばかま)が美しい。
「鍾馗さん、お帰りなさい。
世界はいかがでしたか?
こちらの方はお友達かしら。」
絶世の美女が二人に声をかけた。ブライアンは口をあんぐり開けたまま、見惚れている。
「ああ、いとこの玉梓だよ。
ウチで巫女をしている。巫女ってわかるかい?」
「おお、神様に仕える女性ですよね。
なんと、美しい。ソービューティフル!」
「ブライアン、玉梓とは仲良くなれそうだね。
私は玉梓と一緒に育ったようなものなんだ。
日本の生活でわからない所はなんでも聞くといいよ。」
八岐玉梓(やぎたまずさ)と名乗っている。八岐は鍾馗の母方の姓だ。
(いずれブライアンは玉梓に惹かれるだろう。
だから日本に連れて来るのは気が進まなかったんだ。)
巫女は何人かいたので、玉梓はブライアンの専属世話係のようになった。
いつも和服で過ごす玉梓は日本人形のように美しく、道行く人が振り返るほどだった。
二人が恋に落ちるのも当然だった。ブライアンは玉梓に夢中になった。自分でも不思議な気がした。
何故だろう。今までだっていくつかの恋愛経験はあった。アメリカに残して来たガールフレンドたち。自分もいつか結婚するかもしれないが、今は論文の事で頭はいっぱいだったはず。
今、頭の中は玉梓でいっぱいだ。
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