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第20話 ジョー先輩

 みんなオショーの所に集まるようになった。社務所の横に自由に入れるようにしてくれたのだ。  タイジも時々顔を出す。 その日はジョー先輩が神社に来ていた。ジョー先輩はいつも黒ずくめのスタイルだ。  犬を連れている。チョコラブ。タイジが声をかける。 「ジョー先輩、黒がお好きなんですね。 犬まで黒い。」 「この犬は荘助(そうすけ)黒く見えるけどチョコレート色なんだよ。」  ジョー先輩の話は衝撃的だった。 「中学の時、家で暴れて親に入院させられたんだ。数ヶ月入院して、向精神薬っていうのか、毎日薬漬けで、おとなしくなったんで退院した。  もう暴れない。従順になっていたからね。」 退院しても何も出来ず、というか、何もやる気が起きず、眠ってばかりいた。うつらうつらしたぼやけた世界で漂っている感じだった。  処方された大量の薬を飲んでいればおとなしい。暴れるよりマシ、と家に引きこもらせてくれた。  子供の頃、何かどうにもならない事に焦れて、自分をコントロール出来ない時があった。 「やめて、譲治。落ち着いてちょうだい!」 母親が泣きながら縋り付いて来る。 「母さんが悪かったわ。謝るから叩かないで。 怖いわ。」 「兄ちゃんやめてよ!」 と泣き叫ぶ弟を蹴り飛ばした。  母親を殴り、弟を蹴り飛ばし、壁に穴を開ける。自転車を家の窓に投げつけて壊した。 「自分でもよくわからないんだ。 カッとなると自分でも止められない。 悪いな、という気持ちと、またやっちまったという嫌な気持ち。 俺を怒らせるんじゃねぇ!」  近所の人に隠せなくなって父親は譲治を入院させた。そのせいで弟は親戚に預けられた。 「殺される。」と思ったという。 「譲治はこのままでは犯罪者になる。 病気なんだ。 放っておいてもろくな人生を送れないだろう。」 父親は母に言ったそうだ。母は 「譲治は悪い子じゃないのよ。 すぐカッとなる性格を直せばいいの。 また、家族みんなで暮らせるよね。」

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