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第23話 悪い噂

「ところでこの頃、また悪い噂が飛び交ってる。 狭い町で年の近い連中の中でもワルだった奴らがまたくだらない事やってつるんでるんだ。  色々あるんだけど、なかでも俺たちのラップバトルをぶっ潰すって言ってるらしい。」  鉄平がどこかから聞いてきた。 彼らがやってるラップバトルなんて少ない人数でおとなしいものだ。  初めて神社でラップバトルをやってから、数回開催された。そんなにディスって来る奴もいないし、楽曲重視の人が多く、各自好きなCDを持ち寄って、サイファーは物足りないかもしれないが、概ね平和で友好的だった。  近隣の人ばかりだったし。 「小学校の頃ナナオをかまってた奴らが地元に帰ってきてるらしい。  農家の跡を継ぎたくなくて、東京に行った奴も仕事が続かなくて帰って来てる。  1番突っ張ってた奴は、半グレみたいになって毎日パチンコ屋にいるとか。  半グレってある意味ヤクザよりタチが悪いみたいだから。」  鉄平の言葉に 「中学で学区が分かれて隣に行った奴らじゃね?」  鉄平たちとタイジは学区の関係で中学が違う。中学ではタイジが被害に合っていた。 「奴ら暇なんだな。 まじめにラップやればいいのに。」 ナナオが言った。  ジョー先輩がやって来た。なんだか嬉しそうだ。 「おい、タトゥー入れたぞ。」 「ジョー先輩、早まったね。大丈夫なの?」  ジョー先輩の腕にはトライバルのタトゥーが彫られたようで袖口から見える腕の所は赤く腫れ上がっていた。そこに黒っぽい模様が見え隠れ。 「まだ少ないけどだんだん増やしていく。」 「痛そうですね。」 ナナオが心配そうだ。気が弱い。 「凄く熱くなって感覚が麻痺してる。 シラフで立ち向かったんだ。」 「えらい!」 「タイジの知り合いの彫り師にいれてもらったんだよ。」 「今までは刺青なしの人生。 これからは刺青ありの人生,って事で。」 タイジが言った。今のはジャニス・ジョプリンの言葉だって。タイジのばあちゃんが言ってたらしい。 「タイジのばあちゃんも何かタトゥー入れてんの?」 ナナオが聞くと 「いくらウチのばあちゃんがぶっ飛んでても、それはないな。」 タイジが笑った。ジョーは胸が熱くなった。

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