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第12話 五月雨・メイストーム
それから40数年。
犬塚神社で生まれ育った、八岐・五月雨・メイストームは、白浜中学の数学教師になっていた。
アメリカ人とのハーフだが、日本人の血が濃い。母親似か、誰もが振り向くような美しい男だった。
生まれた時は金髪だったが、だんだん濃い茶色になってきた。目は少し青いかもしれない。
学校ではメイ先生と呼ばれている。
真面目な数学教師の裏の顔は、男にしか興味を持てないゲイだった。
学校では絶対に見せない、その性癖。教え子に手を出す事は絶対にしない、と自分を戒めてきた、
五月雨は神社の離れに住んでいる。生まれ育った離れを母と分けて、独立した家をオショーが建ててくれた。もう40才を越えたから。
「五月雨がいつ結婚してもいいようにしたよ。
縁談もたくさん来るし。
なんでみんな断ってしまうんだ?」
(親代わりのオショーにはとても言えない。
自分が女性を愛せないなんて。)
中学で数学を教えている五月雨は、進路指導に熱心なまじめな先生だと評判だった。
その容姿から女生徒に絶大な人気があった。
誤解されないように極力注意してきた。
「メイ先生と付き合いたい!」
「私は結婚したいわ。あと4年、大人の年になったら、逆プロポーズするわ!」
「先生仲間でもメイ先生を狙ってる人がいるらしいよ。」
「ヤダァ、ずるいよ。
そう言えば、教師って職場結婚が多いらしいし。」
「あの養護教諭、狙ってるよね。」
女子生徒の中には積極的な娘もいて、放課後の教室で待ち伏せされたりする。
捨て身のアタックで
「処女を捧げます!」
などと、抱きついてくる時もある。
(女の子は苦手だ。あの匂いがダメだ。男子生徒だって困るよ。自分が抑えられない。)
保護者の中でも積極的なママたちが苦手だ。
進路指導の三者面談でも、子供の目を盗んで、アドレスを渡してくる母親がいる。
「メイ先生、内緒で不倫しましょ。」
とんでも無い事を言って来る。
教師はなかなか誘惑が多い。
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