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第7話 プロポーズ
「こんなに人を愛した事はない。
こんなに人を必要だと思った事はない。
君を離したくない、結婚しよう。」
ブライアンの突然のプロポーズに玉梓は困った顔をした。
「私は誰とも結婚しないの。
でも、一緒に暮らす事は出来るわ。
それではダメなの?
ここでこのまま暮らせばいいでしょう。」
でも、ブライアンはいまだに玉梓の手も握っていない。玉梓は近寄るのを拒むのだ。
何度この手で抱きしめたいと思った事か。
「君を誰にも渡したくない。
僕だけのものにしたいんだ。
時代錯誤かもしれないけど、
僕は結婚で君を縛りたい。
そして僕の子供を産んで。」
「ちょっと待って。ブライアン、あなたは今、正気じゃないわ。それは愛じゃない。
ただの独占欲よ。」
玉梓は幼い頃、物心つく前に、この犬塚家に引き取られた、と聞いている。鍾馗とは兄弟のように育った。
今の玉梓は生涯子を持つ事はない、と思っていた。潔癖症でもあり、自ら神職を選び、巫女を天職と信じて来た。
日本神話の神の概念もなかなか興味深い。
本来ならば,ブライアンはアメリカ人らしい合理主義の持ち主だった。恋愛と結婚は別。
結婚など一生しなくてもいい。そして女性も自立して社会進出するべきだとも考えていた。
日本女性の控えめさ、は日本独自の男尊女卑思想からきている長年の唾棄すべき慣習のせいだ、と、こと女性に関しては、日本文化にも疑義の念を抱いていた。
しかし、玉梓に出会ってからその考えが、ガラッと変わってしまった。この美しい女性を手に入れたい。心まで清らかだ。博識で共に語り合う事に何の不足もない。それなのに繊細で大切に扱わないと壊れてしまいそうだ。
昔の武士の妻はこんな風だっただろう。夫を立てて、いざとなったら夫のために命をも投げ出す。そのために小太刀を持って嫁入りしたという、素晴らしい日本のならわし。
ブライアンはアメリカ式の男女平等思想など吹き飛んでしまった。ただただ玉梓が欲しい。
自分一人にかしづかせたい、そう思い詰めてしまった。そばでブライアンを見ていた鍾馗は危険な兆候を感じた。玉梓が悪いのではない。
男が勝手にはまり込む。何か、我を忘れてしまうのだ。これは彼女が背負った業。先祖代々背負わされてきた呪い、なのか?
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