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第24話 ラップバトル
神社で久しぶりのラップバトルが開催された。
季節はもう晩秋。少し肌寒い。
「ヤ、オレがサトウだ。サトウでも甘くはないぜ。シュガー、ジャガー、オレは吠える虎タイガー。オレの言霊、対価は何だ?
燃やし尽くしたターンハーオン。
オレのハートは耐火仕様。
誰か火を付けてみろよ。」
初めにいきなりサトウが飛び出した。
タイジの回す皿の重低音が腹に響く。
「ヤ、エンジンは全開、フルスロットル。
振り立てる言葉は、振り捨てられるブリザード。
プリズムのように振り分ける色の洪水。
カラフル。オレたちはいつもトラブル。
言葉はブリキのおもちゃ、フリゲート艦か?
これがオレのブルース。」
サトウが声を出すのはラップにノレたって事。
だから初めて聞いた時は驚いた。いつもしゃべらないのに、信じられなかった。
その日は初めて来た奴らがいた。
ラップでよく使われる
「悪そうな奴は大抵友達」
っていうリリック。
だけど、見かけない輩(やから)だった。
サトウの相手はこの見慣れない奴だった。
季節外れのアロハシャツの半袖から和彫りの刺青が覗いている。
「ブルース上等、聞かせてくれよ、甘ったるい生き様。
ふざけんなよ、ハンパな野郎はぶっ殺す。
甘ちゃん、海女ちゃん、ハマグリでも取ってきな。海も似合わねぇダサい奴ら。
わかってんのか、ラップだって、笑わせる。
俺は地獄を見て来た男。仲良しこよしはとっとと帰りな。」
和彫り野郎が、後に本当に地獄を見る事になるとは知る由もない。
「全否定だな。オレは引きこもり15年。
普通なら積み上げる社会経験が、オレには無ぇ。
ラップに出て来るリリックは突然。
オレのディスは必然。
神降臨。おまえはタダの口論。
地獄を見て来た男に、小躍りするオレの中の悪魔。おまえはタダの小悪魔、いや小悪党。
上等じゃねぇか。呟いてるだけの言葉は無駄無駄無駄無駄。
オレの言葉はゴールド。そしてアンタはコールド負け。」
サトウがいつになく過激だ。
和彫り野郎が続く。
「カマ野郎を潰しに俺はここへ帰って来たぜ。
こんな町には何にも無いが、ウザイ野郎は生かしちゃおけねぇ。
イカした俺たちがぶっ殺す。皆殺し。」
なんだか独特なリリックはラップから離れて行くみたいだ。ただのディスり合い。
タイジが何かに気づいたようにこっちを見た。
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