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第25話 ラップバトル 2

 鉄平とサトウ、ナナオは同じ中学でジョー先輩も同じだった。  ジョー先輩はほとんど学校に来ないで入退院を繰り返していたから、一部の生徒には伝説の人になっている。  タイジは隣の中学で、途中から転校してきた事と、不登校になって引きこもり、進学してもすぐに高校を辞めてしまった事で、鉄平たちと接点がなかった。  タイジの不登校のきっかけを作った地元の悪い奴らが、今日、荒らしに来ている訳だ。  しばらく町を離れて東京で働いていたのが、続かなくて帰って来たらしい。また、つるんで悪さをするのだろう。  本気でラップをやってる訳じゃなさそうだ。 鉄平たちも噂は聞いていた。  地元を盾に相変わらずセコいカツアゲを繰り返す輩(やから) 「ダッセぇ、どこから持って来ちゃったイモくさいガキがラップだってよ。  笑わせる、草生える。ここにはここのやり方がある。  お控えなすって、手前生まれも育ちも九十九里でござんす。太平洋で産湯を使い、親父は漁師、板子一枚、下は地獄のイワシ漁。  生半可な奴らとは根性が違うぜ。 俺は網元の息子。」  和彫り野郎が早口で喚く。 ラップじゃなくて「寅さん」の口上か。  まるで香具師(やし)だな。これはこれでジャパニーズラップか。 「凄いな、あんたの親父さん。 イワシも美味い、それと美味い魚はメヒカリ。 あんたは親の七光りか?いい年してまだ、親の顔で生きてんのかい。しょっぱいなぁ。  あんたの人生もしょっぱいことばかり。 オレはサトウ、シュガーで中和してやろう。 その子供じみたリリック。」  サトウは落ち着いてアンサーを返している。 不穏な空気にオショーが割って入った。 「ラップで勝負。ボディタッチは、なし。 コンプライアンスを守って!」  サトウは止まらない。 「和彫りの刺青をわざと見えるように、半袖のアロハシャツを着ているだけで、もうダサさの見本みたいだな。ダサすぎて怖いわ。  そういうのをコケオドシって言うんだぜ。 田舎のガキが集まって、こっちが怖がるとでも思ったか。  どうせ本家スジモンがケツ持ちやってくれんだろ。親が裏でペテン下げてさ。  おまえ、それで楽しいのか、哀れだな。」 サトウの早口フロウに、和彫り野郎の顔色が変わった。

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