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第8話 結婚
「愛」とは何だろう。何故か、現代の鍾馗の一族は玉梓の呪いにかからない。
代々玉梓を守ってきた。
現、宮司で鍾馗の父、伊邪那はブライアンの申し出に困った顔をした。
「ブライアン、玉梓は結婚を承諾してはいないはずだ。この結婚を許す訳にはいかないのだよ。」
伊邪那は渋い顔をした。
「玉梓は遠い親戚にあたりますが、私が責任を持って預かり育ててきた娘です。
彼女は神職を志し、身を捧げてきました。
現在、神職も婚姻は自由ですが、玉梓の場合、出自がそれを許さないでしょう。
異国の人に理解を求めるのは無理か、と思いますが。」
そばで聞いていた鍾馗が口を挟んだ。
「玉梓はどうしたいのかな?
父さん、二人が愛し合っていれば誰も反対する権利はないでしょう。」
今まで押し黙っていた玉梓が初めて声をあげた。
「宮司様、私は初めて人を好きになったような気がします。出自を考えると、結婚という形が取れるものかわかりませんが、私もブライアンと一緒になりたいのです。」
ブライアンは思わず玉梓の手を取って強く握りしめた。
「ありがとう,玉梓。死ぬまで一緒にいよう。」
たくさんの問題を先送りにして二人は結婚した。
神前の結婚式。ブライアンの羽織袴姿。玉梓の白無垢に白い綿帽子。この世のものでは無いような息を呑む美しさが何故か不吉だったが、神の前で愛を誓い報告した。
神社の離れで暮らすことになった二人は幸せすぎて目が眩むようだった。
しかし現実は甘くなかった。アメリカの両親に玉梓を会わせたい、というブライアンの言葉に、パスポートが取れない事がわかった。入籍の問題もあった。
玉梓の複雑な出生の秘密が暴かれようとしていた。
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