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第14話 ラッパーたち

 神社の境内には数人の若者がいた。 「やあ、琥珀、今日は女装子(じょそこ)だね。」 ピンクの髪の女の子が来た。ロリータファッションで目立っている。  元気な若者が声をかけてきた。小柄だがオーバーサイズのパーカーのカッコいい奴。鉄平だ。 「珍しい。女の子が一緒かい?」 「ううん、さっき鳥居の所で初めて会った娘だよ。」 「こんちは。あたしサイコ。  これでも、フィメールラッパーだよ。 最近越してきたんだ。」  おへその見える短いタンクトップ、スポーツブラかな。それに大きいナイロンジャンパー。肩が脱げそうな着方にへそピアスが目立つ。  ダブダブのジーンズにコンバースのハイカット。黒のキャップからかなり長い髪が覗いてる。メイクが濃い。カッコいい女の子だ。背が高くて強そうだ。 「神社は初めて?」 「うん、鳥居の所にラップバトルのことが出てるポスターがあった。  ところでキミ、琥珀っていうの? 綺麗な娘。ロリのドレスがよく似合っている。  こっちは鉄平ね。よろしく!」 「ひゃあ!」 サイコが琥珀に抱きついた。気がついた鉄平が 「サイコ、琥珀は男だよ。凄く人見知りなんだ。」 「えっ?男?全然わかんないね。」  遠巻きに見ているヤバそうな奴らがいた。 「こいつらはみんなラッパーなんだ。 たまにF市のクラブでフリースタイルやってる。 背の高いのがサトウ、体格のいいのがナナオ。 あと黒いハットの人がジョー先輩。2個上だ。  みんな同じ中学だった。」 鉄平が紹介してくれる。 「サトウは小学校の頃から、場面緘黙(ばめんかんもく)っていう病気みたいなもので、言葉が出なかった。」  痩せていて背が高くカッコいい感じのサトウと呼ばれた人は顎だけで会釈した。 (場面緘黙って何だろう?初めて会った人間に、そんな事、打ち明けてくれていいのかな?) 「サトウは外に出ると全く言葉を発しない。 俺、小学校からサトウを知ってるけど、その頃は 同級生みんながサトウは聾唖(ろうあ)だと思ってた。先生に言われて渋々サトウの家に遊びに行った時、サトウはおふくろさんとだけは、喋っていてびっくりした。  でも、俺からいくら話しかけても返してはくれない。なんか悲しかったな。  俺は透明人間か?って。」 (きっとサトウは繊細な人なんだろう。 鉄平も、だ。)

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