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第15話 ラッパーたち 2
「サトウも中学の頃は引きこもりになっていたんだけど、俺は相変わらず、たまにサトウを訪ねたりしていた。
サトウのおふくろさんが歓迎してくれて、居心地が良かったし、無言でいることに何だか癒されてた感じかな。
黙って一緒にいるだけで何もしない。
俺の持って行ったCDで音楽を聴いたりした。
俺も学校にいかなくなってたからね。
俺は引きこもり、と言うよりニート、だな。」
確かに鉄平は社交的な感じだ。家でじっとしているのは似合わない。
ナナオと呼ばれた体格のいい人がこっちに来た。体格がいいというかすごく太っていて、デカい。
「ゲゲッ、女がいる!
琥珀は男だろ。でも、もう一人いるよ!」
ナナオは赤くなっている。意外とシャイな奴。
「こいつはナナオ。元力士。女優の菜々緒の大ファンでナナオと名乗っている。
サトウとナナオと俺は小学校からの同級生なんだ。」
もう一人、黒ずくめのジョー先輩と呼ばれた人は少し年上のようだ。
すごくカッコよくて大人の雰囲気。女性にモテそうだ。
「ジョー先輩は2コ上だよ。
ずっと入院していて、退院してからも薬の影響で眠ってばかりいたから浦島太郎みたいだった。
ラップを聴いて覚醒したんだって。
あの、みんな、新人、サイコって言うんだって。」
鉄平がみんなに紹介してくれた。
そんなに多くはないが、だんだん人が集まってきた。それぞれ機材を運び始めている。
もう一人大きなヘッドフォンを首にかけた若者がDJブースみたいなのを運んできた。
デカいスピーカーとかも運んでいる。
「サイコ、彼はタイジ、DJだよ。」
「今日はよろしくお願いします。」
タイジと呼ばれた人はサイコにも丁寧に挨拶した。
近隣からラッパーが集まるラップバトル。
琥珀は神社のオショーと呼ばれる宮司と出会い、ラップバトルの手伝いをするようになった。
ここでは女装もロリータファッションも自由にできる。誰も気にしない。みんな好きな格好で集まって来る。都会では普通でも、この町みたいな田舎ではそうはいかない。
琥珀はラップは出来ないけど、神社に来るのが楽しみになった。
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